俺たちは大きな船に乗っていた。豪華客船とでも言うべき大きさだ。
中はとても広く、たくさんの施設があった。トレーニングジムにトレーニング用プール、シャワー室に船上闘技場まである。闘技場は、船上というのを疑うほど広く、天井は吹き抜けになっていた。そして、それぞれにはちゃんと個室のプライベートルームまで完備されていた。他にも日常的に必要な所もあり、至れり尽くせりだ。
「こんなすごい船は見たことないな」
「ですね、世界一周でもするかのようですね」
隣で目を真ん丸にして驚いていた女子二人のうち、一年の木咲綾華さんが感嘆の声を漏らす。
そんな俺たちを横目に大輔さんはどんどん奥へ進んでいく。そのあとを山西くんが顔色一つ変えずついていく。無表情なやつだなと、第一印象が繰り返される。何かを感じ取ったのか山西が振り向くが、俺は咄嗟に顔を背けてしまった。なぜかな?
すると、大輔さんが扉の前で止まり、こちらを向く。
「この先は管制室だ。ここに船長がいるから挨拶をしてこい」
そう言われ扉を開けられ中に押し込まれた。
中にはたくさんの機器があり、たくさんの人が世話しなく動き回っていた。その人たちの中でも一番高い座席に座り、ふんぞり返っている者が約1名いた。しかも、その横顔には見覚えがあった。
「おっ、来たか、若人たちよ」
「何やってんだよじいちゃん!」
灰色の髭をたっぷりと生やしているのは蒼田正蔵。俺の父方のじいさんだ。一緒に暮らしているけれどここ最近は顔を見ていなかった。
「言ったことなかったか、オレェは軍の人間なんだぞ」
「そんなこと初めて聞いたぞ」
「この御方は人界軍艦隊、蒼田正蔵総司令官である」
「ヨロシクね」
「えええーーー!!!」
□■□■□
「俺のじいちゃんが艦隊の総司令官だったなんて・・・・・」
自室に戻った俺はベットに倒れ込み、独り言を呟く。
『船内にいる全隊員に次ぐ』
スピーカーから大輔さんの声が聞こえてくる。
『全隊員は至急、戦闘服を身につけ闘技場へ集合せよ。繰り返す・・・・・』
何か今から始めるようだ。
「まあ、準備するか。」
そう言いながら、素早い手つきで着替えていく。
□■□■□
闘技場に行くと兵士がたくさん集まっていた。たぶん、百人は優に越えているだろう。すると、突然怒鳴られた。マイクに向かって大声で話したときにキーンという耳にきつい音と同時に。その正体は大輔さんなんだけど。
『オイ!翔悟!!遅れてきたくせに何ノロノロやってんだよ!!早く並べ!!!』
「わかってるからそんなに怒鳴らないでくださいよ」
一番端の一番後ろに並ぼうとするがまた怒鳴られた。
『オイ、お前はそこじゃないだろ。こっちだ』
列の先頭の、しかも一番前というか逆に列を見ているというか、とにかく大輔さんの後ろに控えていた永戸さんたちの一番端に並ぶ。
『これで全員か・・・・・、では、今回の指揮を執ることになった江口大輔1尉だ。そして・・・・・』
『同じく、指揮を執ることになった山西辰生3尉だ』
ザワザワっと驚きの声があがる。それもそのはず、大輔さんはいいとして、もう一人の指揮官は17歳の高校生なのだから。
『今回は第5小隊が中心となって行動していく。作戦開始までは一ヶ月ほど時間があるがそれまでしっかりと準備を怠らないように、では以上で終わる』
□■□■□
「お前ってってすごい奴だったんだな山西」
「名字はやめろ、辰生でいい」
「おう、辰生」
少し仲良くなれたかな?
「翔悟は何も知らなかったんだよな、みんなのこと」
「ああ、まあな」
「じゃあ、改めて自己紹介でもするか。俺は江口大輔1尉」
「俺は永戸正臣2尉」
「私はエミリ・ホーン2尉よ」
「俺は山西辰生3尉」
「私は坂浪友香です。一応3曹です」
「わ、わわわ私はき、木咲綾華。さ、3曹です」
「へぇ~、みんな階級があるんだな・・・・・ってか、俺は?」
「お前は1曹だ」
「どのくらいなんだ?」
ワクワクして待つが聞かなくて良かったかもしれない。
「そうだな・・・・・、友香より上官で辰生より下だな」
「ま、マジで?辰生より下?」
なんか負けた気がした・・・・・。でも辰生は何で高校生なのにそんなに階級が高いんだ?
「じゃあ、3尉って高い方の階級なんだろ?辰生は俺たちと同じ高校生なのに何でそんな高い階級なんだ?」
そう聴くと辰生が一瞬険しい顔をしたが理由を話してくれた。
辰生が6歳の時に両親を交通事故で亡くし、親戚もおらず行き場がなくなって途方に暮れていた。その時に人界軍のアレクセイ・ガルフォート将に拾われ、そのまま人界軍に入隊し戦うために力をつけてきたのが今の立ち位置なのだと。
「ごめん、お前にも事情があってここにいるんだな」
聴かなければよかったなと思った。
「同情されたくて話したんじゃない、そういうのは止めろ」
「ごめん・・・・・」
なんかしんみりしてるからこの話はもう止めよう。