艦娘と銀鷹と【完結済】   作:いかるおにおこ

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予感と目覚め

 どこまでも広がる青空。どこにも一欠片の雲もない。

 海は空の青を映えさせて静かに波打っている。辺りには島も陸もない。

 そこに赤城は立っていた。赤色をした弓道着のような戦闘服を纏い、腕には飛行甲板を模した盾のように頑丈な板を備えて。

 波がたてる静かな音と、風がささやくのを聞いて、赤城は次第に意識を目覚めさせていく。ぼうっとしたいた両目ははっとひらいて、そして彼女は海の上にひざまずく。明るいようでどこか暗い海面は赤城の姿を映し出していた。

 

「私……死んだはずじゃ? ここはいったい、どこの海域――」

 

 海面に映る自分の顔はどこもただれていない。まるでアイアンフォスルのバースト砲を受けたのは夢か幻の話のようだ。

 不思議なことはまだ続く。赤城は何かに引っ張られるように海の中へ潜っていく。否、彼女は沈んでいた。沈められていた。

 太陽の光が次第に届かなくなる。深海。深淵の世界。もう自分の手さえ見えない。恐怖が足音を立てずに忍び寄る気配を赤城は感じ取る。

 

「――あれは?」

 

 そこには「なにか」があった。恐らく目では見えていないものだ。どれだけ近づけても指先ですら見えないのに、そこにある「なにか」が見えている。

 「なにか」は恐怖だった。

 「なにか」は悔恨だった。

 「なにか」は憤怒だった。

 希望だった。

 絶望だった。

 幸福だった。

 不幸だった。喜びだった。悲しみだった。

 失意だった。自暴だった。失望だった。悲観だった。

 挫折だった。厭世だった。銷魂だった。慙愧だった。悔悟だった。忿怒だった。善意だった。悪意だった――考えつくだけの形容する言葉が去来して、そして赤城は理解した。

 

 目の前にまで迫った「なにか」は、そう、まるで――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちゃぽーん。

 滴が水面に落ちる音が心地の良いエコーを伴って聴覚を刺激する。そうして赤城は目を開けた。

 いま見ていたものはなんだったのだろう? すぐに赤城は自分の両腕を見た。自分の身体がただれた形跡があるが、じいっと見つめなければ分からない程に目立っていない。

 

「私……生きている? それにここ、入渠ドック……」

 

 赤城がゆっくり立ち上がると、温泉のように濁った水がざあぁと彼女の豊満な身体を伝って落ちていった。

 いまの自分は裸だ。はっきりとそれを認めた赤城は、自分が入居施設で身体を癒していたのだと分かった。

 艦娘の体は傷ついても入渠施設――大抵は資材を溶けこませた大風呂――に浸かれば癒やすことが出来る。切断された指を急いで処置すれば元に戻るように、欠損した体の一部もすぐに入渠に投入すればくっつけることが可能だ。

 それだけの効能を持つこの施設であれば、ただれてしまった体を再生させることなど造作も無いに違いない。だけど自分は加賀に看取られながら死んだはず――赤城は最後の記憶を手繰り寄せながら静かに浴槽を出て行く。

 

「ああっ、赤城さん! よかった、目覚めたんですね!」

 

 お湯の煙で前がうっすら霞んで見えるが、赤城は近くに艦娘が寄ってきたのを認めた。

 駆逐艦の艦娘、吹雪である。外見年齢は12、3の程。成長期にあたる年頃のように見える。

 いまいちパッとしないような印象があるが、根がまじめで他者にやさしく、成績も優秀な優等生であると赤城の目には映っていて、素直な好感を覚えていた。

 

「吹雪ちゃん? いったい、私、どうなっていたの?」

「それは……もう轟沈してここからいなくなってもおかしくない、死にかけの状態だったんです。加賀さんがものすごい顔をして、金剛さんたちと一緒に運んできて……それでどうにかここに連れて来て、高速修復材をたくさん使って――」

 

 死にかけていた。いや、もう死んでいたに違いない。そんな状態から蘇生できたのは奇跡としか言いようがない。

 自分が生きていることに心の底から驚いている赤城は、吹雪の顔が赤くなっているのを認めた。風呂場の熱のせいだけなら両目までもが赤くなるわけがない。感極まった様子で抱きついてくるわけもない。

 

「――とにかくもう、赤城さんが生きていてよかった!」

「吹雪ちゃん……ありがとう、心配してくれて」

「私なんかよりも加賀さんに声をかけてあげてください。赤城さんが生き返るなら悪魔にだって魂を売ってやる、なんて言って荒ぶっていたんですから」

 

 ここまで思ってくれているとは思わなかった。いつも口数の少ない、表情の硬い加賀がそんなことまで言ったのか――赤城は自分が想われていることに感謝しながら吹雪と共に外へ出る。

 

 

 

 脱衣所にある背もたれ付きの椅子に加賀が眠っていた。背中を椅子にあずけて軽く口を開けている。青色の弓道着は、しかし胸当てが外れていて、重力で豊満な体の線が浮かんでいる。

 赤城たち空母や、他にも戦艦の艦娘が入渠する時間はかなりの長時間に及ぶ。傷が深いほど、彼女たちがあの浴槽に浸かる時間は長い。

 しかも赤城の場合は殆ど死んでいた状態だった。吹雪が言うには、高速修復材を大量に使って赤城は生きながらえている。そんな彼女の入渠時間はどれほどのものだったのだろか。

 ただひとつ確かにいえるのは、加賀が赤城を心の底から想っていて、脱衣所でずっと待ってくれていたということだけだ。

 壁にかかっている時計を見れば、もう0時をすぎる頃だった。吹雪は明日に備えて寝る旨を伝えると、お辞儀をして脱衣所を出て行った。いまやここには赤城と加賀の二人しかいない。小さな寝息を立てる加賀に赤城はそっと近づいた。

 

「加賀さん、加賀さん?」

「……いっちゃだめ、いってしまっては――っ、赤城さん? 傷は? 大丈夫なの?」

「ええ。加賀さんのおかげで助かったみたい。どうもありがとう、こうして生きていられるのは加賀さんのおかげね?」

 

 赤城の手が触れると同時に加賀は目を覚まし、すぐに涙を浮かべながら顔を赤くして赤城に強く抱きついた。

 あまりに力が強すぎるので後ろ向きに倒れそうなのをどうにかこらえ、赤城は加賀を抱きしめ返す。早いとこ服を着せて欲しいのだけど、という思いはすぐに消えた。加賀が泣いて叫ぶのを見れば、そんな無粋なことを言おうとするのはどこかへ消えてしまう。

 

「よがっだ! 赤城さんが、あがぎざんがちゃんと生きてくれで!!」

「加賀さん大丈夫、大丈夫よ。私はちゃんとここにいます」

「……ちゃんとここに赤城さんがいる、ぢゃんどいる! あっだがい!! 確かにこごにあがぎざんがいる!! ……これ、夢じゃないんだ……」

「夢じゃないの。夢じゃない。……加賀さん、本当にありがとう」

 

 赤城が抱きしめる力を強めると、加賀も応えるように強めていく。

 そうしてどれだけの時間が経ったろう。一瞬かもしれないし、一分以上にもわたって抱擁を続けていたのかもしれない。時間の流れが麻痺していた赤城は、壁がけ時計に再び目をやった。0時2分。あまり時間は経っていない。

 

「もう昨日は過ぎてしまったのね。加賀さん、早く寝間着に着替えて布団に入らないと」

「え? ……ええ、そうね、明日も……明日も、敵と戦わなければ。そのための備えをしなければ」

「……ねえ加賀さん、今日は一緒に眠りませんか?」

「いいの? そうね、たまには――いえ、こういう時だもの。ご一緒させていただくわ」

 

 涙を拭って加賀はどうにかいつもの平静な調子を保とうとしている。その切り替えようがなんだかおかしくて、赤城は笑いをこらえようとした。どうにも笑いの沸点が低くくて困ってしまう。

 

「もう赤城さん、そんな笑わないでください」

「だってとても嬉しくって……つい、ねえ」

「嬉しいのは私もだけど、って、しまったわ」

「どうしたの?」

「0時になったら執務室に来てほしいって言われていたの。できれば赤城さんと一緒にということだったけど、時間になっても目覚めなければ私だけでもいいから来て欲しい、と。提督は私と赤城さんになにか話があったみたいよ。赤城さん、いま動ける? ……大丈夫?」

「重病人じゃありませんから。大丈夫、高速修復材に漬けられてああして休ませてもらったもの、すぐにだって出撃できますよ」

 

 

 

 

 

 

 脱衣所にあった自分の制服に身を包んだ赤城は、加賀とともに執務室の前に立っていた。

 この鎮守府で一番上の人間にあたる提督、あるいは艦隊司令官の座についている、小森あきこという女性が寝泊まりし、執務をしている大きめの部屋である。

 赤城がノックをして、気の抜けた女の返事が返ったのを確かめて静かにドアを開ける。

 そこには部屋の横にある畳の上で布団の用意をしていた女がいた。

 白い軍服――ではなく、黒いペンギンがプリントされた白の寝間着を着た女性。彼女こそがこの鎮守府の提督、小森あきこである。体の起伏は控えめで、あくびを噛み殺しながら布団の用意をし終えると赤城たちに向き直った。布団に潜り込みながら。

 

「よかったよ赤城ちゃん、具合はどう? 記憶障害とかは?」

「ありません。おかげさまで万事順調、順風満帆の心持ちです」

「そう? ……本当に赤城ちゃんが生きてて良かったよ、本当に良かった。死んじゃったらもう二度と会えないんだよ、悲しいよ。今度無茶なんてしたら絶対にだめだからね」

 

 布団をかぶる小森提督の目線には加賀がいる。目でも語りかけられた加賀は静かに頷き返した。

 それを認めた提督は静かに語り始める。眠気は確かに彼女を蝕んでいるようで、早めに切り上げねば朝からの執務に悪影響が出るのは明白だった。

 

「で、集まってもらったのはねえ、赤城ちゃんと加賀ちゃんにシルバーホークを……ふあー、扱ってもらうことにするよって連絡のためなのよ」

 

 タレ目は眠気でさらに角度が深まり、丸まった背中からは覇気がまったく感じられない。

 艦娘の上に立って指揮をとるのを放棄したかのような姿勢に赤城はため息をつこうとしたが、だるそうな小森提督の言葉に体を凍らせた。

 

「私たちがシルバーホークを? 加賀さんと一緒に?」

「うんうん。だってここで一番練度の高い空母は赤城ちゃんと加賀ちゃんだし。それでね、赤城ちゃんにはレジェンド、加賀ちゃんにはネクストを扱ってもらうからね」

 

 勝手に話を進めないでください、と加賀が抗議する。あまり感情が表情や声に現れていないが、ある種の不安や困惑がにじみ出ているのを赤城は肌で感じとった。

 加賀は密かに左の拳をギッと握っているのだが、それを知ってか知らずか、小森提督はどんどん続けていく。

 

「というわけで加賀ちゃんにはパイロットのブルーちゃんと、赤城ちゃんにはレッドちゃんと仲良くなってもらいます。もう二人には空母寮に案内しているから、そこで合流してちょうだい」

「小森提督。なぜ、私と赤城さんでシルバーホークを運用することになったのでしょう? 見てみましたが、シルバーホークを封じた矢は通常のものよりもかなり大きかったはずです。すぐに運用できるとは思えませんが」

「だから練度の高いあなた方を選んだの。赤城ちゃんと加賀ちゃんなら、シルバーホークの本来の力を引き出せると思ったのよ」

 

 話しているうちに眠気が飛んでいったのか、上半身を起こした小森提督は次第に背筋を伸ばしてハキハキと話すようになった。態度の変化は加賀の不安を和らげたようで、素直に話を聞くようにしているのがわかった。

 

「提督、ちょっといいですか?」

「なあに赤城ちゃん」

「シルバーホークバーストはあれで本来の能力を発揮していない、というのですか?」

「レッドちゃんやブルーちゃんが言うにはそうらしいわよ。だいぶ機体サイズも縮んでいるようだし、攻撃能力とかも相当に劣化しているって」

「そうですか……あの二機にも命を助けてもらいました。私だけでなく、敵の特殊大型戦艦からこの鎮守府を守った功績は大きいはずです。私たち艦娘だけで倒せないことはない相手だと分かりましたが、脅威レベルは敵泊地にある特殊な深海棲艦と同等か、それ以上だと感じました」

「うん」

「二機のシルバーホークと私たちが手を組めば、反攻作戦の糸口をつかめるかもしれません。加賀さん、一緒に頑張りましょう!」

 

 加賀の手をとって赤城は笑っていた。笑うしかない。これほどめでたいことがあってたまるか。自分たちがあれほどまでに高い戦力を行使できるのは高らかに誇るべきことではないか。

 

「え、ええ……」

「加賀さん?」

「……ちょっと疲れているものだから。提督、話は以上ですか?」

 

 そうだよ、疲れてるなら今日は解散ねー。

 軽い調子で小森提督は立ち上がり、押し入れから布団を用意し始めた。それなりに使い込まれているらしい布団に目をやりながらも赤城は一礼してから執務室を出る。

 

「そうだ提督、一つ尋ねてもよろしいですか」

「んー? なになに」

 

 布団の用意を終えて明かりのスイッチに手を伸ばした提督に、加賀は大きく口を開いた。

 

「シルバーホークに搭乗していた妖精さん……彼女らの来歴は問いただしたのですか?」

「うん。簡単にいえば、ダライアスって惑星をベルサーって侵略者から守ってる軍隊のパイロットなんだってさ。とりあえず上の人たちに報告書を作らなきゃいけないし、あー、明日から忙しいねえ」

「ダライアス宇宙軍とかいうところのパイロットということはもう聞いています。なんとも化かされているような気分ですが、置いておきましょう。それ以上のことはレッドやらブルーという妖精さんから聞けということですか」

「そーだよー。質問はそれだけ?」

「ええ」

「そいじゃあ私は寝るよ。おやすみ、また明日ね!」

 

 枕元にあったリモコンスイッチが動作するのと、執務室の明かりが消えたのは同時だった。暗闇の中でもぞもぞと布団に潜る小森提督に一礼した加賀と赤城は静かに執務室をあとにした。

 

「ねえ、赤城さん」

「え?」

「明日からはシルバーホークの発艦練習をしなければ。そのためには艦載機パイロットの妖精さんとのコミュニケーションをとらないと」

「そうですね。……レッドさんやブルーさんに、この世界の事情を教える必要もありそうです」

「気が休まらない日が続くわね。いいえ、これまでもだけど……赤城さんは小森提督のような方をどう思いますか」

 

 唐突で、おまけに抽象的すぎる質問だ。しかし赤城はなんとなく質問の意図が理解できていた。

 加賀とは前の鎮守府から一緒に移動してきた長い付き合いのある仲間だ。だから、赤城の前の提督は加賀も指揮下に入れていた。

 おそらく加賀の問いは厳しかった前の提督と、ああして今もゆるゆるとしている小森提督を比べてどう思うか、という趣があるに違いない――赤城はそう踏んだ。

 

「小森提督? あの人はとてもゆとりのある人だなって思います」

「というと?」

「他の提督は艦娘を厳しく指揮する人が多いでしょう? やれ訓練しろ、休み時間は決められた分だけとれ、遠征はもっとハキハキ動いて一つでも多くの戦果を上げてこい、演習相手は深海棲艦だと思ってかかれ、そして本物の深海棲艦は生かして帰すな、皆殺しにしろ――」

「ええ。私たちの前の提督もそうでしたね」

「――でも、小森提督は、私たちを大事に扱おうとしている。艦娘という兵器として見るのではなくて、普通の人間のような人格のある者として対等に向き合って付きあおうとしている。軍規は遵守して、けれども厳しいことを強要しない。それが点数稼ぎのパフォーマンスに見えることもないし、鼻につくこともないし、親しみやすい提督だと思います」

 

 それではいい提督のように見えるのね、と加賀は静かに返した。同意でも否定でもないあいづち。

 赤城は加賀がこの鎮守府に来てから少しだけ表情が豊かになったような気がしている。元から感情表現が苦手な加賀の不得意な部分が少しだけ和らいだような気がしている。

 あくまで気がするという程度の話だが、感情が爆発する時は思い切り感情的に振る舞うのをこの一件で赤城は学んだ。

 

「けどね加賀さん」

「はい?」

「小森提督は私たちに『死んでこい』って命令したことはありません」

「そうですね。いつも言っているのは、生きて帰って来い、でしょうか」

「……他の提督は死んで来いって言います。私たちの前の提督もそうだった。だけど本当に死んで欲しいだなんて思ってなくて、彼らは彼らなりに私たちを大事にしようとして、それがああいう態度になっていたっていうのは分かります」

「私も分かるわ、そのくらいのことは」

「小森提督も彼女なりのやり方で私たちを支えようと、私たちの力になろうと努力しているのは分かります。さっきのシルバーホークの発艦担当だってちゃんと考えてくれているって思います。けど、けどね加賀さん。鎮守府が襲われそうになっても『死んでこい』とは言わなかったんです、小森提督は」

 

 黙って赤城の言葉に耳を傾ける加賀。その反応に眠っているのではないかと赤城は顔を伺うが、その心配はする必要がなかったと安堵する。真剣に赤城の話を聞いてくれていたのだった。

 

「……私たちは。いえ、私はまだ小森提督の指揮下に入って日が浅い。だから、小森提督がどういう人なのか判断する材料は乏しい。けれども赤城さん、人の上に立って何かを指揮する人が何の覚悟もなくその立場に立てると思いますか」

「いいえ。だから私は――」

「まだ断言は出来ません。赤城さんが危惧するような覚悟のない提督かもしれない。そうじゃないかもしれない。けれども小森提督は今日もこうしてちゃんと提督としての務めを担って、きちんと遂げています。……態度やらなにやらはゆるゆるですけどね」

 

 最後は笑って口元に手を当てて。そうして加賀は空母寮へと先に入っていった。そうだ。今はまだどうなのか分からない。けれども確かに言えるのは、小森あきこという提督は人の上に立つ重い行いを投げ出していない、ということだけだ。

 

 

 

 鎮守府にある艦娘のための寮。艦種ごとに寮が建てられていて、赤城や加賀であれば空母寮に寝泊まりすることになっている。

 どの寮もそれなりの大きさがあり、艦娘一人に一部屋が割り振られている。赤城と加賀の部屋は隣にあるが、加賀は赤城の部屋に入っていく。

 すぐに赤城は布団の用意をして寝間着に着替え、二人でゆっくり眠ろうとして動きを止めた。部屋の片隅にぽつんとぬいぐるみが置いてある。それが少し動いたような気がして、赤城は這うようにして近づいていった。

 

「……妖精さん? もしかして、レッドっていう?」

 

 すぴー、と寝息を立てている妖精さんは、その四肢が機械になっていた。

 サイボーグの妖精さん。体は機械でもこうして眠ることがあるのだとわかると、赤城はどこかホッとしたように息をついた。

 深海棲艦との戦いのために在る自分艦娘が普通の人間と同じように振る舞うのと同じで、半分機械でも妖精さんらしく振る舞う目の前のパイロットに親近感を覚えていた。

 

「それでは赤城さん、おやすみなさい」

「ええ。また明日」

 

 一つの布団に赤城と加賀。少し狭苦しいが、幸せを二人で分けるにはちょうどいい具合だった。それに、少しあたたかいような気もして、いい気分だった。

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