4話 お箸は右手
あの一姉とサッカーしたり、雄二と秋葉に行ってからかなりの月日がたった。
今日は兄妹三人で一姉の提案で、キャッチボールをするために公園に向かっている。
なぜそうなったのかというと、あの一姉を見れば分かると思うが一姉は天才である。そして昨日の夜、ついに雄二が一姉に対しての劣等感が限界に達し、一姉に今まで思ってた事をぶつけてしまったのだ。あっ、ちなみに俺はふざけた兄と思われているらしい何故だ?
まぁ、そんな訳で普段は強引には誘わない一姉だったが今回はそうはいかず、三人でキャッチボールをしようという事になったのだ。
「いくわよ、えい!」
「ふっ!」
雄二は一姉からボールをキャッチすると、今度は俺に右手で投げようとするがボールは地面に二回バウンドして俺の元に来る。
「何で左手を使わないの?」
すると、一姉が投げる手で疑問を持ったのか雄二に聞く。
確かに雄二は投げる時右手で、あまりとばないにも関わらず右手で投げているが。
「右手を使えって言ったのは姉さんじゃないか」
「それは箸の話しよ。別に投げる時は右手でも
左手でもどちらでも構わないわ。左手で投げて
ご覧なさい」
一姉がそう言うと、俺は順番的には一姉に投げるボールを雄二に投げる。
それを雄二が取り、今度は左手で俺に投げてみる。
すると、左手で投げたボールは右手で投げたボールとは違い、しっかり俺の元へバウンドせずに届いた。
「左の方が上手じゃない」
「確かに上手だな、もしかしなくても左利きなのか?」
俺も一姉に便乗して褒めると、一姉は話しを続ける。
「でも、右手でももっとちゃんと投げられるように練習しましょう」
「どうして?」
雄二は疑問に思ったのか一姉に聞く。まぁ、でも両手で投げられた方が普通にいいわな。ちなみに、俺は右利きなので左手で投げるのは苦手だ。
「左手でできない事があると不便でしょ。ただしお箸は右」
「分かった」
雄二は理解したのか頷いて答える。
「大樹もよ。大樹は左手で投げれるようにしなさい」
「分かったよ」
今度は俺にも注意してきたのでしっかり答える。
そしてキャッチボールが終わると、すっかり夕方になっていた。
三人で手を繋いで歩いていると一姉が兄弟である俺たち二人に聞く。
「今日は楽しかったね」
「うん」
「ああ」
上から順に一姉、雄二、俺だ。
「ねぇ雄二、あなたは別に私と違って時間が掛かるという訳でやってやれないこともないのよ」
「本当に?」
「ええ、大切なのは諦めないこと。諦めの悪い事がいつかきっとあなたの武器になる。どんな
困難な状況になっても周りの人間が諦めて絶望していたとしてもあなただけはそれでもって立ち上がれる男にしなさい」
雄二は静かに聞く。
「いい努力家はね、一種の才能なの。分かった?」
一姉は微笑みながら雄二に問いかけた。
「うん」
雄二も笑いながら頷く。
「そうだぞ、雄二。諦めたらそこで試合終了なんだぞ!」
「…うん」
「はぁ、あなたもよ大樹」
「えっ」
一姉は俺にも話を振ってくる。俺はまさかこの流れで自分に回ってくるとは思わなかったので驚いた。
「あなたもいつか絶対に自分じゃどうしようもない問題に直面することがあるでしょう。そんな時でも絶対諦めない男になりなさい。分かった?」
「ああ、諦めないよ絶対…」
一姉は俺にも微笑んで、問いかけてくる。俺はこの問いに、大きな決意を抱き答えた。
次回はあの男が登場…