学園の校舎が破壊された翌日、翔悟、湊、友香、綾華の4人は駐屯地に来ていた。翔悟以外の3人の武器を確保するためである。
昨日、校舎が崩れたとき砂煙の中から現れた2人によって襲撃を受けた。そのなかで慧が翔悟たちに駆け寄ってきてしまったせいで帰らぬ人となってしまった。
翔悟たちは今まさにその重みを、"人の死"という重みを感じていて、誰も口を一切開かなかった。それぞれが慧の死は自分のせいだと思い詰めているのである。
入口の自動ドアが開いてそれを潜ると翔悟はある人物と目があった。その人物は翔悟たちにとって懐かしく感じられた。
「蒼田くん!学園の校舎が崩れたって聞いてもしかしたら巻き込まれているんじゃないかって心配していたんだよ」
「ええ、俺たちは全然大丈夫ですよ。冴木さんこそ元気ですね、何かあるんですか?」
冴木昌昭。かつて翔悟、湊、加奈のメンタルケアを担当していた。今は兵士のメンタルケアの仕事を離れ事務業を世話しなくやっている。
「ああ、学園の生徒たちの捜索、及び救出をしなければならないんだ。今ねここにはほとんど人がいないから働かなきゃいけないんだ。忙しいときこそ笑顔は絶やさない。それが僕のアイデンティティさ」
そう言うと昌昭は自分の仕事に戻るためその場からさっさと立ち去さった。しばらくの間昌昭とは会っていなかったから元気で仕事に熱中している姿をみて安心でため息が出た。
「はあ・・・・・・」
「冴木さん、元気にやってるみたいで良かったな」
「そうだな」
懐かしい人物とと再会はここらへんでさておき、入口入って右手すぐに受付カウンターがあった。
「すみません」
「何かご用件でしょうか」
受付カウンターの内側から顔を出したのはいつもの女性ではなく20代前半くらいの若い男性事務員だった。事務員とは程遠い大柄の男。いかにも力持ちであることを象徴しているかのような鍛えられた太い腕。そんな腕で殴られたら人溜まりもない。ちょっと悲しい気もするが今回は別に受付が女性でなくともいいかと開き直る。
「すみません、地下の宝物庫まで武器を取りに行きたいんですが」
「申し訳ありません、只今宝物庫へは入室できないようになっております」
「どういうことですか」
「そのままの意味です。宝物庫へは入室できないようになっております」
「そうなった理由を教えてください」
「いい加減しろ!君らみたいな高校生に話せることなんて無いんだよ、とっとと帰りな」
男性事務員がいきなり怒り出した。この人は翔悟たちのことを知らないのだろうか。それにしても当たりが酷い。何かあるんだろうか。まあ、名乗っていなかった翔悟たちも悪いのだろうが。
「すみません、名乗ってませんでしたね。俺は蒼田1曹です。こいつらは鳴野3曹、坂浪3曹、木咲3曹。第5小隊の隊員です」
「だからなんだっていうんだよ。高校生だから教える義理はないと言ってるんだ」
名乗ったところで教えてくれない、ということはこの事務員は軍の中にある翔悟たち高校生の兵士をよく思わない人たちなのだと確信する。しかし、そうだとしても当たりが強いのは変だ。普通本人たちの前でこんなにあからさまに嫌うことはしないだろう。只の情緒不安定な人なのか、それとも完全に嫌っていて本人の前で気持ちを押さえられないほどなのだろうか。どちらにしても翔悟たちはいい気分にはなれない。
ならば、こんなやつを相手にせず自分で宝物庫に入れない理由を探すしかない。そう思って3人に話し宝物庫へ向かおうとしたが突如事務員が飛び出してきて翔悟たちの前をふさいだ。この行動を見る限り宝物庫に何かがあるのははっきりした。そして、ただ翔悟たちを嫌っているというわけではないということも。
「行かせるわけねえだろ」
「やっぱり何かあるんですね。ていうかあんた誰すか。軍の人じゃないですよね何が目的で俺たちの邪魔をするんですか」
「なぜわかったかは知らないがもう隠す必要はねえな」
次の瞬間、男は腰に下げた剣を引き抜き翔悟たちに向かって降り下ろしてくる。しかし、ただの降り下ろしではない。その剣身には紅く燃え上がる炎を纏っていた。
「オオオオオオォォォォオオ!!!」
大振りな剣を翔悟たちは易々と避けるが、剣が床に叩きつけられたときこの施設全体が大きく揺れた。それほどの破壊力を今の一振りが持っているのだ。当たったら怪我ではすまない。骨が粉々になるレベルだ。
「何者だお前」
そう聞いた翔悟もちゃんとした答えが帰ってくるとは思っていなかったが予想を反してしっかりと返事が返ってくる。
「俺は竜王、大和に身を捧げるもの。狩谷重五郎。我が身に眠りしは紅き刃を持つ炎の竜。蒼田翔悟、坂浪友香、木咲綾華を捕獲するためここに参上した」