そして悪魔の言葉
「It's showt ime」
絶望はすぐそばまで迫って来ている。
今日の黒猫団のレクチャーも無事終わり、宿屋に戻った。宿屋に戻ると、いつも通りにぎやかに夕食を食べてる。
「明日は一つ上の層に行ってみようと思う」
俺が食事中に突然呟くと、皆は少し驚いた。
「ダイキさん、いいんですか?」
このギルドのリーダーであるケイタが聞いてくる。
「ああ、サチも前衛として十分機能してきてるし、皆のレベルも安全なところまで来てるしな」
「なるほど…」
「ということで、明日は十二階層に挑戦するから、今日の内に装備や道具の準備をしておいてくれ」
俺が明日のことを皆に伝えると、その後は軽く雑談をして、皆がそれぞれの部屋へ帰っていった。もちろん、俺も自分の部屋に帰った。
自分の部屋に帰ると、装備とアイテムを確認して、ベットに倒れた。そして目を瞑ろうとしたところで、突然ノックの音がする。
「はい、どうぞ」
「失礼します…」
なんと、入ってきた人はサチだった。
「どうしたんだ、サチ?」
「あの、眠れなくて…隣いい?」
…なんやて!
ということで、今サチと隣合わせで寝ています。まぁ、寝る時に隣に女性がいるのは慣れてるからな麻子とかで。
そんなことを思っているとサチから俺に話してきた。
「ダイキ、本当にありがとう」
「どうした急に?」
「いや、こんなに私たちを強くしてくれてるのに、まだお礼言えてなかったから」
「なんだ、そんなことか。別にいいんだよ、ボランティアみたいなものだと思えば」
「そんなことないよ。だからね、お礼になればいいんだけど…この剣を渡そうと思って」
「この剣?」
サチはそう言うとアイテムゲージから一本の剣を出して俺に渡してきた。
その剣は黒く、しかしキリトの相棒であるダークリパルサーとは違い、夜空の黒みたいな感じで少し紫に近い色をしている。
「『月夜の黒剣』…って、これレアな武器じゃないか」
「うん。偶然ダンジョンで見つけたんだけど、皆が私が見つけから私が持ってていいって言われてて…」
「それを俺に?」
「その剣、装備するのにどうせレベル足りないし。それにダイキの方がうまく使ってくれると思うから」
よく説明のところを読んでみると、装備可能レベルが四十と書いてあった。ちなみに俺のレベルが四十七で、サチが二十二である。
「…分かった、ありがたく使わせて貰うよ」
そんな感じで話した後はなかなか話しが続かず、静かになってしまう…気まずい。すると、俺は最初にサチと話したことを思い出し、話しをする。
「そうだ、サチ。最近うまく戦えるようになってきたが、まだ戦うのが怖いか?」
「…」
サチはすこし無言になるが、直ぐにその質問に答えた。
「正直まだ怖いけど…でも少しずつだけど、大丈夫になってきてるような気がする」
「はっは、そうか。なに、もう直ぐ怖くなくなるさ、それまではお前のこと守ってやるよ」
「…うん。ありがとう」
俺とサチはこんな会話をして、お互いに眠りについた。
朝になると、隣にサチはもう居なかったので、恐らくもう起きたのだろう。俺の準備は昨日済ませたので、下の階に行く。
下の階に行き朝食を食べて、とりあえず皆に一時間後に転移門に集合と告げると、一旦その場で解散した。
今日は一日ダンジョンに籠るつもりなので、皆いろいろ買わなきゃいけないものとかあるんだろう。
俺は特に買うものもないので、適当に街をぶらぶらして、時間を潰すことにした。
街を歩いていると、アルゴからメッセージが来た。
メッセージを見ると、例の俺について聞き回ってる奴が俺の近くに来ているらしい。しかしここまで特に接触してこないし、なにより俺自身が見てないので、特に今は考えないようにした。
あっという間に一時間は過ぎて、俺は街を歩き終わり、集合場所の転移門に来ていた。
皆はもう準備満タンみたいな感じで、俺より前に来ていた。さすがだな。
「そうだ、ケイタ。しっかり、昼飯買ったか?」
「はい、もちろん。いやー、それが親切な人と会ってドリンクとパンをセットで、安く買えたんですよ」
「へー、それはラッキーだったな」
俺はこの時、ケイタが安く買えたのは単に運が良かったのだと思っただけで、特に深くは考えなかった。
「それじゃ、いくぞ!」
そして、俺の掛け声と共に皆で十二階層に転移した。
十二階層に着いてからは順調に敵を倒していき、特に苦戦もしなかったので、迷宮区に入ることも俺が許可した。
迷宮区に入っても、黒猫団は俺が教え込んだうまい連携でモンスターを倒して行く。
そんな感じで時間は過ぎていき、昼飯の時間になった。
迷宮区も俺がしっかりマッピングしていたので、モンスターが出ないエリアについて分かっていた。
そしてそのエリアにたどり着くと、俺は皆に向けて言った。
「よし、皆ここで休憩しよう」
皆は俺の言葉を聞くと疲れたように、座り込んだ。まぁ、結構ハードだったしな。
皆は喉が乾いていたり、昼飯の時間ということもあり、ケイタに渡されたドリンクやパンを食べ始めた。もちろん、俺もドリンクを飲む。
しかし、俺は飲んだところで何か違和感を感じた。
…なんだ、この感じ?
ポト 、 カン
すると、あちらこちらからドリンクやパンを落とす音が聞こえ始める。
そして…
「体が…」
「嘘…。なにこれ?」
「皆、落ち着け!」
そう、体が動かないのである。俺もドリンクを飲んだ瞬間、体が動かなくなった。俺は直ぐ様、自分の状態を確認する…すると。
麻痺だと…
俺は麻痺だと分かっても、この層では麻痺状態にするモンスターが出ないと分かっていたので、麻痺の回復薬を持っていなかったので、自然に解けるのを待とうと思っていた。
しかし突然、このエリアの入り口にフードのプレイヤーが現れた。
誰だ?…さっきまでこの迷宮区にはプレイヤーはいなかった筈…まぁ、その事はいい…とりあえず、麻痺の回復薬があるか聞いてみるか。
俺がそのプレイヤーに回復薬があるか聞いてみようとすると、そのプレイヤーはゆっくり俺らへと近付いてきて、腰に差してあった剣を抜いた…。
近くまで来て初めて気く。そのプレイヤーのカーソルが赤だということに…。
そしてその男は剣を振り上げ、ケイタに突き刺して告げた。
「It's show time」
この瞬間、絶望が始まった。
男は何度もケイタに剣で切りつける。すると、ケイタは悲鳴を上げて…そして死んだ。
「HAHAHA、まず一人」
「嘘…」
「何しやがる!」
「よくもケイタを!」
皆はそれぞれ目の前の男になにかしら言っている。だが俺はケイタが死んだことより、過去に死ぬほど殺し合いをしたあの男と重なり、冷静さを失っていた。
嘘…だろ
「やっ、やめろ…」
俺の制止を聞く筈もなく、麻痺状態も治らず、
奴は一人一人とギルドのメンバーを殺して行く。
パリン
あっあぁ…
パリン
何で…
パリン
くそ!
そして、今度はサチのところへ奴は行く。
「これで最後だな…」
「やっ、やめてくれ…」
奴は持っている剣を振り上げて、そして思いっきり…振り落とした。
そしてサチは最後に俺の方に向いて言った。
『ありがとう』と
パリン
そして彼女も、皆の後を追うように死んでいった。
「ウィサゴー!」
俺は涙を流しながら、怒りの声で奴に叫んだ。
「HAHAHA、最高だな。そして久しぶりだなダイキ」
「何が最高だ…」
「そうだ、そう、その表情。やはり、お前には絶望こそがふさわしい」
「黙れ!」
「おっと、そろそろ麻痺も解けちゃうかな。ダイキ、よく考えておくんだな。お前は希望と絶望、どちらであるべきかを」
ウィサゴは転移結晶を出して入り口へと戻る。
「そうそう、この世界での俺の名前はPoHって言うんだ。それじゃ、次会うまでに考えておけよ」
そしてウィサゴは俺の方に向いて言った。
「また会おう」
奴は最後にこの一言を俺に告げて、その場から姿を消した。
そのエリアには黒猫団の皆を自分の運命に巻き込んでしまい、悲しんでいる一人の男の姿があった。
次回はオリ主がどう立ち直るか…どう絶望を受け止めるかを書いていこうと思います。