朝を迎えた。全てが決まる朝。翔悟はいてもたってもいられずに朝早くから目を覚まし船の甲板に出て潮風に当たっていた。
風は頬を優しくなで流れていく。そう、今日は決戦の日。加奈と湊を助け出し、天界と和平を結ぶことが今回のミッションである。
失敗すれば二人は助けられず、それどころか人間界に攻めてくるかもしれない。
そんなことあってはならない。ならばやることは只一つ、全力をもって勝つことだけだ。
翔悟は改めて決意し自室に戻っていくのだった。
□■□■□
午前10時、太陽もかなりの高さまで昇っていた。
戦闘艦"つばさ"の甲板にある魔法道具"ゲート"の前には船内にいる全ての兵士が規則正しく整列していた。その先頭に一列に並んでいるのは第5小隊の面々である。そのさらに正面に立って兵士側に向いているのは今回の作戦の指揮を執っている江口大輔1尉と人界軍艦隊総司令官の翔悟の祖父である蒼田正蔵海将だ。
「では、今作戦についてもう一度説明しておく。今作戦は天界との和平を結ぶことが第一優先だ。その為にはこちらが彼らに対して好戦的ではないと印象づけるのが大切である。なのでできる限り戦闘は起こさないように。万一戦闘になってしまった場合相手は殺さず無力化しろ。それだけでいい。それと、突入するのは我が小隊のみとする。増援が必要な場合こちらから連絡する。いつでも出られるように準備は怠るな」
「それでは本作戦を開始する!」
「「「「「「「オオオオオオオオ!!!!」」」」」」」
正蔵の号令より今回の作戦が始まった。第5小隊はゲートに突入する。
さあ、全てに幕を下ろそう!
□■□■□
第5小隊はゲートをくぐり抜け天空塔のある天界一の都ハルバレに出た。全員が向かうのはもちろん街の中心にそびえ立つ天空塔だ。でもすぐには突入せず、路地裏で短い作戦会議が行われた。
「今回の作戦は名目上天界との和平ということになっているが俺たちの最優先させる目的は篠宮加奈と鳴野湊を救出することにある。ということで二手に分かれる俺、永戸さん、エミリ、辰生は天界との和平を、翔悟、友香、綾華は篠宮と鳴野の救出、気をつけて行け」
大輔が念を押すと皆がしっかりと頷き目を見合わせる。
「行くぞっ!」
大輔の号令で皆が走り出す。
天空塔の前まで来ると入り口に立っていた二人の警備兵がこちらの姿を発見しすぐに警戒体制をとる。だが、そんな簡単にやれるほど翔悟たちは修羅場をくぐり抜けて来ていない。一撃で警備兵を無力化し天空塔に入る。一階奥まで行くと階段があり、上階と下階二つがあったが翔悟と大輔が見合せ頷き翔悟たちが下階へ、大輔たちが上階へと進んでいく。
階段は螺旋状になっていて一階上がるごとに場所が違っていた。どんどん昇っていくが敵の数が多すぎる。塔自体が石で組み上げられているため辰生の能力でできる限り敵を無力化していった。しかし、無力化しようともそうできずに血を流すことが多々あった。
□■□■□
そして最上階にたどり着いた。そこは展望台のような感じで前後左右窓というものが付いておらず開けていた。奥は段上になっていて一つの大きな椅子があった。段の一番下には警備兵が立っていて、一番上の椅子には一人の老いた天使が座っていた。
「貴様ら何者だ!」
「我等は人界軍第5小隊の者です。私が隊長の江口大輔1尉です。以後お見知りおきを。そして彼らが我が部下たちです。貴方がここ、天界において一番のお偉い方だとお見受けいたしましたが」
「そうだ。我が天界の長である、大天使ミカエルだ」
大輔が自己紹介をし、質問をすると椅子に座っていた老天使が答えた。
「それで我に何用だ」
「簡単なことです、我が人界と和平を結んでいただきたく参った所存です」
「和平とな」
「はい、我等人界と天界が和平を結べば人界と天界の間では戦争は起こりません。それだけでもメリットとなりうると思いますが。」
「確かにな。我等も幾度の戦いで資源が枯渇しつつある。それは避けねばならん」
「それはこちらとしても同じ考えです。前回の戦争では戦地が我が人界であり、街の復興も必要とされてきますのでそれは嬉しいかぎりです。その為に和平を結び、両大陸間で交易を行い、足りない資源を共有し合うことは理想的だとは思いませんか?」
「天使長!そのような者たちの話など聞き入れてはなりません!」
ミカエルが考え込んでいると隣にいた警備兵が和平をさせまいと必死にミカエルに言うが、とうのミカエルは聴こえていないようだ。
「そうだな、我等もそろそろ戦いを終わらせねばならんからな」
「天使長!」
「お前の言いたいこともわかるが我慢せい」
ミカエルの一言で警備兵は黙り混み二度と口を開くことはなかった。
「交渉の席には着いてやる。ただし、その交渉の中でこちらに不利益なことが少しでもあれば今回の件は降りらせてもらう。いいな」
「承知しました」
頭を深々と下げ和平は確実だと確信を持った大輔だった。