「―ん…」
ふと、目が覚めた
ゆっくりと目を空け、いつもの様に体を起こそうとする
しかしー…
「―…え…?」
何かがおかしい―…
自分はいつもの様に布団で寝ていた筈
だが体を起こそうと手をついた時の感触はいつもの毛布ではなく――湿った土の感触
俺は慌てて体を起こし、回りを見渡す
そこはいつもの自分の部屋ではなく――ずっと先まで木が続いている―森だった
「―…どういうことだ…?」
混乱する頭を何とか働かせて、自分の状況を整理するー…
俺はいつも通り自分の部屋で寝た筈
だが起きたら見知らぬ場所で寝ていた
(―"対勢力"による拉致…?…だがそれだとこんな場所には…)
俺が一番に疑ったのは拉致・誘拐の線だった
だが拉致ならばこんな何もない森に置いておくのは不都合過ぎる
拉致の途中で何か"アクシデント"があった線も捨てきれないが―…
(―…情報が少なすぎる…でも…)
何にせよ情報が何もない
自分に何が起きたのか判断し、対応する事が出来ない
そんな時ー…
「―…ん?」
地面を注意深く見ていると見覚えのある物が―
俺はゆっくりとそれに手を伸ばす
「―これは…俺の携帯?」
手にとったのは自分の携帯
寝るときは枕元に置いてた筈だが―…
(―拉致ならここに携帯が落ちてるのは不自然か…だが何故…)
謎は深まるばかりだ―
だが拉致の可能性は薄いかもしれない
何はともあれ携帯があれば誰かと連絡がとれる
こんな森の中で電波がたってるか怪しいが―…
俺はゆっくりと立ち上がり携帯を開く
「―やっぱりか…」
当たってほしくない予想は当たってしまい、携帯の電波は届いておらず圏外の表示
やはり森の中では無理なのか
しかし、それ以上に目を疑ったのはー…
「―まだ深夜なのか…」
俺はそう言って空を見上げる
空に星は出ておらず、暗い雲が空をおおっている
携帯の示していた時刻は1時15分
いつもなら寝ている時間だが―…
(―…こんな状況じゃ寝てられないな…)
俺はそんなことを思いながら、ゆっくりとため息をはきながらもう一度空を見上げる
そこには変わらず曇天の空模様
今にも雨が降りだしそうだと考えていた矢先―…
「―…ついてない…」
ポツリと空を見上げていた顔に水滴が落ちてくる―
そしてポツポツ降りだした雨はあっという間に強くなり今は辺りを雨の音が支配している
「―…とりあえず何処かで雨宿りしないと…」
俺はそんなことを呟きながら雨宿りを出来る場所を探すため小走りでその場をあとにするのだったー…
雨が降りしきる森を小走りで走り続けて十数分ー…
すると、ずっと続いていた森を抜けた
「―…ここは…湖?」
森を抜けた先に見えたのは大きな湖だった
今は雨の影響で水面は波立っている
しかし、雨宿り出来るような場所は見当たらない
それに―…
(―こんな湖は見たことがない…それに家の近くに森すらもないはず…冷静に考えれば車でも2時間程度で行ける場所には森や湖なんて…)
考えれば考えるほど謎が増えていく
むしろ答えから離れていってる様な気さえしてくる
(―とにかく今は雨宿り出来る場所を探さないと…)
暫く湖を眺めながら思考を巡らしていたが雨にうたれ濡れた体が冷えてきたのか
思考が遮断され本来の目的を思いだす
今の季節は春先だが、それでも夜は冷える
雨が降って体が濡れてれば尚更だ
一度、目の前の見渡してから再び湖に沿って小走りで走り始めるのだったー…
森を抜けてから小走りを続けること数十分程ー…
雨に濡れた体が寒さと服に重みを増し、体力を奪い続ける中
遠目に何かが見え始めた
雨の影響か遠目ではよく見えなかったが、近づくにつれ"それ"ははっきりと見え始めた
「―これは…屋敷…?」
目の前までたどり着いた俺はその大きな建物を見ながらそんな事を呟いていた
たどり着いた建物はとにかく大きかった
屋敷の周りはレンガの壁で囲まれており、正面には大きな門もあった
見た目は海外の豪華な屋敷に見えるがー」
(―こんな屋敷は見たことがない…むしろ自分の知る限りこんな場所は知らない…)
目覚めた森に抜けた先の湖――そしてこの屋敷
全てに見覚えなどない
むしろ付近にこんな場所などなかった筈
結局謎は解けないままだがー…
「―…クシュンッ!」
雨に濡れすぎたのか寒気が止まらずクシャミが出てしまった
今はとにかくこの屋敷で雨宿りをさせてもらうのが先決だろうー…
俺は目の前の門をくぐるため門に手を置き軽く押す
鍵がかかっているかも――等と予想していたがそれは杞憂に終わり
門は意とも簡単に開いた
そのまま門を抜け、屋敷に入るための扉の前に立つ
そして、扉を二回ノックし
「―すいません!誰か居ませんか!」
少し大きめの声でそう叫んだ
何も言わずに入るのには抵抗があったためそんなことをしたのだが
(―無反応…か…)
その声に答える声はなく、屋敷からは物音すらしない
そんな状況に軽くため息をつきながらポケットから携帯を取り出し開く
「―こんな時間なら仕方ないか…」
開いた携帯の時刻表示は2時を回っていた
この時間なら誰も起きてないのは仕方ないことか
かといって勝手に中に入るのは――そもそも鍵がかかっている可能性がある
そんなことを思いながら何気なくドワノブに手をかけて回す
するとー…
「―…あれ?」
扉はすんなりと開いた
この時間に玄関の鍵が開いているのは不自然だがーー俺にとっては有難い事なのだろうか
若干、気が引けたが濡れたまま外に居ては
体が冷える一方だ
雨風を凌ぐため――そう自分に言い聞かせて扉をゆっくりと開いた
そして開いた扉から一歩、屋敷の中に踏み入れる
「―お邪魔します…」
誰にも聞こえていないだろうが一応そう言って
入ってきた扉を閉める
屋敷に入ってすぐ目に入ったのは大きなホールと所々の壁に設置されているロウソクが怪しく灯っている光景だった
(―中も海外みたいな印象だな…まぁ、雨宿り出来るなら何でもいいか…)
そんなことを思いながら
ゆっくりとホールの中央に向かい辺りを見渡す
辺りを照らすのはロウソクの光だけなので
薄暗い空間が広がっている
そんな中、回りを見渡していると奥へと続く通路を見
つけた
外から見た感じ大きな屋敷だろうが勝手に中を歩き回るのは気が引けるが―
(―タオルとかあれば貸してもらいたいし…少し位見てまわってもいいかな…)
そんな自分勝手な考えをまとめ
奥へと続く通路に向かう
初めて見る場所を探検する様な気分で―…
奥へと続く通路に入って探検する事数分―
俺は小さな困難に直面していた
「―…迷った…」
そう、道に迷ってしまっていた
広い屋敷を軽く探検して、あわよくばタオルでも見つければいいなとか思いながら
歩いていたが完全に元の場所に戻る道を忘れてしまっていた
ここに来るまで扉はいくつか見つけているが
誰かの部屋だとまずいのでスルーしていたが
気がつくと玄関がある方向を見失ってしまった
(―初めて来る場所で迷子とか…今日はとことんついてないな…)
そんなことを思いながら深いため息をついた
目が覚めたら知らない森で寝ていて突然降り始めた雨から雨宿り出来る場所を探すこと約一時間
ようやく雨宿り出来る場所を見つけたと思い中に入ると
好奇心に勝てず探検に出た結果、迷子に―
とことんついていない
「―はぁ…ん…?」
今の状況にため息をつきながら歩みを進めていると
気になる物が視界に入ってきたので歩みを止める
それは今まで見てきた扉とは違い先まで暗闇が続く下りの階段
ここは一階の筈だからこの階段は地下に続いていることになる
(―地下もあるのか…この屋敷には…)
改めて屋敷の大きさを痛感した
階段は電気もロウソクもついておらず
ずっと先まで暗闇しか見えないため、どこまで続いているか判らない
「―迷ってるし…気になるな…」
俺はそんなことを呟きながら携帯を取り出す
そして携帯に附属されているライトをつけて地下に続く階段を照らしながら
一歩一歩降りていく
そのまま暫く階段をライトで照らしながら降りていくと
階段の終わりが見える
「―これは…鉄製の扉…?」
階段を降りきると少し広いスペースがあり、その先には大きな鉄製の扉がたたずんでいた
まるで何かを隠すように――その扉は存在していた
俺は暫くその扉を眺めていたが眺めていても何かが変わるわけなくゆっくりと扉のノブに手をかける
刹那―…
「―…!?」
ノブに手をかけた瞬間、身体中を寒気が駆け抜ける
雨で体が冷えていたからではない―
その原因は鉄製の扉の先からの気配
それは混じりっ気のない純粋な――殺気
身体中から汗が吹き出す
本能が警告している―開けてはいけない、と…
だが手を離すことが出来ない
何故かは判らないがこの手を離してはいけないと思っていた
ノブを握る手は微かに震え
息は切れ、肩で息をしていた
「―…ふーっ…」
俺は目を閉じ、ゆっくりと息を吐き気持ちを落ち着かせる
そして決心し、目を開きゆっくりと扉を開くのだったー…