ブレイクワールド-break world-   作:黒谷晃佑

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9話 再戦 VS辰生

夜、第1会議室には各小隊の隊長たちと第5小隊の面々が天界出陣の最終確認をするため集まっていた。室内は静かなものだった。

 

明日からの行動はこうだ。天界へ上陸して行動するのは第1小隊から第5小隊までで残りの小隊は連絡がくるまで船内で待機。

 

上陸して行動する小隊間は約200メートル程開ける。これが一番遠からず近からずという距離らしい。

 

必ず攻略しなければならない天界の重要な機関がある天空塔へは上陸して行動していた小隊の全てが集まってから作戦を練り船へ連絡、全ての小隊が集まり次第突撃とのことだった。

 

そして一番の目的だった篠宮加奈と鳴野湊の身柄は天空塔内にあるとのことだった。

 

一時間弱の会議が終わりそれぞれがそれぞれの小隊員に連絡のため席を立ち会議室から出ていく。俺も部屋に戻ろうと席を立つと意外な人物から声をかけられる。

 

「ちょっといいか」

 

そう言ったのは辰生だった。ついてこいと言わんばかりに前をつかつかと歩いていく。仕方ないかと諦めて後をついていく。

 

辰生が止まったのは闘技場の中央だった。こんなところで何をするんだと言いかけたその時彼が口を開く。

 

「俺と一勝負しないか」

 

いきなりの申し出に驚いたが辰生からそんなことを言ってきたのは初めてだったから何も考えず反射的に返事をしてしまった。

 

辰生は静かに腰に差してあった刀を抜き逆手で構える。俺も背の剣の柄を握り腰を低くして構える。

 

「今日のは前回と違う。今自分が持てる力の限りを出してこい」

 

その鋭い眼差しでこちらを睨みながら牽制する。本気なんだと確信したとき既に戦いは始まっていた。

 

勢いよく飛び出してきた辰生は手始めにという感じで、上下左右から刀を降り下ろしてくる。それを全て剣の腹で受け止めるがきりがない。辰生の鋭い剣先が俺の体を掠めていく。とてもギリギリといったところだ。

 

無言の斬撃が止まることなく繰り出される。こいつの体力は底無しかと思うほど長い時間打ち合っていた。

 

するといきなり辰生が距離を取り後ろに後退する。

 

「そんなものが本気ではないだろう」

 

天界へ出陣する前日の夜、もう11時を廻ったところだというのにこいつは何を言ってるんだ。

 

「ああもう!やればいいんだろやれば!」

 

「我が身に潜む者よ、汝、我に力を集わせよ。頼むぜガディウス」

 

だがその呼び掛けには誰も何も応じなかった。

 

「何でだ!?何で応えない!?おい、ガディウス!返事しろよ!」

 

何の返答もなかった。魔の剣は静かで、ただの鉄の塊になっていた。

 

どういうことなんだ?なぜ返事をしない。

 

「なあ、あのときみたいに竜の力は使わないのか?」

 

「は?何言ってんだ。俺が竜の力なんてものが使えるわけないだろう」

 

「あ、そうか。その力を使っていたのはもう一人のお前だったな」

 

「なんだよそのもう一人っ・・・・て・・・・・・・」

 

っ!!

 

そうか。もう一人の俺って綾乃さんから言われた多重人格ってやつのもう1つの人格の俺ってことか。

 

そしてここでもう1つの疑問がうまれる。

 

『もう一人の俺が竜の力使っていた!?』

 

「おい、それってどういうことだ?」

 

「そのままの意味だ」

 

落ち着け俺。もう一人の俺が竜の力を使っていたってことは結局その人格も俺なんだから俺も竜の力が使えるってことなんじゃないのか!?

 

よ、よし、集中しろ。身体は同じなんだからできるはずだ。~~~~~~。

 

「なあ」

 

「・・・・・」

 

「おい」

 

「・・・・・」

 

「おいっ!!」

 

「なんだよ!人が集中してるときによ」

 

「たぶん今のお前では竜の力は使えないぞ」

 

「何でそんなことがわかる!やってみなきゃわかんねえだろ!」

 

「だから今のお前では使えないって言ってるんだ。同じ身体だとしても精神は違う。人格が変わるわけだからもちろん身体の動きも変わってくる。その力は別のやつのものと思った方がいいかもな」

 

じゃあ俺は何の力も使えないただの一人の兵士と変わらないじゃないか。

 

「どうすればいいんだ・・・・・」

 

絶望的だ。これから天界に乗り込んで加奈と湊を助けようと思っていたのに、こんなんじゃそこら辺のただの雑魚の天使にさえも勝てない。

 

「それなら、今のお前が出せる全力で戦えばいいじゃないか」

 

「今の全力じゃどんな奴にだって勝てっこない」

 

「じゃあ続きをするぞ」

 

そう言って辰生はまたも全速力で攻めてくる。やはり、剣の腹で受けるのが精一杯だ。

 

辰生が後ろに勢いよく飛び左手を思いっきり振り上げると地鳴りがして地面から棒状の岩石が飛び出してくる。とても数が多く避けるのが精一杯なくらいどんどん飛び出してくる。

 

「速いじゃないか」

 

「こんなの全然だ。力に頼ってばかりだったから自分自身の動きの速さはこれが限度だ」

 

「充分じゃないか、体育の短距離走100メートルは何秒だった?」

 

「8秒6だ」

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