ブレイクワールド-break world-   作:黒谷晃佑

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18話 旅立ちの決意

目を覚ますと白い清潔感のある天井が一番最初に眼に入ってきたものだった。どうやら医務室のベッドの上にいるようだ。

 

「・・・・ぱい、先輩!」

 

聴こえてきた声は木咲綾華のものだった。ずっと看病をしてくれていたのだろうか。他の人は見当たらない。

 

「俺はどうしてここに・・・・・」

 

俺は天空塔の地下のヘルズ・コアというところでアスティルと戦っていたはずだ。

 

そんなことよりも翔悟は一番大事なことを思い出す。

 

「っ!湊は!湊はどうした!」

 

勢いよくベッドから飛び起きると強烈な痛みを感じた。

 

「っ!」

 

「先輩はまだ寝てなきゃダメですよ。完全に傷が回復した訳じゃないんですから」

 

「湊はどうしたんだ」

 

翔悟を寝かせて布団をかけている綾華に再度そう訊くと綾華は立ち上がりベッドの反対側に回るとベッドとベッドを仕切るカーテンを開けた。

 

「大丈夫です。鳴野先輩はちゃんとここにいますよ」

 

その先にあるベッドには確かに鳴野湊が寝ていた。

 

「そっか」

 

安堵した翔悟は今度こそちゃんとベッドで横になった。

 

「なあ木咲」

 

「綾華でいいですよ」

 

「じゃ、じゃあ綾華、俺は天空塔でアスティルと戦っていたんだよな」

 

「はい」

 

「そして俺は殺された」

 

翔悟自身が確実に覚えていることだけ質問する。

 

「そうですね」

 

「なら、何で俺はここにいる」

 

「何ででしょうか、私にはさっぱり」

 

わざとらしく手振りをつけ首を横に振る。

 

「何か知ってるんだろ」

 

「確かに先輩はアスティルさんに致命傷を与えられて一度心臓が止まっていました。致命傷というのが先輩のその胸の傷です」

 

綾華に胸の傷を指差された翔悟は反射的に胸の傷に触れる。

 

「それで私や友香先輩も殺されるところでした。でもそこで先輩が立ち上がったんです。真っ黒な魔力を体の周りに纏わせて。それでそのまま先輩が圧倒的とも言える強さで勝っちゃったんです」

 

「その言い方だと勝たなくてよかったって聞こえるぞ」

 

「いやいや、別にそんな風に言った訳じゃないんですよ」

 

「わかってるよ」

 

ワタワタと急いで弁解しようとする綾華はその年相応の可愛らしさが感じられた。

 

「それで俺はどれくらい寝ていたんだ?」

 

「4日です。その間に天界との和平条約を結ぶための講和会議の準備のために皆さんたいへんそうです」

 

「そっか・・・・。大輔さんたちの交渉は上手くいったんだな」

 

これで天界とのいざこざはこれ以上起きないだろうと安心していると医務室の扉が突然開き友香と辰生など、第5小隊の面々が入室してきた。

 

「翔悟大丈夫?」

 

「やっと起きたか」

 

「調子はどうだ」

 

入ってくるなり沢山声をかけられて少し戸惑った。

 

「ああ大丈夫だ」

 

そのあとは小隊の皆と要るような要らないような雑談をした。小一時間程話したところで皆はまた講和会議の準備があるのだろう、自分の持ち場に戻っていった。

 

翔悟は綾華に肩を借りながら自室へ戻ってそっちで休むことにした。

 

 

 

 

 

 □■□■□

 

 

 

 

 

それからまた二日ほど過ぎた。翔悟は目を覚まさない親友の隣で目を覚ますのを待っていた。

 

親友の名は鳴野湊。翔悟とは海洋学園の小等部の頃からの付き合いだ。その時にはもう一人の親友で、翔悟が心を寄せる少女もいた。

 

昔のことを思い出して笑っている今の翔悟を他の誰かが見たら変な人と必ず捉えるだろう。

 

そんなときにその声は聴こえた。

 

「変な奴にしか見えないからその笑い方は止めろ」

 

以外としっかりしたその声の主は目の前で寝ていた翔悟の親友、鳴野湊だった。

 

「湊!目が覚めたか!大丈夫か!」

 

「ああ大丈夫だ。ここは?」

 

「軍の大型船の医務室だ。俺のことわかるよな」

 

「ええっと・・・・・誰だっけ」

 

「お前絶対わざと言ってるよな」

 

「大丈夫だ覚えてる。蒼田翔悟、海洋学園2年でスポーツも勉強も並みしかできない平凡以下の高校生」

 

少し頭にきたがまだ言いたそうだったので黙っていることにした。

 

「将来の夢は軍に入団して、大好きな篠宮加奈に告白して結婚まですること」

 

「ちょ、ちょちょちょちょっと待て、やっぱりお前知ってたんじゃないか!」

 

「当たり前だ。加奈の前にいるお前の様子を見てたら誰だってわかる。もしかしたら加奈も勘づいてるかもしれないな」

 

「マジかよ」

 

衝撃的な事実を知った翔悟はダメージが大きすぎて動けなくなっていた。

 

「それで、その大好きな加奈さんは?」

 

一瞬でその場の空気が重くなった。湊もその重さを感じていた。

 

「加奈は・・・・・死んだよ。あの戦争のときお前と一緒に」

 

この空気の重さがどういう重さなのか理解した湊は口を開けたまま止まっていた。

 

「でも、お前は生きていたんだ。加奈だってどこかで生きてるさ」

 

そんな曖昧なことに今は祈るしかなかった。 

 

「そうだよ、何で俺は生きてんだ」

 

湊の言うことは当たり前といったら当たり前だ。翔悟は加奈と一緒に湊も死んだと言ったのだ。死んだ自分がここで息をして生きているというのは自然の摂理に反する。

 

だから翔悟は湊を助けるまでの経緯を事細かく話した。

 

湊は納得はしていないように見えたがこの世界で何が起きるかわからないとわかっているから翔悟の話を呑み込んだ。

 

「なら次は加奈を助けないとな」

 

そう言って湊は翔悟の目を真っ直ぐ見ていた。

 

「ああ」

 

湊を助け出して彼が目を覚ました喜びと、加奈を助け出すと新たに心に誓い翔悟は次の戦いの舞台へと歩を進めるのだった。

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