「突っ立ってないでさっさと訓練を始めましょう」
「ああ」
そう言って少女は一定の距離まで離れていく。そこまで行くとこちらに振り返り腰から短剣を抜き放つ。その刃はギラギラと光輝き、しっかりと手入れされていることがわかる。良い逸品だ。
「今日は自分の獲物を使ってやりましょう」
「ああ」
オレも自分の背から獲物を抜き、構える。
次の瞬間、今日の訓練が始まった。
□■□■□
『剣を打ち合い鉄と鉄が擦れ会い音を鳴らす。これが久しく忘れていた戦いの感覚なのだろうか、とても懐かしく感じる。もう少しで全てが取り戻せそうだ』
『友香と名乗る少女が先程からずっとオレの剣を受けているが全く疲れる様子が見えない。かなりの訓練を重ねているのだろう。ならば、大丈夫だろう・・・・・』
そう思い一旦距離を取り、静かに剣を構え・・・・・。
「我が身の内に潜む者よ、汝は我に力を集わせ、我を護る鋼の鎧をもたらさん」
身体の周りが青白く光りだし、暖かくなる。
「さすれば、我は汝を汲む器とならん!!」
身体が少しずつ変化していく。蒼い鎧のような獣の鱗ようなものが全身を包んでいく。魔の剣は刃が青白く光る刀へと姿を変化させていく。
白煙が舞う。だが、その中心は青白く光る。
友香は何が起きているのかわかっていないのか、目を丸くしている。そして、ピリピリと静電気を感じる。危ないと思ったのだろう。彼女が自分から距離を取る。
「中で何が起きてるの?」
周囲で訓練をしていた隊員達も二人の方を向いて黙っている。
白煙が消え、中の様子が明らかになる。そこに立っていたのは全身に蒼い鎧を纏ったオレだった。
「何なのそれ!?」
まあ、初めてこの姿を目にした者は大抵がそう言うだろう。
「これは竜の力を最大限に引き出すための全身の竜化。ほとんどの竜としての力は人の肉体では耐えきれず引き出そうとすると身体が引きちぎれてしまう。しかし、竜化することによって全身が竜の鱗で覆われ、総合的な能力も一段と向上し、多少の負荷はかかるが竜としての力を使うことができる」
「す、凄い・・・・・。それは身体に竜の力を宿している者なら誰でも使うことができるの?」
「ああ。多少個人差はあるだろうが、しっかりと訓練を積めば使うことはできるだろう。」
「なら私も・・・・というかさ、翔悟くんって竜の力を持っていたんだね。知らなかったよ」
まあその事に関しては何も話してはいなかったからな。
「それよりも訓練はどうする」
「う~ん。もうやめておくよ。凄いものが見れたし、それに私もやらなきゃいけないことが見つかったし」
「わかった」
フッと鎧が煙に一瞬で変化し、空に消えていく。刀も魔の剣へと戻っていく。これで今日の訓練は終わりだと思っていたのだが・・・・・
『緊急事態発生!緊急事態発生!』
突如耳にうるさいサイレンが鳴った。どうやら何かが起こったらしい。
『本船上空に魔力反応多数あり、本船上空に魔力反応多数あり、上級天使がいることが確認されました。第5小隊、第6小隊、第7小隊の各隊員は甲板へ急行してください。他の小隊の各隊員は速やかに自室へ移動してください。繰り返します。本船上空に・・・・・』
どうやら戦闘のようだ。放送を聞いたオレと友香は急いで甲板へ向かう。
□■□■□
甲板に着いたオレたちを待っていたのは上空の数十体の天使と顔色が真剣そのものの隊員達と笑顔で上空の天使を睨み付ける大輔さんだった。オレたちが最後のようだ。
「よ~~しみんな、揃ったな」
大輔さんが全員が集まっていることを確認してから話し出す。
「不謹慎だけどさ、俺はこの状況を楽しんでる。ホントにすまん。だが、この戦いは天界へ上陸するために必要なことで避けては通れないことなんだ。だからさ、奴等をまとめて狩るぞ!!」
いかにも血に飢えているような腐ったやつらが言いそうなことだが、今のオレたちにとってはこれも必要な言葉だ。
しかし、上空の敵に対してどのように戦うのだろうか。
その瞬間視線が少しだけ高くなった。足下を見ると床から数十センチ浮いていた。背後を見ると小さな少女、木咲と言ったか、その少女が魔法陣を、形成していた。これは彼女の魔法なのだろう。
「行くぞ!!!」
「「「「「「「「オオオオーーーーー!!!!」」」」」」」」
大輔さんの掛け声で全員が空へ飛んでいった。まさか人間が空を飛ぶなんて思っていなかったであろう天使たちは目を丸くして驚いていることだろう。
「我が身の内に潜む者よ、汝は我に力を集わせ、我を護る鋼の鎧をもたらさん。さすれば、我は汝を汲む器とならん!!」
一瞬で竜化し、上空へ飛び立つ。
これから天界遠征の初の戦闘が始まる。