艦娘と銀鷹と【完結済】   作:いかるおにおこ

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瑞鳳の日記5 過去を顧みて覚悟を改める

 9月21日

 

 今日も一日、無事に皆が生きて過ごせている。最前線の基地の守りを任されていることは誇りではあるけど、でも、いつ誰が敵にやられて――そう思ってしまう。はっきりとした心を持ったことは強みに成ると思うけど、でも、こういう弱みにも成るんだわ。

 

 いつもはこんなことを思わないんだけど、でも、時々そういう気持ちになるの。うまく共感してくれる人はなかなかいないんだけど、青海提督はちゃんと私の気持ちを分かってくれていて、本当に嬉しかった。改めて頼りになると思ったし、力にならないといけないってはっきり感じてる。

 

 そんなことを思ったからか、こうして日記を書き始めることになったきっかけのこと、思い出してしまった。私が青海提督のところで戦うようになってから一週間くらいが経った頃のこと、まだはっきり覚えている。

 

 あの頃の私は「人間となってしまった自分」や「この体の持ち主だった子を殺して乗っ取っている事実」に苦しんでいた。どうして私は艦娘として再びこの世に存在することになってしまったのか、この子を殺してでも私は艦娘として生まれなければならなかったのかとか……いまと比べたら、明るさなんてどこかに消えてしまってた。

 もちろん私が艦娘としてこの世に存在することになった理由は分かっていた。深海棲艦という正体不明の敵を倒すためには、艦娘の力がどうしても必要だから。そのためには器となる女の子を探して、殺して、私たち「船魂」をねじ込んで「艦娘」にする……どうしても吐き気がするくらい嫌な気持ちになった。

 

 青海提督が元気もなくて成績も能力も良くない私のことを気にかけてくれて、ちょっと厳しい調子だったけど相談に乗ってくれたの。

 この体を器として提供した女の子への言い表しようのない申し訳無さや罪深さ。……人間の女の子として生まれ変わったことの戸惑い。自分がつらいと思っていたことを全部吐き出したら、提督は私をぎゅっと抱きしめていた。

 

 つらい思いをさせてごめんなって、そう言ってくれたのを覚えている。白い軍服越しに伝わる提督の温かみも。そうして私は泣いてしまったんだ。もう悲しくて、でも受け止めてくれる人がいるって喜びもあって、心が叫んでしまったの。

 そうして提督は日記をつけることをアドバイスしてくれた。日記をつけるなんてとても人間らしいことだし、自分の気持ちの整理やその日あった出来事を簡単に書くのも落ち着くためにはいいことだって言っていた。

 

 実際、日記をつけてから落ち着くような気持ちになることが多かった気がする。うまくいかなかったことに苛立ちを感じることも少なくなった。

 そのおかげで祥鳳姉さんと円滑で角の立たない交流ができるようになったのかもしれない。だって、一時は「艦娘である自分は死んでしまったほうが良いのかもしれない」って本気で思ってたのだから。器になった女の子が死んで、その抜け殻を使わせてもらってる――と悩んでいるところに祥鳳姉さんが来ても、たぶんケンカになってしまうんじゃないかな。

 

 とにかく。青海提督にはとても感謝している。日記をつけるようにアドバイスをくれたのは彼だし、艦娘としての自分に苦しんでいたのを助けてくれたのも彼だったの。

 だから、私は、絶対に死なない。生きて敵と戦って、青海提督のために戦いたい。もちろん人類を深海棲艦の手から助け出すってことが大事だって分かってる。私はそのために戦っている。でも、私が慕う青海提督が喜ぶ顔が見たいの。強くそう思っている。

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