自然が豊かでいつでも晴れている空が印象的なここは天界。一番、神に近しいと言われる天使たちが住んでいる。
俺は天界の軍隊、天使の翼(エンジェル・フェザー)の隊長、アスティル・ブレインだ。
今回の人間界への進軍は魔族と一緒に行うと聞いている。皆は、
「今までどちらか片方だけで攻めても人間界を落としたことがないからいいのではないか」
と、賛成意見ばかりでていたが、俺は不満でならない。
第一に天界と魔界が上手くいくわけがないと考えている。なぜなら、天界と魔界は友好関係ではないということである。目立った争い事が2種族間にないにせよ、仲が良いということもない。
第二に魔王サタンが俺たち天使のことを嫌っているからである。天界に関連する単語を聞いただけで魔界を滅ぼしかけたという噂も耳にしたことがある。
まあ、大天使様からの命令だからしなければならないんだが。
そんな風に考えながら空の散歩をするのだった。
□■□■□
あと7日しかないと知ったときから俺たちの訓練はハードなものになった。毎日々厳しい訓練に励んでいたが俺はまだ自分の能力を発動させるための鍵がわかっていなかった。湊は造形を一度に10以上の数を造れるようになっていた。加奈はというと、回復などのサポートの能力が使えると判明した。
気がつくと、もう戦いの前日となっていた。江口さんの計らいで、前日は休みとなった。多分、この時間の間に家族や大事な人と会うのは最期かもしれないからゆっくり過ごせということなんだろう。江口さんはいい人だなと改めて感じた。
俺は家族と話したり、自分のやりたいことをいろいろやった。そんなことをしているともう夕方だ。もしかすると明日で全てが無くなってしまうかもしれないと思えてきた。なぜかとっさに加奈に会いたくなってきた。なぜだろう? そう考える暇もなしに家を飛び出して加奈の家の方へと走っていた。
家を出て数分でばったりと加奈と会った。肩で息をしている。加奈も走ってきたようだ。
「どうしたの?」
加奈に聞かれてすぐには答えられなかった。でも、
「加奈に会いたかったんだ」
変なやつだと思われただろう。いきなり加奈に会いたいだなんて。
でも、加奈の返事は違った。
「私も、翔悟に会いたかった」
ドキッと心が跳ねた。何で加奈はそんなことを言ったのだろう。
そのあとは加奈と二人で少し散歩をした。街を見て、山を見て、海を見て、海岸の砂浜に二人で座った。加奈が隣にいるだけで胸がずっとドキドキと跳ねる。この音は聴かれていないだろうか。
シンとしていた。何か話した方がいいのだろうか、だけど言葉が見つからない。何て話せばいいんだろう。すると加奈が唐突に、
「明日だね」
そう言った。
「そ、そうだな」
と、返すことしかできなかった。
「私、死んじゃうのかな」
震える声で言いながら加奈は泣いていた。
俺はとっさに加奈をギュッ抱きしめた。
「そんなことは絶対に無い! 加奈は絶対に俺が死なせない! 俺が絶対守ってやる!」
「うん、ありがとう」
加奈は泣きながら笑顔だった。少しの間、そのままだった。
加奈を離して俺は深呼吸すると、
「加奈は絶対に死なせない。だから、戦いが終わったら俺の話を聴いてくれないか」
これは、俺にとっての告白だった。実際には言っていないけれど。
「うん、わかった。でも、私も話したいことがあるの。私のも聴いてくれる?」
「ああ、もちろんだ」
この日はこれで終わった。加奈を家まで送り、そして俺も家に帰った。家に帰ると誰もいなかった。避難したのだろう。その夜はいつもより静かだった。
翌朝、敵を迎え撃つ平野に行った。そこでは、軍の人たちがバタバタと働いていた。江口さんや永戸さん、エミリさん、加奈、湊と合流し、俺も着替えた。剣を背中に背負い、準備は万端である。
「今日で全てに決着が着くんですね」
「そうだ、だけどこの世界は終わらせない」
永戸さんが答える。
「当たり前だ。だって、エミリちゃんとの大切な時間を終わらせたりはできないもんね」
「大ちゃん、死なないでね」
ここで愛情を確かめ会う二人が今だけは羨ましく思えた。永戸さんは呆れた顔をしていたけど。
集合がかかり、軍の全ての人たちが集まった。皆の正面にある朝礼台のようなところに登るのは、全てを指揮する大隊長のアレクセイ・ガルフォートである。
「皆のもの! 今回の戦いは前例が無い2種族同時の進軍だ。過去に無い厳しい戦いになるだろう。だが、我々は幾度となく天族や魔族の攻撃をしのいできた。なら今回も奴らを返り討ちにしてやろう!!」
オオーーー!!!
「解散! 自分の全ての力を出しきるのだ!!!」
皆が散らばっていく。それぞれに決められた配置へと移動する。
これからこの世界の運命をかけた戦いが始まる!!
□■□■□
登場人物
アスティル・ブレイン
・年齢 3628歳(本人いわく)
・血液型 無し
・備考
天界唯一の軍隊、天使の翼(エンジェル・フェザー)の隊長。天使の中でも有力な貴族の後取り。剣の腕は天界一と言われるほどである。人間を憎んではいない。それどころか好きかもしれない。
アレクセイ・ガルフォート
・年齢 43歳
・血液型 AB型
・備考
人間界の軍隊の大隊長。幼い頃から永戸と一緒に軍人として育てられた。力が強く、普通の人間にはできない、車を持ち上げることもできる。