ブレイクワールド-break world-   作:黒谷晃佑

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10話 不幸の先

「な!?マジかよ」

 

飛び出す岩石を避けるのが精一杯だ。どんどん体力が奪われていく。しかし、辰生の姿はよく見える。一瞬たりとも目を離さない。

 

右から左から岩石が飛び出す。掠りながらもギリギリで避けていく。

 

かなりの時間そうやって避けていたと思う。が、実際にはそんなことはわからない。しかし、辰生の攻撃が少しずつ遅くなってきているのはわかる。魔力が尽き始めたのではないか。

 

これはチャンスだ。横から飛び出してきた岩石を避けて足場にし、剣を両手で握り正面に構え、辰生に向かって一直線に跳躍をする。

 

辰生の反応は遅れていた。魔力が尽きることによる魔力欠乏。酸欠に似た現象で魔力を持つものだけが魔力を使いすぎると起こり、息が切れ身体全体の動きが鈍る。魔力を持つものは出来る限り省エネで戦わなければならない。辰生は魔力配分を間違ったのだろう。

 

俺の剣を辛うじて刀で弾く。だが、その動きにキレはない。追い討ちをかけるが、全くと言ってもいい程にさばききれていない。後ろに下がる辰生を止めたのは辰生が出した岩石の一つだった。そして彼の首筋に剣をピタリと据える。俺の勝ちだ。

 

 

 

 

 

 □■□■□

 

 

 

 

 

翌日、俺たちは昨日大輔さんに言われた通り第1小隊から第5小隊のみで天界の森の中を進んでいた。それぞれの小隊間の距離は約200メートルあり、俺たち第5小隊を囲むように前方に第1小隊、右手に第2小隊、左手に第3小隊、後方に第4小隊という配置になっている。

 

「前方にある山、あれは天界一の高さを誇る"アルスベレクト"という山だ。」

 

大輔さんが指で差しながら説明している。それにしてもデカイ山だな。高さもだけど横の方が凄い、天界を真っ二つにしているかのようだ。

 

「この山によって天界は北部と南部に分けられている」

 

やっぱりそういうことなのか。

 

「そしてこの山には聖獣と呼ばれる竜が生息している。出来る限りの戦闘は避けて通る。山を越えない限り天空塔には行くことができない。越えるのはかなりのキツさだろうが頑張ってくれ」

 

 

 

 

 

 □■□■□

 

 

 

 

 

港町アロンを出発してから3日がたった。だが、まだ山を越えられない。どんだけデカイ山なんだよ。

 

すると突然に集団行動でやる行進の時のような足音が聞こえてきた。集団行動のように音が揃っている訳ではないが。

 

その足音はどんどんこちらへ向かってくる。

 

「全員警戒体制!もしかしたら敵かもしれない」

 

どんどんどんどん近づいてくる。そして止まった、俺たちの目の前で。見たまんま、足音の主は敵だった。

 

「私は天界軍"エンジェルフェザー"陸軍副隊長ヘリストである。無駄な抵抗は止めて直ちにこの地から出ていけ」

 

先頭に立っていた身体が大きい一人だけ服が違うおっさんが言ってきた。

 

「そんなことするわけないだろ」

 

言い返すように後ろから大輔さんが俺たちの間を掻き分け出ていく。

 

「ならば実力行使しかないな」

 

その副隊長とやらが背にからっていた長剣を取り出し構える。それと同時に後ろの部下たちが剣を引き抜く。こちらも全員剣を抜きいつでも戦えるように準備する。

 

「翔悟、お前はあの副隊長さんを相手してやれ。他はどうにかする」

 

「了解」

 

俺が返事をしたと同時に戦闘は開始された。

 

敵の部下たちが続々と前へ出てきてこちらも大輔さんたちが応戦する。剣と剣が打ちならされる音が盛大に鳴り山にこだまする。俺はその間を縫うように掻い潜りヘリストのところへと向かう。

 

俺の存在に気づいたヘリストはこちらにその2メートル近い大きさの長剣を向ける。そしてそれを大きく天へと向け上げ降り下ろす。俺は避けることができたが、俺がいた場所は粉々に砕かれ地面が元形を残してはいなかった。

 

凄い破壊力だ。まともに食らったら生きている保証はできないな。そう思いながら後ろに回り込み一太刀浴びせようとするがヘリストが後ろを向き長剣で凪払いをする。咄嗟に剣でガードするが吹き飛ばされ岩壁にぶち当たる。背を強打して肺の空気を絞り出され一瞬息がつまる。

 

「これで終わりか人間。その程度なら抵抗せずこの地から去ればよいものを」

 

「そう簡単にはいかないんだよ。仲間を救うためなんだ。わかりました、すみませんでした帰ります。なんて死んでも言えねえ」

 

「そうか、ならここで死ね!」

 

ヘリストが大きく前方へ踏み出し剣を振りかぶったまま接近。だが、そんな早さじゃ俺には勝てない。

 

おもいっきりこれでもかという程重心は後肢で腰を落とし剣を両手で持ち肩口に前方の敵を見据えて構える。一瞬で重心を前肢へと切り替え低い姿勢のまま前へ走る。

 

二人は丁度中間点で交差しヘリストが長剣を降り下ろすがそれを回転して避け回転の勢いを利用しヘリストの脇へと剣を食い込ませる。

 

斬り抜いた後には鮮血が飛び俺たちの勝利を物語っていた。

 

ヘリストはその場に倒れ動かなくなった。それを見た兵士たちが一斉に逃げていく。大輔さんたちが勝っていたとわかるのは逃げていく兵士が戦う前とその後ではかなりの数激減しているからだ。

 

一息つこうと仲間の方へ行こうとしたとき地鳴りが起きた。

 

「な、なんだ!?」

 

その地鳴りの主はすぐに俺たちの上空に姿を現した。

 

その姿は神々しく光輝いていた。大きな翼を広げすべての悪を浄化させるかのように。空と大地を両方とも震わせるその咆哮は全ての悪への怒りのようだった。

 

「あれが聖獣・・・・・」

 

この世を統べると言われる竜が姿を現したのだった。

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