オレは言ったことを後悔した。
「そんなことを言われても知らねえよ」
次の瞬間、オレの左脚の感覚が完全になくなった。
「っ!!!」
左脚を見ると形は残っている。だがなぜだ、脚が全く動かせない。やつはオレに何をしたんだ。
「どうだ、動かないだろう。それはオレ様の力だ。オレ様は敵の皮膚を斬ることなく中の神経を直接斬ることができる。3000年をかけて編み出したオレ様だけの力。オレ様の剣に触れたが最後、テメェの神経を根こそぎ叩き斬ってやる!!」
何、だと!?それじゃあオレはやつの攻撃を喰らっちゃいけないってのか。
「いきなり厄介なやつだな・・・・・」
はぁ・・・・・、やるしかねぇか。
ゆっくりと動き、右脚に重心を乗せ、右手で柄を持ち、左手で柄頭に触れるように添えて、中段に構える。目を閉じて精神を統一し心を落ち着かせる。
「オラァ!行くぞぉぉ!!!」
ガイアントが全速力で接近してくる。でもまだ目を開けない。
二人の距離が10メートル程に近くなったその時・・・・・
目を開く!!!
右外側に回し頂点に届いたところで両手で柄を握り込み上段からの一撃を放つ。魔力を貯めていたこともあって鋭い魔力の斬撃が翔ぶ。
翔悟に接近し過ぎたガイアントは斬撃を浴びる。
だが、流石は上級天使と言ったところだろう。斬撃を浴びる直前に少しだけ右に避け、回避しようとしていた。しかし、完全には避けきれず彼の左腕が宙を舞った。左腕は止まることなく海に向かって垂直に落ちていく。
「やってくれんじゃねぇのテメェ」
キレ気味の彼はこちらを見ながら必死に自分の衣服を引き裂きながら左腕の止血をする。
少しすると流血は収まっていき、やがて血は一滴も溢れなくなった。
ガイアントの左腕はなくなった、これなら余裕で勝てるなと思った矢先、ガイアントの巨大な魔力砲がオレに命中する。
「っ!!!」
その魔力砲はとても重かった。痛みや怒り、悲しみ、たくさんの負の感情が込められていた。とてつもない衝撃である。
かなりの距離飛ばされた。敵の姿がゴマ粒程に小さく見えるくらいに。それと同時に魔力もかなり持っていかれた。
「クソッ、翔ぶのもしんどくなってきやがった」
速攻だ、速攻で殺るしかねぇ。瞬時にそう悟り、今出せる全速力でガイアントのもとへ翔んでいく。
残り50メートル、40メートル、30、20・・・・・
敵の姿が近くなる度にしっかりと刀を構える。ガイアントも剣を構える。両者が鉢合わせる時、勝負は決まる。
「ウオオオォォォォォオ!!!」
キィィィィン!
両者がすれ違い、通りすぎる。オレは左脇腹を斬られ痛みのあまりガクッとバランスを崩す。一方ガイアントは右肩辺りから左脇腹にかけて斬られていた。これが致命傷となり海へと落ちていく。しかし、オレも傷が傷だからゆっくりと甲板へと戻る。
指揮官の上級天使が倒されたからかはわからないが、他の天使たちは陣形が崩れ逃げる者もいた。陣形を崩したことにより敵の動きが簡単になり、倒しやすかったとのこと。とのことというのはオレが先に戦場を離脱し木咲の治療を受けていたからである。
ほどなくして全員が帰還、人員点検をする。今回の戦いで良かったのは誰一人として欠けることがなかったからだ。
こうして、天界遠征初の戦闘は快勝という負釣り愛な言葉で片づけられたのだった。
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数日後、天界の南の港町アロンに到着した。こんなに大きな船で港に入ると怪しまれて天界のお偉いさんたちにバレて総攻撃を喰らいかねないということで港からはかなり外れていてなおかつ崖があって船が隠せるところで船を停泊させた。とりあえず第5小隊、第1小隊、第2小隊、第3小隊のそれぞれがそれぞれのルートをたどりアロンに向かう。
数分も森を歩けばそこは大きな街だった。たくさんの建物が建ち並び、商店があり人間界とそれほど変わらないような街並みだった。
それよりもだ、俺は何をしていたんだ。目が覚めると自室のベッドに寝ていたのだ。確か俺は坂浪と訓練をしていたはずなのに。しかも、それは昨日のことだと坂浪に言われた。
とても変だ。坂浪の話だと、俺は彼女との訓練のあと天使の襲撃があったからそこで戦っていて、しかも敵の上級天使を倒したと。戦っている時の俺の格好が異様だったと。まるで竜を見ているかのようだったと。
この事を医務室の美人室長の新藤綾乃室長(ボンキュッボンで普通に美人とか言ったけど訂正、超超超・・・・・美人です!)に相談してみると大人のちょ~~エロい声で、
「それは多重人格とかそういうのじゃないかな」
「多重人格?ですか」
「今までそういった感じのはなかったの?」
「はい、まったく」
「そう、ならその友香ちゃんと訓練してるときに何かあったのね。何か集中するようなことはなかった?」
「あ!はい、ありました。確かその時は悪魔の力が出せなくて目を閉じて集中してただのイメージなんですけど悪魔の自分がいて、その後ろに黒くて大きな影がみえました」
こんな風にとか言いながら目を閉じて説明を続ける。
「たぶん原因はそれよ、その黒い影」
なんて言われたけど正直それをどうすればいいのか今の俺にはさっぱりだ。そんな感じに考え込んでいたら坂浪の声が聞こえた。
「翔悟く~~ん!何やってんの、早く来て!」
呼ばれた俺は早足にみんなの方へ向かう。
そうだ、この天界のどこかに加奈と湊がいるんだ。必ず見つけ出して一緒に人間界に帰るんだと改めて心に刻んだ。