楽園を求む転生者   作:厨二王子

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57話 最後の会話

「……ダイキ、お願いだ。知っていることを話してくれないか?」

 

「……」

 

 攻略組と笑う棺桶との戦いはボスであるPoH、そしてその側近でありユウジと名前を偽っていたテュポーンがいなくなることで終わりを迎えた。

 俺はテュポーンがいなくなるとアスナと合流して、状況の確認を行う。今回の戦い、成果は大きかったがその分犠牲も少なくはなかった。

 さらに結局、ヒースクリフの姿もあれから発見出来ず、途中で別の道へ向かったキリトからも連絡が来ない。そんな彼から五十層の喫茶店に突然呼び出されて今俺はキリトと向かい合って座っていた。

 

 しかし、このキリトの反応。もしや……

 

「待て、知っていることってなんのことだ?」

 

「……ヒースクリフが七十五層のボス部屋で待つだそうだ」

 

「……っ!」

 

 奴がボス部屋で待っている。それが意味することは一つでしかない。キリトがそれを知っていて俺に伝えきたということは……。

 

「そうか、気付いたんだな」

 

「偶然な。それよりも……」

 

「偶然……か。それでもお前がこの時期にあの男の正体に気付く。運命の修正力かな」

 

「ダイキ!!」

 

「ありがとう、キリト。これで終わらせることができる」

 

「終わらせる?一体なにを……」

 

「行けば分かるさ。それより時間が惜しい、今すぐに行こうか」

 

「……時間?」

 

 俺は席を立つと会計を済ませ、キリトを連れて店の外を出る。

 

「キリト、このまま七十五層のボス部屋の前まで跳ぶが大丈夫か?」

 

「すまない。付け焼き刃だとしてもしっかりと準備して行きたい。二時間だけ時間をくれないか?」

 

 思えばボス……いや、それ以上の存在のところに行くんだ準備は必要だろう。しかしこんなことも忘れるとは……焦り過ぎたか。

 

「……分かった。じゃあ三時間後、ここに集合しよう」

 

「ああ」

 

 キリトがこの場を離れるのを確認すると俺はアイテム欄にある一姉に貰った短剣を確認する。あの男の性格を考えるにこれを使う確率は低いと思うが、しかし今回の場合は逆に使う機会があるのではないかと俺は思っている。アイテム欄を消すと、新しいメッセージが来ていることに気付く。

 

「アスナからか」

 

 内容は明日に行われる笑う棺桶戦の反省会と七十五層のボス部屋についてのことだった。

 アスナは毎回、会議などがあるとしつこく連絡をよこしてくる。まぁ、何度もその連絡に助けられたんだけどな。思えばしょっちゅうあいつといたような気がする。あいつを表の世界に返してやれる。それだけでも俺はこれから奴のとこに行く足取りが速くなるというものだ。

 俺はいつものような返事を送り、メッセージを閉じる。次に俺は自分の相棒である二つの剣を見た。

 

「とりあえず、こいつらを最善の状態にしなくちゃな」

 

 歩きなれた道を進んでいくと、お馴染みぼったくり加治屋が見えてくる。俺はいつも通り大きな声で来店した。

 

「やあ、リズベット。相変わらず暇そうにしてるな!」

 

「うるさいわね!もう少し静かに入ってこれないの。まったく……」

 

 俺はリズベットのいつもと変わらないやり取りをしながら二本の剣を渡す。

 

「すまん、剣のメンテを頼む。急ぎで」

 

「はいはい。そういえば、キリトもさっき急ぎで頼んできたわね。なに、あなたたち二人でどっかのダンジョンでも今から行くの?」

 

「……まぁそんなとこだ」

 

「ふーん。あの戦いの後なのによくやるわね」

 

「一応、攻略組だからな」

 

「攻略組様は大変ね。……とそうだ、アスナが心配してたわよ。あの戦いの後から元気がないって。まったくあんまり彼女に心配かけさせないでよ」

 

「ははは、それはすまないと言っておいてくれ」

 

「あんたの口から言いなさいよ」

 

「……善処しよう」

 

 アスナと面と向かって話すのは苦手なんだよな。なんか話さなくてもいいことまで喋ってしまいそうで。

 時間が経ち武器のメンテが終わると、彼女が相棒たちを返してくる。

 

「おっ、ありがとよ」

 

「どうも。料金はこれくらいね」

 

「はいはい」

 

「えーっと、あれ?」

 

 俺は一万くらい多く料金を払う。普段はあり得ない俺の行動に彼女は驚く。

 

「おまけだよ。日頃の感謝代」

 

「要らないわよ、そんなの。というか感謝代とか……なに、頭でも打った?」

 

「打ってねぇよ。そういう気分なだけさ」

 

「そう……。なら貰っていくわ」

 

「はいよ。じゃあ俺行くわ。そうだ、キリトと仲良くしろよ、速くしないと誰かに取られちゃうぜ」

 

「大きなお世話よ!」

 

「ははは!」

 

 俺は笑いながら店を出る。しかし、ふとリズベットを見てみるとなにやら最後の俺の挨拶に違和感を感じているようだ。今回俺はいつも言っている一言を言っていなかった。そう……

 

『またな』という一言をな。

 

 

 

 

 リズベット武具店のところから離れるとまだ待ち合わせの時間まで少しあったのでふらふらと五十層の町を歩いていく。その途中、エギルにも会ってたわいもない話しをすると直ぐに別れた。どうやら彼も攻略組の準備期間とあって儲かる時期のようで忙しいらしい。

 風林火山のギルドにも行ってみたが、こちらは留守だった。まぁどっかのダンジョンにでも潜ってるのだろう。

 そんなこんなで歩いているとついに待ち合わせの場所にたどり着く。時間も丁度いい感じだ。キリトはまだいないようだが。

 すると再び俺の元にメッセージが届く。中身はアスナの先ほどのメッセージの返信のようだ。俺は中身を確認することなく、メッセージ欄を閉じようとすると思わず手が止まる。

 思えばこの後の結末がどうであれあいつとも会うことはなくなるんだろうな……。

 俺は一言だけメッセージを書き込みアスナに送る。しかし、格好つけすぎたか……。

 

「待たせたな」

 

「来たか……」

 

 キリトが俺の目の前に現れる。どうやら準備が出来たようだ。心の準備も万全というところかな。

 

 ……よし。

 

「では行こうか。七十五層のボス部屋へ」

 

「ああ……」

 

 俺とキリトは二人同時に七十五層のボス部屋の前に転移する。すると目の前にお馴染みのボス部屋の大きな扉が目に飛び込んできた。その扉は俺たちが来るのと同時に静かに開き出す。

 俺たち二人はその様子に驚くも意を決して中へ進んでいった。

 すると、ボス部屋の中から一人の男の声が聞こえてくる。

 

「やぁ、よく来たね。ダイキくん、キリトくん」

 

「……っ!」

 

「ああ、来たよヒースクリフ……いや茅場晶彦」

 

 こうして仮想世界の魔王が俺たちを笑顔で出迎えた。




次回でSAO編が終了です。
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