とある魔術の七罪聖人 作:我楽多メロディ
「アスタトロ、パンプキン!雑魚はこちらに任せろ!……てめぇらはターゲットを!」
「オッケッス、希望さん!!」
「了解です、リーダー」
そう言って、彼女ら三人は一列になった。順番はポンチョの少女希望が先頭、その後ろから踊り子の少女アスタトロ、かぼちゃ仮面の青年パンプキンとなり、そのまま一直線に黒服たちに囲まれている親子に突撃しに行った。
「お前たち!!奥様達を絶対に死守するぞ!!配置に付け!!」
黒服たちは圧倒されかけている自分の気持ちを立て直して自分たちの信頼する上司の親子の前に立った。その手にはSPが持っているような拳銃ではなく杖や盃、古風なナイフといったどこか不釣り合いなものが多かった。
「はなてぇ!!」
リーダーらしき黒服の合図により一斉に攻撃が発射される。恐ろしい大きさの火球、渦を巻く激流などなど多彩な攻撃が発動された。しかもダダはなっただけではない。的確に希望たちの回避する隙をなくすようにバラバラに放たれていた。火球を躱せば渦潮が、渦潮を躱せばかまいたちが、かまいたちを躱せば岩石弾が、岩石弾を躱せば火球がそれぞれ襲う。単純ではあるが絶対的な攻撃。多くの数が生み出した一方的な暴力の嵐。完全にチェックメイトだった。
もっともそれは彼女らが並の魔術師だったならばの話だが。
*
ドォォォォォン!!
とてつもなく巨大な音が森の中に響き渡った。多くの魔術的な波状攻撃を行った黒服たちは煙が立ち込める爆心地の方を見ていた。護衛対象である親子はその様子を見てどこか一安心という感じだったが、黒服たちはそう思っていない。魔術を放った自分たちだからこそ分かる。
まだ何も終わってはいない、と。
轟っ!!と一気に煙は吹き飛ばされた。そこにはアスタトロもパンプキンも居ず唯一人、希望が立っていたがどこか雰囲気が違った、というか姿が違った。
「ひぃぃぃぃ!!」
「な、何なのあれ…?!」
「ウソだろ……まさか!!」
今の衝撃のせいか希望の深々とかぶっていたフードは外れていた。若干外はねがある茶髪のセミロングの髪、色白でかわいらしくも美しい顔、百人いれば百人とも振り向くような容貌だった。しかし、そんな整った顔に全く似合わないものが彼女の顔に存在していた。それは
彼女の顔の左側に存在している紫色の大きな刺青だった。
基本的に曲線が多く規則性はないように見えるがどこか人をひきつけ、恐怖されようなおぞましさを醸し出していた。また左目は本来白いはずの部分が真っ黒に染まっており瞳も右目が綺麗な慧眼であるのに対し刺青と同じよどんだ紫色をしていた。
「……その反応には慣れていますけど……やっぱ傷つくな、それ」
希望は傷心を紛らわせるかのように左手でなでた、
彼女の背中から顕現している3メートル前後の一対の紫色の翅を。
その翅は地獄の炎のような状態と宝石のような結晶の状態とに無制限に変化を続けており、さらに翅の中心と思われるところには口を大きく開け嘲笑するかのようなドクロの模様も見えた。
親子は恐怖に震えていた。あまりにも自分たちの常識から外れた見たくもない、それでも思わず見てしまう美しく恐ろしい怪物に心底恐怖していた。それは黒服たちも同じだったのかさっきまで威勢が良かったにもかかわらず、今ではすっかり逃げ腰だ。その中で唯一彼女と相反しているのは指揮を執っていた黒服だ。彼も声を震わせながら叫ぶ。
「そうか……お前がそうだったのかお前が現在の
蠅の魔王(ベルゼブブ)だったのかっ!!!」
希望は、蠅の魔王は応じる。一切の笑みすら浮かべず冷たく酷薄に。
「……今更だろ、ボケが」
そして、そう答えた瞬間、彼女の翅が大きく膨張し、長さ30cm程度の炎の結晶をまるでショットガンのようにすさまじい速さと量を持って黒服たちにはなった。
「っっっっ!!まずい!!全員防御!!」
黒服リーダーとその他数名は何とか防御術式を張り、親子とともにその身を守った。それでも多大なダメージは避けられないがそれでも少なくとも致命傷だけは避けることができた。だが、それはつまり一瞬でも遅れれば、
「ぐぎゃ!!」
「ぷぎゅううう!!」
「ぐっごおおおおおあああああ!!」
一瞬で肉体を削り、無残なオブジェに変わってしまう。それにはまるで目をくれず、いや、まるで目を合わせようとせずフードを深くかぶり直し右手に持つ黒い雷をまとった剣の形をした木の板を構えた。その行動が彼女の意図を全てを物語っていた。
次は殺す、と
*
「(リーダー!!奥様と坊ちゃんを連れて逃げてください!!ここは我々がどうにかします!!)」
「(無茶を言うな!!あいてはあの蠅の魔王だ!!聖人並みの魔力を持つあの怪物にお前たちだけで勝てるわけがない!!俺も…)」
「何を言っているんですか?!あなたがいたからって現状が変わるわけがありません!!!」
小声で話しているという前提を覆すような大声だった。おそらく彼自身にはももうほとんど余裕がないのだろう。
「………おそらく俺たち全員でかかっても絶対に勝てません。でもほんの少しでも足止めをして見せます、だから!!
にげてください!!あの二人を生かすことこそが我々の勝利です!!」
自分の部下たちの言葉を聞き、黒服リーダーは少し黙った。そして、
「すまない、お二人を安全な場所に逃がしてからすぐに向かう、だから死ぬな!!」
黒服リーダーは腰を抜かして震えている親子をかついで眼にもとまらないおスピードで森の中に消えていった。その様子を一通り目で追った黒服たちは立ち上がり蠅の魔王に向かい立つ。
「さぁ、来いよクソッタレな悪党野郎」
「……それに関しては痛いほど理解していますよ」
やばい……主人公が悪党すぎる……。
ヒーローっぽいことをするのはもう少し後になると思います