二つのエフェクトが私を襲った。私は冷静に大きな盾でそれを裁き、PoHの出方を伺う。
「ho、さすがは攻略組を代表するギルドの団長、ヒースクリフだ」
「PoH!何故、私の前に現れた」
「なに、単なる嫌がらせさ」
PoHは二本の首切り包丁を青く光らせ、今度は先ほどよりも重い連撃を放つ。本来、片手剣二刀流の水平四連撃スキルバーチカルアーク。
しかし、私は一歩も引くことなくそれを盾で受け止めた。
「この程度か」
「まだまだこれからださ!」
「それは黒の剣士のみに許されたものなんだがね!」
「なに、これだけじゃないぜ!」
PoHは次に緑色のエフェクトを纏わせた二つの首切り包丁を私に向かって投げる。それは普通に投げたものよりも速く鋭くこちらに向かってきた。投げたはずの首切り包丁は奴の手に戻っている。
「くっ」
「どうよ!ユニークスキルの一つ無限槍の味は」
「貴様、どこまでも!」
「ho、そう怒るなよ。しかし、さぞかしい楽しいんだろうな。大切な協力者……いや、息子としてまで受け入れようと思っていた子供を地獄に叩き落として完成したゲームは!」
「……貴様、まさか」
「haha 、本当はさっき会った時、久しぶりと声を掛けるべきできだったんだがな」
PoHは一人私に向けて笑うと、被っていたフードを外す。
私はその姿を見て今でも忘れないあの日を思い出して怒りが混み上がってくるのを感じた。
「聞いたことのある声だと思ったが、貴様だったかPoH!!」
「hahaha 、その通りだ。哀れな開発者茅場晶彦!」
「くっ」
PoHは一度二つの首切り包丁を鞘にしまい、それを勢いよく抜き二つの衝撃を放つ。私はそれを盾で再び弾き接近。攻撃の構えに移る。
ユニークスキルである神聖剣は最大の防御に加え、そこから直ぐに盾でも攻撃を同時に行えるのだ。
しかし、奴は抜刀術で止まることはなかった。再び管理者権限を使用することでモーションの無駄な時間をなくし、次のスキルに移る。
「ho……スターバーストストリーム!」
「……っ」
私は攻撃に移ろうとしたモーションを中止し、直ぐに盾を構え直す。
PoHが放った二十一連撃は容赦なく私にの動きを止める。先ほどの四連とは異なり、今回はその五倍以上。
私は後ろに下がりながら受け流そうとしたが、突然背後にないはずの岩が現れて動きが止まってしまう。
「貴様!」
「ふきとべ!!」
私は直撃を避けることに成功したが、完全に無効かすることは出来ず、後ろにぶっ飛び岩にぶつかってしまう。
「……」
「惨めだな、茅場」
PoHは静かに近付いてくる。
私はその間にもあの時のことを思い出していた。
「確かに間違っていたのかもしれない……」
「?」
今でも思い出す。
彼の姉をタナトスから救おうと動こうとしたとき、彼に養子の件を話そうと動き出した時、国と立ちふさがったこの男のその脅し文句を。
私はこのゲームを開発を……夢にまで見た鋼鉄の城を再現したかった。そしてなにより、私は彼が話してくれたあの素晴らしい物語に近いものを辿ってみたかったのだ。
私は自分に言い聞かせるようにゆっくり立ち上がる。
「私は一つのゲームを作ろうとする開発者として正しくても、人として決してやってはいけないことをしてしまった」
「ha、そのとおり!」
「だが……」
私が言葉を放つと同時にPoHの動きは止まる。
「これは……」
「しかし、貴様にそのことに関して口を出す権利はない。罪滅ぼしの予定もこれからあるのでね。なにより……」
突如、二本の剣がPoHの両腕を貫く。
「がっ……」
「君を殺すことがなによりの罪滅ぼしだとは思わないかい?」
「茅場晶彦ぉーーー!!!」
PoHの怒声この洞窟に響き渡る。しかし、その瞬間に何者かに二本の剣は破壊された。
「盛大にやられてるね」
「……テュポーンか。この男を舐めすぎたようだ。しかし、実験は成功した。ずらかるぞ」
「逃げるのか?」
「ha、目的は果たせたからな」
PoHは懐から出した転移結晶……よく見れば赤く染まっている似た何かを砕く。すると、隣にいたユウジというプレイヤーと共に姿を消した。……いや、この世界からと言った方が正しいか。
「まさか、彼らの技術があそこまで進んでいたとは。タナトスプログラムの制御が奪われるのも時間の問題かもしれん」
私は構えていた剣をしまいながら、表示されている管理者権限の表示を消そうとすると、後ろにプレイヤーが来ていることに気付く。
私はそのプレイヤーの名前を見て静かに笑う。
そしてそのプレイヤーと対面する……表示を消さないまま。
「ヒースクリフ……お前は!?」
「見られてしまったか。事故とはいえ君にこのタイミングでばれてしまうとは。運命の強制力というやつかな」
私は決して焦ることなく、黒の剣士……キリトくんと話しを始める。
しかし、ここは隠しエリアのはずだったのだがな困ったものだ。
「私のことを知りたければダイキくんと二人で七十五層のボス部屋に来たまえ」
「何でダイキと?」
「それは君もうっすらと気付いていると思うが」
「……っ!」
「まぁいい。偶然とはいえ私の正体に気付いた君には直接その目で見届ける資格がある」
私は管理者権限を強制的に発動し、座標をここより上層の七十五層のボス部屋に設定する。
「待て!」
「では、キリトくん待っているよ。ダイキくんにもよろしく伝えくれ」
まったく、賭けは君の勝ちだ。ダイキくん。
私はこれから起こることを思いながら攻略組より一足先にこの層から姿を消した。
次回かその次かSAO編クライマックスです。せめて黄色い評価に戻したいところ。