ブレイクワールド-break world-   作:黒谷晃佑

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10話 結末の果てに

 “巫女の光”!

 

空から優しい光が地面に降り注ぐ。これは篠宮加奈の能力の一つだ。

 

「みなさん、この光の中では敵は弱体化します。今のうちに!」

 

オオオオーー!!!

 

兵たちが息を吹き返したかのように敵に向かっていく。

 

「ハァハァハァ・・・・・、敵はあとどれくら残っているんでしょうか?」

 

目の前の敵の大群を見て咄嗟に江口さんに聞いていた。

 

「さぁな、でも、まだまだ終わりが見えないのも確かだな」

 

それを聞いて早く帰りたくなった。今にでも自分の脚が敵の反対方向に走りそうだった。

 

だけど、敵軍の左側はあらかた倒してしまったように見える。

 

「これからどうしますか?」

 

「たぶん敵は中央を固めていると思うんだ。だから俺らはこんなに楽な方だったんだよ」

 

え!? これで楽な方なの? と、疑問に思っていると江口さんから中央に加勢に行こうと言われ中央へと向かう。

 

 

 

 

 

 □■□■□

 

 

 

 

 

ティフォンは強かった。今の俺では太刀打ちできないほどに。それでもギリギリのところで戦えているのはガディウスのおかげだ。彼の力が俺をサポートしてくれるからだ。

 

「クソッ・・・・・、こんなの勝てるわけがねえ」

 

体力がもう限界に達していた。動くのもやっとだ。ティフォンの魔法が連続で飛んでくる、それらを魔の剣で防御し打ち返す、そのぐらいしかできなくなっていた。接近戦では、剣で攻撃されるときしか防御できず、その防御も防御とは言えない。受けた瞬間弾き飛ばされる。その他は殴られ、蹴り飛ばされ、もうボロボロだ。

 

もうだめだと、地面に膝が着き立てなかった。ティフォンが距離をとり、呪文を唱え始める。現れた魔法陣は大きく、見たことの無い文字がたくさん並んでいた。

 

「これで終わりだ。死ね!!」

 

 “デス・フォール・クレヴァス”!!

 

闇の黒い光が迫ってくる。ここで俺は死ぬんだと思った。

 

だが、俺は死ななかった。なぜなら、二つの影が俺を守ってくれたからだ。

 

「何でここにいるんだ!?」

 

「そりゃもう、決まってるだろ」

 

「翔悟の加勢に来たんだよ」

 

湊と加奈だった。

 

「ほう、私の魔法を受けきるとはやるじゃないか」

 

ティフォンは感心した様子で二人を褒める。

 

「すまん蒼田! 前方で上級クラスの天使と悪魔が暴れているらしい、俺はそっちの方に向かう」

 

それだけを言い残し、永戸さんは離れていく。

 

体力はそこそこ回復してきていたから湊と加奈の肩を借りて立つ。

 

「っていうことらしいから俺たち三人でだな」

 

笑顔で顔を見合わせる、それだけで十分だ。

 

「行くぞっ!!」

 

三人同時に飛び出していく。湊と加奈は左右から、俺は正面からティフォンに向かっていく。

 

先に俺が剣で上段から斬るが、それは難なく後ろに下がり避けられてしまった。しかし、彼が下がったところで湊と加奈が構えている。そして、二人の斬撃が彼を捕らえたかのように思われた。だが、かすっただけでジャンプしてかわされた。

 

そのあとのティフォンの動きは今まで見たことの無い早さだった。着地すると同時に俺の背後に回り込む。「しまった」と思ったときには遅く、背に一撃喰らってしまった。続いて加奈の腹部に斬撃が入り、湊は心臓を貫かれた。二人ともその場に倒れこむ。湊はピクリとも動かなくなった。加奈は多量出血で切り口から血がドクドクと流れ出ていたが、まだ意識はあった。

 

俺は彼女の側までいき、抱き上げ、手を掴む。

 

「これで終わりじゃないよな。死なないよな。・・・・まだ何も話せてないんだ・・・・・。戦いが終わったら話すことがあるって・・・言ってたじゃないか!」

 

泣きながら声をかけた。涙で顔が見えないくらい泣いていた。

 

「・・・・それ・・・・は・・・ね、」

 

言葉が途切れる。

 

「なんだよ、最後まで言ってくれよ・・・・・・。このままじゃ、わからないままじゃないか」

 

「・・・・・・それ・・は・・・・ね・・・・、翔悟の・・・こと・・が・・・・・」

 

その言葉と同時に掴んでいた手が俺の手から抜けて地面に落ちた。

 

俺は加奈をゆっくりと寝かせ、剣を持ち、近くにあった湊の天の剣もとった。

 

悲しみが込み上げてくる、それ以上に怒りが込み上げてくる。湊と加奈は死んだ、それだけで俺の能力を発動させるには十分だった。

 

オオオオォォォォォオ!!!

 

叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ! 怒りに任せて剣を振るう、狙いなど決めていない。ただ、当たれ! 斬れ! 死ね!! とだけ考えていた。

 

ティフォンは不規則な剣筋をただただ避けることしかできていなかった。一撃脇腹を掠めた。ちょっとした斬り傷。しかし、その傷口から血が止まること無く、しかも、多量に流れていた。彼は戸惑った。

 

「なぜだ!? どうして血が止まらないんだ!?」

 

そう、これが俺の二つ目の能力、“ブラッド・コキュートス”。これは、自分が相手にあたえたどんなに小さな斬り傷でも血が少量でも出ていればその血の流れを止めず、なおかつ川のように多量に血を流し続けるというものである。

 

「死ね!!!」

 

 “ダーク・エクス・ストリーム”!!!!!

 

両手の剣が深い闇のように輝き、鋭い斬撃を繰り出していく。その全ての斬撃はティフォンに命中し、彼の身体を斬り刻んでいく。

 

ウオオオオォォォォォオ!!!!

 

最後の一撃がティフォンの右肩から入り、そのまま斜めに入っていく。

 

「バカ・・・・・・な・・・・・・・・・・・」

 

それで、ティフォンは地面に倒れて、もう動くことはなかった。

 

ハァハァハァハァハァ

 

指揮官が殺られたことを知ったのか、兵の天使や悪魔は後退していった。人間界の兵たちは声を上げて喜ぶ。

 

守ってやるって言ったのに・・・・・・・守ってやれなかった。

 

うああああぁぁぁぁぁ!!!

 

俺の泣き声だけが一つ寂しく響いていた。

 

 

 

 

 

 □■□■□

 

 

 

 

 

あれから2ヶ月が過ぎた。

 

いつものように学校に行く準備をし、制服に着替え、朝食を食べ、いってきますと家を出る。

 

いつものように登校し、いつものように交差点で湊と加奈と待つ。だが、二人はいつまで待っても来ない。わかっているのに毎日同じように待ってしまう。そして、泣く。それが、新しい日課となった。そのせいで毎日遅刻、授業も集中できず、ずっと窓の外を眺めている。

 

放課後になり下校する。そのはずだった。けれど今日は違った。帰り道に江口さんがいた。

 

「大丈夫か?」

 

「はい・・・・・・・・・・。・・・・・・・江口さん」

 

「なんだ?」

 

「何で二人の遺体は無くなっていたんでしょうか」

 

「わからん」

 

そうだった。俺がティフォンを倒したあと湊と加奈の方へ行くと既に二人はいなかった。そこらじゅうを捜したがどこにもいなかったのだ。

 

「・・・・・・・・そんな辛気くせえ顔してんじゃねえよ!」

 

バシッと頭を叩かれた。

 

「でも・・・・・・」

 

「でもじゃねえ!」

 

バシッとまた叩かれた。

 

「しっかりしろ! そんな顔すんな! お前は何で生きてるだ?」

 

「何でって言われても・・・・・・」

 

「鳴野と篠宮が生かせてくれてるんだろうが!」

 

「そう・・・かもしれませんね」

 

「だったら、二人の分まで強く生きろ! そうしないと二人の生きてた証がなくなっちまうだろうが! 二人の生きる時間を貰ってんだろうが!」

 

「そうですよね」

 

そうだ、俺は生きてる。なら、二人の分まで生きていかなきゃならないんだ! 生きて、生き続けるんだ!

 

その決意を胸に、今日も俺は剣を握る。

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