冴木さんから魔族と天族が人間界に進軍してくると聞き、隊の全員の表情が絶望したように固まっていた。
いつかは魔族と天族のどちらかが攻めてきてもおかしくはないと思っていた。だが、そのどちらともとなるとわけが違う。
片方だけでも恐ろしいほど強いのに、と考えていると江口さんがこの静寂を断ち切って話してくれた。
「みんな、その顔はなんだ?なってしまったことはしょうがないだろ?俺たちは今できるだけの事をやろう!」
そうだなや、うんうんとみんながやっと反応してくれた。
「まずは、蒼田、鳴野、篠宮は武器を準備しないとな」
「彼らはみんな能力の持ち主なので、それぞれの武器を取りに行きましょうか」
それならと冴木さんが率先して言ってくれた。
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ここは、駐屯地の中でも地下深くにあった。兵士が持っているIDがないと入れない。簡単に敵に取られないようにするためだろう。
武器庫の中を進んでいくと、奥に3メートルくらいの高さの扉があり、そこは軍の人の中でもお偉いさんしか入れないようになっていた。入ってみると奥に3つの武器が保管されていた。ただならない重々しい空気を感じる。
冴木さんが3つの武器について教えてくれた。
「中央にあるのは“魔の剣”、これは蒼田くんのだ。右にあるのは“天の剣”、これは鳴野くんのだ。最後に左にあるのは“巫女の薙刀”、これは篠宮さんのだね」
俺たちはそれぞれの武器へと向かう。
「それぞれにはそれぞれの能力を持つ者にしか扱えないんだ。それと、武器を掴んだら中に存在する力たちと戦いになるかもしれない。気をつけて」
冴木さんの忠告を聞き終えると3人とも武器を掴んだ。その瞬間、意識がとんでその場に倒れた。
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目を開けるとそこはなんとも言えない明るい場所だった。周りをキョロキョロと見回しているとどこからともなく声が聞こえてきた。
「君が新しい人間か?」
声がした方に振り返ると、そこには白い布を羽織っているだけのように見える(いろんな神話なんかの神様がきているような服)、背丈がほとんど変わらない少年が立っていた。
「鳴野湊だ。君は誰だい?」
そう聞いた。
「僕かい?僕はね簡単に言えば天使かな。エルと呼んでね」
そう答えた。
「君は僕に力を貸してほしいんでしょ、違う? でも、なぜこんなことになっているのかわからない、そうでしょ?」
「あぁ、そうだ。俺は戦いだとかそんなのはどうでもいいんだ」
「じゃあ、なぜここに来たの?」
自分でもさっぱりわからない。戦いは好きじゃない。いろんな大人たちに将来を期待されているのも知ったことではないし、なぜ期待されているのかもわからない。親が少しできるということだけでこちらにまで期待しないでほしい。でも、一つだけ理由があるとするなら・・・・・
「俺は、戦いだとか世界だとかどうでもいい。でも、今この世界がなくなってしまうのは困る! もっと翔悟と加奈と一緒にいたいんだ! だから、あいつらと一緒にいるために俺に君の力を貸してくれ!!」
これが、俺が戦うと誓った理由。とても不純だ。こんな理由で天使は力を貸してくれるだろうか。
「いいよ」
答えはその一言だけだった。
また、視界が暗くなって倒れた。
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目を開けると、そこは緑がたくさん生い茂っている森の中だった。少し歩き回っていると、とても大きな木があり、そこに、巫女の姿(日本神話の女の神様がきているような服)をしたきれいな女の人が立っていた。
「あなたがこの武器の力さんですか?」
聞いてみた。
すると、女の人はゆっくりとこちらを向き、ニコッと笑ってみせた。
「あなたが新しい人ね、かわいらしいじゃない。はじめまして、私は日和と言います。気軽に呼んでくださいね」
「は、はじめまして、篠宮加奈と言います。よろしくお願いします」
「よろしくね、加奈さん」
「それではあなたの覚悟を聞いておきましょうか。なぜあなたは私に力を貸してほしいの?」
この質問は少し悩んだけど答えれた。
「私は魔族が進軍してきたとかはよくわかりません。隊の人たちの表情は見て、それがどれだけ恐ろしいことなのかを初めて知りました。そんな恐ろしいことがあれば今の穏やかな生活はできなくなる、そう思いました」
全てその通りだった。戦いがどんなものなのかも知らない。何も知らない私が能力があると選ばれた。これはなにかの運命ではないのだろうか。いろんなことを知るためではないのだろうか。何もわからない私にできることは・・・・・
「このことを全力で受け止めて、なぜ私が選ばれたのか知り、今のこの穏やかな生活を守るために力がほしいです!
大切な人を守るために力がほしいです!」
これが私にできること、選ばれた理由を自分なりに考えた結論。
「加奈さんには大切な殿方がいるのですね」
私はその人のことを一瞬考えて顔が熱くなった。
「やはり、あなたはかわいらしい。いつ何時も恋する乙女はかわいらしいですね。...わかりました。私の力を貸しましょう。加奈さんの大切な殿方を守るために」
目の前が暗くなって私は倒れた。