とある魔術の七罪聖人 作:我楽多メロディ
「さて、残る問題は彼ですね、アスタトロ」
パンプキンの言葉に地に手と膝を付けていた黒服リーダーは本当に少しだけ震えた。
「確かにそうっスよねぇ。正直な話護衛まで絶対殺せとは言われてないっスからね……どうします?見逃します?」
「そうですね。…そこのあなた」
パンプキンはまるで義務報告のように黒服リーダーに一方的に自分たちがこれからすることを言い放った。
親子の死体をまるで引きずるような雑な持ち方をしながら
「とりあえず我々はこの『親子(ターゲットの死体)』を回収します。あなたも逃げるのなら今のうちに」
「ふざけるな………」
この物言いに限界ギリギリだった黒服リーダーの堪忍袋の緒が切れた。まるで死者を冒涜するかのような行いについに激しい怒りがあふれ出した。
「確かに我々の上司はいや我々の組織はイギリス清教にとって抹殺すべき対象なのだろう……だがなぜだ?!!あの親子は魔術(こちら側)には全く関係のない人物なのはお前たちだってわかったはずだ!!なのになぜっっっ!!………なぜなんだ!!!」
黒服リーダーは自分の思いを吐露した。元々彼は『明け色の陽射し』に入った時から死は覚悟していた。イギリス王室派と真っ向からケンカを売っている魔術結社なのだ死にかけたことだって山ほどある。しかしあの親子はどうだ。確かの彼女らの大切な存在は自分たちの組織でかなりの実力を持った魔術師だった。当然王室派の連中からにらまれることも決して少なくなかったろう。
だが、それが殺される理由になるのか?高速の刺突攻撃をくらい今までの思い出を思い返す暇もなく殺されていった母親に罪はあったのか?無限の可能性が存在していた人生を投げナイフ一本で終了されられた少年に咎はあったのか?
だから、彼は憤る。自分ナチの世界には存在しない温かい未来を奪い無制限の理不尽と暴力をばらまいた彼女らに、そしてそれから守れなかった自分ら自身に。
しかし、
「んーとっ……だから?だからなんスか?」
「……………………っっっっ???!!!」
彼女らにはその激情は届かなかった。
「そもそもあなた方は俺たち『贖罪羊』の目的を理解されていないようですね」
パンプキンはまるで無知な子供に教えるような口調で話し始めた。
「俺たちの目的はただ一つ、イギリス清教に敵対行動をとった魔術師の『親しい人間の完全虐殺』です。で、その大半は魔術師として未熟、または一般人です」
「何、だと……?!」
黒服リーダーは驚いた。それはつまりこのような胸糞の悪い仕事だけを担当する部署ということになる。だが、彼のそんなリアクションには気づかず今度はアスタトロが説明を変わる。
「私らも詳しくは知らないんスけど、今から20年くらい前にイギリス清教の関係者を襲った連続殺人事件が起こったらしいんスよね。で、その犯人はそのさらに5年前清教派によって処刑された女の子の兄貴だったらしいんス。……で、その事件で戦力を3割がた削られた最大主教(アークビショップ)はこう結論した、
『復讐心は子猫を猛虎にするには十分すぎる麻薬だ。こちらが喰われる前に徹底的につぶさなければならない』とね」
そしてこの組織は生まれた。自分の命襲い掛かる猛虎を必死の思いで押しのけるのではなく、昼寝している子猫をぐちゃぐちゃになるまで踏み潰すことを日常と定めた暗部。必要悪の教会が日ごろ受ける何十倍もの憎悪を殺意をその身一身に受けるために作られたイギリス清教のドス暗い闇。
「それが俺達です」
*
黒服リーダーは完全に絶句した。自分が激怒していたはずなのに逆に彼女らの話にのまれてしまっていたような感じだった。もちろん自身の護衛対象や仲間を殺された怒りはある。しかしもうそれを彼女たちに向けていいのかわからなくなってしまった。
「……仕事は終わったようですねみなさん」
不意に後ろの方の茂みから声がしてきた。振り返るとそこには紫ポンチョのフードをかぶった蠅の魔王が立っていた。彼女自身はものすごく清潔だが、彼女が持っていた剣の形をした木の板には乾いた血がべっとりをついていた。
「貴様……!!まさか!!!」
「……語らなくてもわかるだろう?」
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!」
その言葉で黒服リーダーは冷えていた頭が一瞬で激昂し、現在残っているすべての魔力を使い自身が持つ最大出力の一撃を繰り出した。力強く手を突き出した先には純白の光の玉が発射された。
召喚砲撃、と彼は勝手に呼んでいる。自分の礼装によって呼び込んだ天使の力(テレズマ)をただ漠然とこの世界に大量に叩き込みその炸裂によって相手を倒す威力絶大な近距離広範囲攻撃。直撃すればほぼ間違いなく人間を四散させる威力がある。そんな魔術が蠅の魔王の鼻先で、
「……ざぁんねん、だったなぁ」
発動しなかった。
「……??!!」
一瞬硬直した瞬間を狙ったのか蠅の王は首元に血が付いた木の板の剣を当てたすると、
バチィ!!
「か…っは……!!」
「威力は最小限に抑えてある。命の心配はないさ」
黒い電気が黒服リーダーを襲いあまりにも呆気なくその勝負を終わらせてしまった。それでもまだかろうじて意識があったのか彼は彼女に問いをかける
「今……のはいった…い何だ………なぜ私の召…喚砲撃……が消え…」
「お前だって本当は気付いているはずじゃねぇのか……僕が、いえ蠅の魔王だけが持つ術式のことを」
「……!!!……まさ……か今のが………」
「そう今のが、
魔術、魔力を吸収し無力化する……『魔王の胃袋』だ」
アス「私ら……今空気っスね」
パン「やめてください、悲しくなる」
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