「で、俺たちは何をすればいい?」
メンバーの自己紹介も一段落し、辰生が大輔さんに聴く。
「そうだな・・・・・」
本当に何も考えていなかったようで頭の上に疑問符がでている。
「辰生、俺と勝負しようぜ。坂浪と木咲もどうだ?」
「いいね、やろうか!」
坂浪は元気よく賛成してくれたが、木咲と辰生はあんまり乗り気じゃないようだ。
「そうだな、そうしておいてくれ」
二人を後押しするように大輔さんが気を効かせてくれた。わかったと二人から返事が来たときは提案してよかったと思った。俺が三人の力がどれ位のものなのか知りたかったからだ。
「じゃあ、最初は木咲からな」
「えっ!? 私からですか?」
渋々といった表情で歩き出す。闘技場の中央付近まで行き、反対方向に分かれ向き合う。
「本気で来いよ、じゃないと面白くないからな」
「わかってますよ、やるからには全力でいきます!」
先程とは全然違う。和やかで弱々しかった彼女が、別人と言えるくらい俺を見ている目が殺気立っている。これは気を引き締めなくちゃいけないな。
次の瞬間、素早い動きで俺の懐に飛び込んできた。俺と彼女の間は10メートル以上あるというのに、それを瞬間的な速さで積めてきた。その動きに驚いたおかげで一瞬動き出すのが遅かった。反射的に剣の柄に手が伸びかけたがそれを抑え回避に移る。
「速ぇーじゃん」
「こんなものじゃないですよ!」
またも素早い動きに驚くが今度は大丈夫だ。しっかりと回避し、こっちも攻撃を繰り出す。右拳のストレート、それをしっかりと接近してきた木咲の胸に打ち込む。彼女は咄嗟に防御をしたが、彼女の体重が軽いこともあってその体は宙に浮き、反対側の壁まで飛んでいった。
壁に背を打ち付けた小さな少女は噎せて咳き込んでいた。俺の心に少しだけ罪悪感が生まれる。
「ごめん、木咲。ちょっとやり過ぎた」
「ケホッ、大丈夫ケホッケホッ、です」
無理をしている感じが罪悪感を強くする。胸が痛いよ。
「無理そうだな。じゃあ、次は坂浪だな」
「私は負けないよ!」
意気込みは充分ってか?
「よし! 来い!」
二人同時に踏み出し、中間で交差しお互いに打ち合う。が、お互いに相手の攻撃を捌きながら攻撃をする。
一時打ち合いお互いに一歩下がる。だが、坂浪は右手を腰の後ろに回しながら急接近する。何か来ると考え身構える。俺と彼女の間が1メートルほどになったとき坂浪が何かを取り出す。腰から取り出したのはナイフだった。驚き、咄嗟に左に回転ジャンプし避ける。あと少し遅ければ脇腹に刺さっていただろう。
回転の勢いを利用し足刀を坂浪の脇腹に蹴り込む。そのまま彼女は10メートルほど飛ばされるが、体勢を崩しながらも耐えた。
「危ねぇだろ!!」
「ごめんごめん、つい使っちゃった(てへペロッ♪)」
「てへペロッ♪ じゃねぇよ!! もう少しで突き刺さるところだったんだぞ!!」
「だから、ごめんって」
「友香」
いつの間にか坂浪の隣に来ていた大輔さんが凄い形相で仁王立ちしている。
「はい?」
ゴスッ!!!!
大輔さんの拳骨が坂浪の頭に凄い音をたてた。どれだけ痛いのかわからないが、坂浪がうずくまっているのを見るとかなりのものなのだとわかる。
「お前はバカか! バ・カ・な・の・か!!」
「バカじゃありませ~ん。それと痛いです~」
「戦いの前に仲間に武器を向けるやつがあるか!! 本当に怪我をしたらどうするつもりだったんだ!!」
確かにその通りだ。戦いの前に仲間が怪我をするのは何があっても避けなければならない。怪我をして戦いの最中困るのはこちら側なのだから。
「楽しくなってきてつい・・・・・、スミマセンでした・・・・・」
「そこら辺でいいじゃないですか、結果的に怪我はしなかったんですから」
渋々という感じでやっと大輔さんが退いてくれた。坂浪の本性を垣間見た気がした。案外怖いやつなんだな。
「じゃあ次、辰生」
呼ばれた辰生は壁に寄っ掛かって寝ていた。
「おい、山西」
永戸さんに声を掛けられて重く閉じていた目蓋をゆっくりと開き、のっそりと立ち上がりまだ眠たいのか、目蓋を右手で擦りながらふらふらとこちらに来る。
「おい、大丈夫か?」
「ああ、何も問題ない」
そう言いながら、膝がカクッと折れドタッと転んだ。本当に大丈夫なのかと疑ってしまう。こんなやつが3尉になれたのか?
「じゃあ、行くぞっ!!」
突然の奇襲に動けなかった。防御はしたが辰生の拳をもろに喰らい、4・5メートルくらい地を擦りながら下がらせられた。凄い力だ、・・・・・ヤバイ、こいつには使える!
俺は力を解放する! 目は緋色になり、毛は逆立ち、闘気が放たれ俺の身体を包み込む。力が湧いてくる。
ウオオオオォォォォォオオ!!
右足で地面を抉り突進する。今までの速さとは比べ物にならない。瞬間移動とほぼ同格の速さである。その速さに乗せて右拳を力一杯握り混み放つ。だが、辰生がその拳に向かって正面から拳を突き立てる。このままでは辰生の腕が折れてしまう。力を緩めようとも考えたが下手したら自分の腕まで折れてしまうと思いそれ以上力を込めた。
ズドオオオオオォォォォオオンン!!!
正面から打ち合い、凄まじい轟音と砂煙が舞う。
一時して砂煙が収まり、周囲が見えるようになった。辰生はといえば・・・・・、
正面から俺の最大と言ってもいい拳を難なく受け止めていた。
「フッ」
辰生は笑みを浮かべて一切動いていなかった。動いていたのは俺で数歩分後ろに下がっていた。
「なん・・・・・だと!?」