銀白の鷹との出会い
「艦載機のみんなぁ、お仕事お仕事ーっ!」
雲ひとつない快晴。太陽はやや西に傾き始めているが、空に朱の色を見せてはいない。独特の匂いをたちこませる海は青空の色を映えさせ、そこに若い女の声を響かせていった。
赤の水干めいたしっかりした服を纏う、背の低い少女。暗い茶色のツインテール。
少女は「海の上を滑って」いた。鋼鉄のサンバイザー。小さな体躯と細い両腕を駆使して巻物を広げ、何かを召喚している。
もし近くで見られるなら、それが空母の飛行甲板を模しているものと分かるだろう。そして彼女が召喚しているのはある種の式神のようだ。そういった不可思議なものを艦載機として放っているのだ。
幾つもの式神が鋼鉄の戦闘機に変わる様は、人の形をしたものが海の上を滑るのと同じくらいに奇妙に映るだろう。だがこれが彼女やその仲間たちにとっての日常だった。
鎮守府正面海域。これの警備。巻物を畳みつつある少女然とした者の名は艦娘・龍驤。無事に偵察機を放った彼女は小さくため息をついた。
「ふう。これで偵察は大丈夫っと」
「ねえ龍驤さん。二段索敵をしておきましょう」
巻物を背中の包みにしまった龍驤の横に海の上を滑る女が寄せてくる。長く艶やかな黒髪。赤い弓道着。そして背の丈ほどあろう長い和弓を構え、矢筒から一条の矢を抜こうとしている。周りには護衛のように付き従う、彼女らと同じように海を滑る少女が三人いた。
「なぁんや赤城ぃ、こんな狭い作戦領域に二段索敵は必要ないやろ」
「油断は敗北に繋がるわ。慢心し――」
「『慢心してはだめ』やろ? まあ確かに今の情勢を顧みりゃあなあ」
「――そうです。いま相手にしているのは深海棲艦だけじゃない。正体不明の巨大戦艦もいるんですから……」
水棲生物型巨大戦艦群。数週間前から突如その存在が確認され、「彼女」らが深海棲艦側の戦力の一部であることも明らかになった。
人類に仇なす深海棲艦。彼女らと戦いを繰り広げている人類と艦娘。世界中でこの二つの陣営が争っている。
少しずつではあるが深海棲艦側の版図を小さくすることができており、戦いが起こる頻度も少なくなっていた。平和ではあるが予断を許さない状況――この傾向が長らく続くものと思われていた。
しかし。突如現れた水棲生物型巨大戦艦群の登場によって人類側は次第に追い込まれていく。
ただでさえ深海棲艦には通常兵器が殆ど効かないのに、シーラカンスだのハリセンボンだのピラニアだのといった水棲生物めいた巨大戦艦が深海棲艦側に分厚い火力支援を提供している。
対する人類側は新たな切り札を用意することも出来ず、少しずつ支配海域を狭めていくことになる。いくつかの基地は破壊され、蹂躙され。このままではいずれすべての海域が支配されるのではないかと消極的な雰囲気が人類側を包みつつあった。
「……水棲生物型巨大戦艦、やったっけ? アレはうちらの攻撃も通れば通常兵器も通用するんやろ?」
「確認されている情報ではそうですね。……でも、あれだけ大きくて強大な戦艦が深海棲艦側に味方している以上はこちらの不利は覆らない。それに私たち艦娘以外が海域に出れば深海棲艦の餌食になってしまう」
「うーん。それが難しいとこやなあ。しかも隠れるのも上手ときたもんで。この辺りに逃げ込んだ可能性が高いってのはマジなん?」
「提督宛に届いた通信ではそうらしいですね。別の部隊と交戦したシーラカンス型巨大戦艦がこちら側へ撤退していったと」
「なんや。追撃くらいしたら良かったやん」
「それが出来ないほど敵は味方を疲弊に追い込んだに違いないです。やはりつゆほども油断は出来ません。……私が第二の索敵を――」
赤城が言葉を最後まで紡ぐことはなかった。第二弾の索敵などする必要がなかったからだ。
来た! ――それが片耳を抑えた龍驤の叫びだ。これを合図に周りを滑っていた少女らがやや密になって防御を強めていく。
「皆ぁ聞いて! 敵は……いや、うちの偵察機が知らせてくれたのは『正体不明の戦闘機』や! 敵味方識別装置は無反応!」
「ちょっと待てよ正体不明の戦闘機だって!? 変な戦艦の次は戦闘機かよ!?」
横から怒鳴りこんできたのも例によって少女である。
大事な布が見えそうな程に丈の短いスカート。胸元の見える藍色のセーラー服。両腕には「砲」のようなものを巻いて身につけている。あからさまに「武装」していると分かる格好だった。
「そうらしいで摩耶ちゃん」
「どんな奴なんだ? トビウオ型とか?」
「今度のは水棲生物型の兵器じゃないで。赤と青の二機。深海棲艦側のとも意匠が違う……まるで『鷹』のような機体ってのが報告にあったんや。今から向かうで」
「オーケー。で? 提督、聞こえてっか?」
耳元と首元にある小さな無線機。摩耶が話しかけているのは彼女ら艦娘のリーダー、艦隊司令官。提督。艦娘らを指揮する立場となると相当な上司になるが、摩耶はそんなのを欠片も気にしない態度をとっている。
〈ええ。そのまま『鷹のような』戦闘機と接触してちょうだい。くだんの水棲生物型巨大戦艦との関わりはあるのかもしれないけど、敵味方不明であるのなら迂闊に攻撃するのは禁物よ〉
「けどよお……何の断りもなくこっちの領海に入るなんて、こんな世の中じゃ深海棲艦くらいしかいねえじゃねえか。外国の密漁船がどうこうって時代じゃないだろ?」
〈そうね。でもこちらの海域の端にある哨戒部隊に何かが引っかかった様子もないの。お願い、様子だけでも見てもらえない?〉
「分かったよ。反撃はしてもいいんだよな?」
〈勿論よ。あなた方の無事を優先するわ。あとそうそう、可能であれば鹵獲してちょうだい〉
「壊さない程度に無力化してぶんどって来いってことか」
〈正体不明の戦闘機……もしかすると深海棲艦や巨大戦艦に対する切り札になるかもしれない。頼んだわよ〉
通信が終わった。話の内容は他の者とも共有できている。が、不安そうな背中を見せて先行している二人の小さな艦娘がいることに、集団の中央に集まった三人は気づいていた。
三人は目配せし、すぐに赤城が弓を携えながら前に進む。とりわけ背の小さい齢十二、三を思わせるような艦娘らの横につけて並走。柔らかな微笑みを投げかける。
背中にゴタゴタした艤装、太腿に魚雷艦。さわさわした茶色の髪を持つ二人は別々の髪飾りを使ってまとめていた。
「あ、赤城さん……私は大丈夫よ! 護衛なら雷に任せなさいっ!」
「大丈夫よ雷ちゃん、電ちゃん。私たちなら大丈夫」
まるで双子のような出で立ちの二人の頭をそっと撫でる赤城。すぐに反応して明るい反応を見せる雷と、ややあってから頷き返した電。二人の戦意は落ち込んでもいないが高揚もしていないらしい。あまり圧のかかる言葉は選ぶべきではないと赤城には分かっていた。
「あなた方護衛がいるから私たち空母も頑張れる。ね、逆のことも言えるでしょう? あなたたちは私が守ってあげる」
「あ、ありがとう、赤城さん! がんばるのです!」
「ええ。……まだ敵といえるか分からないけど、見つかったって場所に行ってみましょう?」
「もちろんよ! 電や摩耶さんと一緒に、赤城さんと龍驤さんはちゃーんと守ってみせるわ!」
言うが早いか雷は電の手をとって元気よく先行する。その後ろに赤城と龍驤が、空母二人の左横を摩耶が守る形で前に進んでいく。
正体不明の戦闘機。これらとの接触。旗艦としてしっかりと任務を果たさなければ――赤城は弓を携える手に力を込めて青い空と水平線を強く見つめた。
しばらく進んで。遠い空に二つの影が飛んでいるのを赤城は認めた。鷹のようなとは言うが、実際は鳥に似ているわけではない。鋭利なデザインがそう見えただけのことだろう。
確かに赤と青色をした見たことのない形の機体だ。機首や主翼の部分はかなり形に違いがあるが、機体上部のトサカのような部分は共通している。
どこそこの艦載機という風体でもない。というよりもプロペラ機ですらない。かといって通常戦力が運用する通常の機体という様子でもない。機体の尾の部分にある一基のエンジン部から蒼い炎が噴いていて、これで航行しているらしい。
赤の機体から横に伸びる設置脚は機銃を内蔵しているようだ。他にも武器装備を内蔵していそうだと赤城は直感する。青の機体は期待下部から巨大な砲が覗いている。
やはり未知の機体というのが言い表すのにふさわしいようだった。SF映画の世界で出てきそうな雰囲気すらある。
正体不明の二機は艦娘としての空母が発艦する戦闘機よりもやや大きいくらいの図体をしている。通常の戦闘機は普通の人間や艦娘が乗り込める程度には大型のものだが、これはそうではない。
「私と龍驤さんはいつでも迎撃できるように準備します。駆逐艦の二人に接触と干渉をお願いします」
「分かったわ!」
「任せて下さい!」
ざああっと海を滑る雷と電を見送りながら赤城は一条の矢をつがえる。
思い切り引き絞って放てば封じていた烈風が現れ大空を飛んで行くだろう。共に訓練した妖精さんが乗り込み、矢の中に封ぜられているのだ。油断さえしなければどんな航空戦力だって倒せる。
「そこのーっ! 赤と青のヒコーキ、降りてきなさーいっ!!」
雷が元気いっぱいに呼びかけ、電とともに攻撃の意思がないように腕を振っていた。謎の戦闘機二機だが、あの程度の大きさなら搭乗者は人間ではないだろうと赤城は踏む。
人間が入り込めるほどの大きさではない。一般的な机程度の大きさしかないものにどうやって人間が搭乗できるのだ。ああいう大きさなら艦娘が飛ばした艦載機か深海棲艦側の空母戦力が飛ばした機であると見るのが普通だ。
「なあなあ赤城ぃ」
「はい?」
「あの戦闘機、中には妖精さんが入っているんやろか」
「そうだと思いますけど……口とか歯とかがないってことは、たぶん深海棲艦の放ったものではないと思います」
「つーことはなんや、どっかの艦娘が隠し玉を出したまま回収してないってことか?」
「かもしれません。でも秘密兵器があったとしてぞんざいな扱いをするでしょうか?」
「まーそれもそうやなあ――ん?」
赤城の横につけてきた龍驤が意識を向けたのは青色の機体だった。敵ではないと分かったのか、青色の戦闘機が雷たちのもとにゆっくりと降下している。
垂直離着陸機なのかと赤城は訝しむが今はそれは問題ではない。搭乗員が妖精さんであるなら会話することが出来るはずだ。現に電が何か話しかけているようだった。
が。
空から蒼色をした一条の光が海面を文字通り「斬った」。
直後に水柱が上がり、雷と電は後方に退避する。その表情には怯えの色。
正体不明の戦闘機は何らかのビームを放つ機能がある。深海棲艦にそんなものを放つ能力のある個体は確認されていない。あの蒼い光がどれだけの脅威なのか――それでも雷はしっかりと声を出そうとする。
「違うって! 私たち、あなた方の敵じゃないわ!」
「交渉決裂なんだろ? じゃあ黙らせてやるしかねえな!」
「摩耶さん! 違うの、青色の方は友好的だったわ!」
「じゃあ赤だけを狙えって? そういうわけにもいかないって分かるだろ、怖いなら後ろに下がってな!」
雷と電に代わって先陣を切る摩耶。
戦闘開始。
五人が一斉に大きく時計回りをするように全速前進する。
摩耶が肩に乗せている高角砲を向けどんとぶっ放す。
速く航行しながら的確な偏差射撃ができていた。装備を管理する妖精さんとの連携がしっかりとれていた証拠だ。
赤の戦闘機に狙いをつけていたが急加速して空へと逃げていく。青の戦闘機は積極的な攻撃こそしないものの、赤の援護に回るように高度を上げていった。
「いくで赤城ぃ、今がチャンスや!」
「分かってます!!」
駆逐艦娘二人が横で護衛してくれるのを確かめた赤城はぎゅっと弦を引き絞る。隣の龍驤は巻物を広げて次々と艦載機を繰り出していた。
つがえた矢を放つ。大空に逃げていく二機を追う矢が光って爆散する。否、光から五機の戦闘機が飛び出していったのだ。
放たれた勢いのままプロペラが轟々と回転して空をのぼる。遠ざかっていく自分の機を見送る赤城は龍驤と離れないように速く前に進んでいく。
空母二人を挟むように雷と電が構え、歩調を合わせて前進し、背負った艤装で空に向けて発砲している。今や五人の艦娘の火力は二機の戦闘機にのみ向けられていた。
「もっと戦闘機を繰り出しましょう!」
「せやな赤城ぃ、うちもやるで!」
空母二人が揃って発艦動作に入るが早いか、またも蒼いレーザーが赤城たちを襲う。狙いはまったく外れているが、空にいる正体不明機らと赤城たちの間に壁を作るような挙動をする。まるでアイドルのファンが振るサイリウムのようだ。
高角砲などの攻撃は殆どこれで防がれ、五人の頭上に大きな爆発を残す。熱と爆風に煽られる五人の隙を突くように赤の戦闘機が突っ込む。
接地脚らしい二本の脚から機銃が火を噴き、無数の鉛弾が海面に細く高い水柱を作り上げていく。いくらか赤城が被弾したが損傷は軽微だった。艦娘とはそういうふうにできている。海の上での最高戦力という呼び名は伊達ではない。
正体不明機――いや、もう何度も攻撃を仕掛けられている。敵機と呼んでいいだろう。
繰り出した戦闘機を落とし、あるいは振り切り、赤の敵機はこちらに向かってくる。ありえないことだと赤城は戦慄した。
ランチェスターの法則。戦闘力を「質と量の乗算」で導く計算。物量によるゴリ押しが有力と証明する理由。
あの二機の敵機には十数を超える戦闘機があたっていた。それを振りきってこちらに迫るだなんて、敵機の「質」が尋常では無いのか――左に回避運動を取りながら赤城は表情を歪ませる。
急降下する赤の敵機に向けて空母二人の護衛にあたる三人が砲撃をかます。誤射の起きないように位置取り、注意を払う。
そうする中で、摩耶は機首を上げるのを忘れたらしい赤の敵機が自分に突撃しているのを認めた。自分から死にに来やがった。心の中でニヤリと笑った摩耶は一撃を叩き込もうと構えに力を入れる。
「てめぇっ、ぶっ殺されてぇかぁ!?」
腕の連装砲をぶっ放した摩耶は、自分の攻撃が寸分の狂いなく赤の敵機に命中したのを見た。直後に爆発。爆風が彼女の短い髪を煽る。
赤の敵機を撃墜、あとは青の敵機を片付けるだけ――なのに摩耶の表情は晴れやかではない。カンだかキンだかよく分からない、少なくとも金属音ではない妙な音が聞こえたような気がしたからだ。
嫌な予感はすぐに的中した。撃墜したはずの赤の敵機が爆発の中から下へ飛び出したのだ。
うっすらと黄金色の膜のようなものを帯びていた赤の敵機。しかしそれは急上昇して反撃に出ることはなかった。接地脚らしき二脚を海面につっこみ水上に浮いている様は水上機と呼んでも差し支えなさそうだった。
もう一発ぶち込んでやる。再び腕の連装砲を構える摩耶は、しかしその引き金を引くことは出来なかった。辺りにきいぃんと甲高いノイズが走り、何かしかけるのであろうと警戒したのだが、はたしてそれは拡声器の使い始め独特のノイズだった。
「降伏、する」
辺りに声が響く。五人のうちの誰が発したものでもない。
それでは敵機のパイロットが? 摩耶はまだ青の敵機が飛んでいる空を気にしながら姿勢を低くした。赤の敵機の様子を見るためだ。戦いの中で立ち止まるのはかなり危険だが、拾い上げでもして反撃されてはたまったものではない。
「なに、降伏だ?」
「そうだ。これ以上正体不明の巨人と交戦するメリットがどこにもない。それに燃料切れも間近だ。だから、降伏する。それにブルーがさっきから攻撃中止を呼びかけてうるさくてたまらなかったんだ」
「ブルー? ブルーってのは空を飛び回ってるもう一機か?」
「厳密にはパイロットの名前だ。……我々はもう抵抗しない。だが巨人よ、言葉が通じるのであれば理知的な処遇をお願いしたいものだ」
「あー? 巨人だあ? なに言ってんだお前。気に障るようなこと言うんじゃねーぞ!」
了解した。赤の敵機のパイロットはそう返したきりなにも発言しない。
しばらくすると青の敵機も同じように水に浮いて「降伏するぜー」なんて言っている。あたりにはもう戦いの音は響かなくなっていた。
摩耶に提督への連絡をするよう伝えた赤城は、雷と電の二人に二機の正体不明機を持ち運ぶように伝える。鎮守府の設備がなければ機体を矢や切り紙人形に変えることなど出来ない。
〈――そう! 『鷹のような』戦闘機二機を鹵獲できたのね!〉
「ああ。これから帰投するよ。調べたりなんなりってのは出来そうだ。だけどさ……」
〈どうしたの摩耶ちゃん〉
「……蒼いレーザーってのはこちらの最新装備か何かか?」
〈えっとごめん、もう一回言ってくれる?〉
「だからさあ。あ、お、い! レーザー! 蒼いレーザーだって! 正体不明機がそんなのを使ってたんだ」
〈レーザー兵器ってこと? そんなの聞いたことない……通常兵器として開発されていたかもしれないけど、でも深海棲艦にはあなた方艦娘や専用の艤装、妖精さんの力でなきゃロクなダメージは通らないはず。上層部や開発部がそんなのに手を出す理由はないと思うけど〉
「提督が知らされてないって可能性はあるんじゃないのか?」
〈私も全部を知らされてるわけじゃないから、摩耶ちゃんの言ってることは当たってるかも。でも私の意見を言わせてもらうなら、レーザー兵器なんていくら作っても無駄だろうからその資源をこっちに寄越しなさいってところね〉
まったくだな、なんて摩耶が楽しそうに返しているのを横目に赤城は帰路へつく。前は正体不明機を鹵獲した――両腕に大事そうに抱えている――雷と電の二人。横には龍驤と摩耶。
龍驤が巻物を使って偵察機を繰り出し、航路の安全を確かめている。びゅんと飛んで行く偵察機を見送った赤城は赤と青の正体不明機について思いを巡らせようとしていた。
この戦いが終わった後、飛行していた艦載機を回収してから、赤城は訝しんでいた。
あの「鷹のような」戦闘機はランチェスターの法則を無視するほどのスペックを有している。その証拠に、赤城と龍驤が放った艦載機の攻撃を切り抜け、撃墜し、摩耶に向けて突撃していった。
なのに「鷹のような」戦闘機が撃墜した機の数はあまりにも少ない。オーパーツめいた性能を有しているらしいのに、どうしてこちらの艦載機をあまり攻撃しなかったのだろう?
通常兵器では深海棲艦にも艦娘にも決定的なダメージを与えることは難しい――そんな常識を思い返した赤城は、緊張を解かないように帰路を進んでいく。