一息つこうと仲間の方へ行こうとしたとき地鳴りが起きた。
「な、なんだ!?」
その地鳴りの主はすぐに俺たちの上空に姿を現した。
その姿は神々しく光輝いていた。大きな翼を広げすべての悪を浄化させるかのように。空と大地を両方とも震わせるその咆哮は全ての悪への怒りのようだった。
「あれが聖獣・・・・・」
この世を統べると言われる竜が姿を現したのだった。
「何で!?」
驚き戸惑う全員の中でただ一人冷静でその鋭い眼差しは一点に集中していた。
「全員、この場から離脱!逃げろ!」
大輔さんの声は震える全員の脚に鞭を打ちやるべきことを明確にしていた。ここから逃げなければ全員死ぬ。戦闘は避けなければならない。俺たちに勝ち目なんて無いんだから。
だが、果たしてその行動は的確だったのか。竜の聖なる一刀が俺たちの行く先を阻む。そして先頭を走っていたエミリさんが直接ではないがその一刀を受け、半身が黒くなり焦げた臭いがする。
「アアアアアアアッ!!!!」
「エミリっ!!」
大輔さんが駆けつけエミリさんを抱き抱える。そこに木咲が駆け寄り治癒を開始する。
その光景を見た残りの辰生、永戸さん、坂浪、そして俺はこの場から逃げられないことを悟った。
俺は後ろに振り向き空に悠々と舞う竜を睨み付ける。
「永戸さん、辰生、援護頼むっ」
そう言って竜に向かって突っ走る。二人が止めようとするがもう遅い。
今の俺はなんの力もないただの人間。でも、何かしないと俺たちはここで全滅だ。
無謀な戦いが始まる。
□■□■□
敵の攻撃をよく避けていると思う。戦いが始まってもう10分以上は走り続けている。
辰生の能力で岩石が地面から飛び出し竜を撹乱する。その岩石が掠り竜がよろめく。
チャンスだ!岩石を足場に使い勢いよく飛び回り竜の背をとった。
「オオオオオオオオオオ!!!」
全体重を乗せた斬撃を背に叩き込む。だがそれはあっけなく鱗に弾かれた。大きくバランスを崩され無防備なところに竜の翼が直撃する。簡単に吹き飛ばされ山の斜面に背から打ち付けられた。肺から空気が全て絞り出され息がつまる。
身体はボロボロ、骨は全部とは言わないだろうが大半が折れているだろう、身体が動かない。
「翔悟!!」
「蒼田!!」
辰生と永戸さんの声が聞こえたが、反応することはできなかった。徐々に意識が遠くなり、視界も徐々に深い闇へと落ちていった。
□■□■□
目が覚めるとそこはとても暗い空間だった。しかしここは見覚えがある。確か・・・・・いつだったかな、よく思い出せない。
するとどこからか足音が聞こえてきた。徐々に近づいてくる。
「誰だ!!」
「誰だとはなんだ!俺様に決まってるだろ」
そう言って目の前に現れたのは俺の相棒であるガディウスだった。その顔はひどく悲しんでいるように見えた。彼の脚には足枷がついていた。手首にも同じように枷がつけられていた。
「はぁ、翔悟・・・・・お前死んだな」
は?言っていることがわからずすぐに聞き返してしまった。
「だから死んだんだよお前」
「いや、死んでねぇぞ。この通りピンピンしてる」
本当だと教えようと身体を大きく動かしてアピールするが、ガディウスの表情は変わらない。
「本当のお前の身体は80%の骨が折れている。しかも複雑骨折のところもある。内蔵は90%が機能を失っている。」
「マジかよ・・・・・・」
どうすればいいんだ。このままじゃみんな死んじまう。
「どうすればいいんだ。教えてくれ!俺には力がいる。みんなを守れる力がいる。力を貸してくれよガディウス!何で貸してくれないんだよ!」
「すまん。今の俺様はお前に力を貸せない。ただし、今の俺様はだ。絶対に貸せない訳じゃない。ただ今貸せないんだ。だが、あいつを倒せば話は別だ」
そう言ってガディウスが指を指した方には少年が座っていた。
「よう、待ってたぜ。もう一人の俺」
その少年は俺そのものだった。
「何なんだお前は」
「ひでえなあ。オレは俺だよ、もう一人の蒼田翔悟だ」
「そうか、お前が竜の力を使うオレなのか」
「大当たり!」
パチパチと拍手をしてくるがその拍手は敬意を込めた拍手ではない。空っぽの適当な拍手だ。
「お前がガディウスをこんなにしたのか」
俺はボロボロになって枷を付けられているガディウスを指差しながら言う。
「そうだと言ったら俺はオレをどうする?」
「ぶん殴る」
やっぱりこいつがしたのか。
「何故こんなことをする」
「何故って・・・・ん~そうだな~」
勿体ぶって話を長引かせる。
「オレを使ってほしいからかな」
「使ってほしいだと?」
「そうだよ。だってそうじゃん、そんなオンボロ悪魔よりオレを使った方がいいって。なんたってオレは竜の中の竜、創世の竜人、ドラゴニュートなんだぜ」
「ド、ドラゴニュート?」
「そうさ。竜の中で唯一自分の意思で人間界と竜界を行き来できる竜さ」
何なんだこいつは。ドラゴニュート?創世の竜人?知ったこっちゃねえ。
「お前がどんなやつかはわかった。だが、今の俺にガディウス以外の力は必要ねえ」
「お前にはガッカリだよ。まあいいか、いつかまた話さなければならないときが来るだろうさ。その時はオレを使えよ」
「そんなときがくればの話だろ」
もう一人のオレが指をならすとガディウスの枷が突然外れた。
「行くぞガディウス!」