駆け巡る嘘   作:ぱに

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さ、ここで、一つの終わりですね╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ !

はい、前から毎報コンクール入れる、入れるって言ってる割には全然入れてない……( º﹃º` )
よく考えてみれば、この次の話でやっと武士と絵見のあの場面に触れるとこですよ……


一つの終わり

 

 

『へー、佑樹コンクールに出るんだ』

 

「はい。 でもまだ全然思い通りの演奏できてませんけどね」

 

『そんなのいいんだよ。 私はまた佑樹がコンクールに出るだけで満足』

 

「満足……ですか?」

 

『いい加減素直になりなよ。 君の演奏を待ってる人はいくらでもいるんだから』

 

「そうですね」

 

『明日も学校でしょ? もう寝な。 おやすみー』

 

「おやすみなさい。 沙耶さん」

 

俺はそう言って携帯電話を切る。

今電話してたのは兄貴の彼女さんだ。

兄貴と沙耶さんが付き合い始めたのは中2の頃。

兄貴の演奏を聴いた沙耶さんが一目惚れして告白したのだ。 それからは家族ぐるみで仲の良い関係を築いているのだから、沙耶さんはすごいと思う。

俺は、ベッドに倒れこみ、天井を見てから一言。

 

「寝よ」

 

そう言って眠り着いたのだった。

 

 

『あー、テス……これより、地区総体、運動部壮行式を始めたいと思います。 始めに校長先生より激励のお言葉を……』

 

ついに運動部にとって最大の花場である、総体。

この日の為に汗水流し、努力してきた為、どの生徒も顔が違う。

 

『……続きまして各部の意気込みを……まずはサッカー部の……あ!』

 

『この時代に生まれたオメーらは、とんだラッキーボーイだぜ』

 

この声は渡。

渡の言葉によって生徒たちはザワザワとなり始めた。

 

『渡亮太っていうスターの誕生に立ち会えるんだから』

 

「渡くーん!!」

 

「俺、カッコイイ」

 

キラーんという効果音が出ているくらいにカッコつけた渡に女子の声援がピークに達する。

 

「渡ってバカだろ」

 

「バカだ」

 

「あいつ本物だな」

 

男子勢の失望の声も聞こえる中、俺は笑いを噛みこらえるので精一杯だった。

 

『えー、しきり直して次は……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いーやーだー」

 

俺は絶賛拒絶中の状態だ。

理由は目の前の少女の言葉に問題があるから。

 

「なんでー? 演奏うまくいってない訳ないから、何か理由でもあるの?」

 

「なんで断定なんだ……」

 

勝手な決めつけをしてくるのは宮園。

俺は白い目で見続ける。

 

「演奏家にも休憩は必要! って事で運動部の応援行くのよ!」

 

「待てって。 応援って誰の?」

 

「誰って椿ちゃんや渡君にきまってるじゃん」

 

確かにあの二人には普段からお世話になってないとは言えないので、考え込む。

 

「有馬君も来るし、ここで来なかったら君だけ仲間はずれだね」

 

悪魔かこいつ。

と思ってしまうほど清々しい笑みを浮かべてそう言ってくる。

 

「あー、わかったわかった! 行けばいいんだろう?」

 

「そうこなくっちゃ。 じゃ! って事でバイバーイ」

 

宮園は言いたい事だけを言い終えると走って行ってしまった。

なんと嵐のような女性だと思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシッという音の元、打たれたボールは見事にグローブの中へと吸い込まれる。

 

「ナイスショート! スーパーキャッチ!」

 

そう言われ、満足そうにこちらを見たのは澤部である。

結局、有馬と宮園に半ば強引に連れて行かれるようにして俺はこの場所にいる。

 

「僕一人だと何されるか……葉山お願いだよー」

 

これは有馬。

 

「えー来ないの? ここで来ないなんて薄情だねー。 君は友達も大事にしないなんて」

 

これが宮園。

 

この後結局腕を引っ張られ連行されるようにこの場に来たが、来てみれば心地いいなと感じてしまう。

 

(澤部って何気ソフトボールうまいんだな)

 

来なければ一生わからなかった事に、強引に連れてこられたのも悪くはないなと思ってしまう。

 

チームのみんなに何かボコスカと言われているが、遠目からだと仲が良いのだと勘違いしてしまう。

 

「この回は椿からだな」

 

「うん。 いけー椿」

 

俺がそう言うと公生は応援するようにそう言った。

 

初球、投げられた球は浮き上がり、澤部は空振りをした。

あれがライズボールって言うんだなとどうでもいいことに浸っていると、観客は相手のピッチャーの凄さにどよめきだす。

 

そして二球目、投げられた球は一度様子を見るためなのか、良い音はなったが、澤部はきちんと見逃し、ボール。

 

「いけー! 三冠王! 甘い球見逃すな!」

 

「三振とれ! ドクターK」

 

「打てー!!」

 

そのボールにより、観客サイドは一気に盛り上がり、色々な歓声が飛び散っていた。

 

(ドクターKってなんだよ)

 

謎の声援に失笑してしまうが、相手がボールを構えたので視線を固定する。

 

三球目、投げられたボールを澤部は見事に当て、爽快なキーンという音を奏でた。

 

ボールは一塁線を破り、観客側の声援はピークと達する。

 

「よっしゃ! 長打コース!!」

 

「キャー! 椿ちゃーん」

 

全員の大声の歓声の中、相手側はボールを拾うことにもたついており、三塁打となるなと内心思っていると、澤部はまさかの三塁打を蹴りホームベースにダッシュする。

 

(何やってんのー!?)

 

俺は勿体無いという思いで見ていると、澤部の顔が深刻そうなのが見て取れた。

ソフトボールに全く集中できてない顔に俺は諦めを感じた。

 

(これはアウトだな。 いろんな意味で)

 

ボールはホームへと帰ってきており、澤部がホームへとスライディングをした。

 

「……アウト!!」

 

だが、その頑張りは虚しく、終わりを迎えた。

 

「ぐあー! 何やってんのよ椿!!」

 

チームからのブーイングも飛び、観客からもガッカリとした声が漏れ出す。

 

その後もプレーに全く集中できていないみたいで普段ならば取れていたであろう相手の打球も捕れずに、試合は1対0で墨谷中学ソフトボール部の夏は終わりを告げたのだった。

 

帰り道、俺と宮園と有馬は歩いていた。

 

「椿、いつも通りじゃなかった」

 

突如、有馬の言葉に俺は気づいていたのかと思ってしまう。

 

「じゃなかったな」

 

だから、肯定すると有馬は何かを決心したように立ち止まる。

 

「僕、ちょっと寄るところができたから」

 

「そうかい」

 

有馬はそう言うと、後ろを振り返り行ってしまった。

俺と宮園はそれを暫く見守った後に前を向き歩き出す。

 

「今日の意味ってなんなんだよ」

 

正直言うと今日、ピアノの練習をサボってまで負け試合を見たのだとすれば、相当テンションが下がる。

いや、負けるかどうかはわからないのだが、どっちにしろ今日の分の時間は失ったのだ。

 

「ねぇ、葉山君は毎報コンクールの課題曲、バッハとショパンってどんな人だと思う?」

 

「どんな人?」

 

突然、振られた質問に俺は疑問符を浮かべながら聞き返す。

 

「そう、葉山 佑樹ならわかるでしょ? 昔の君なら」

 

「……バッハの凄いところは即興演奏だろうな。 楽譜無しで自由に自分の演奏を弾けるってのは凄いと思う。 ショパンはピアノの詩人と呼ばれるほど様々な形式、美しい旋律、半音階的和声法などでピアノの表現様式を拡大したことで有名だって言われてるな。 でもそれは過去のことであって本当かどうかは定かではないけどな」

 

確かに歴史上ではこの偉人は凄いという一言で纏められるほど凄いのだ。

だが、18、19世紀を生きてきた偉人の本当の性格なんてものは俺たちには知ることさえできない。

その点ではバッハやショパンがどんな人だと思うという質問に答えることは不可能なのだ。

 

「それに、俺はもうそこには拘らないからな」

 

「しってるよ。 でもその気持ちも大事じゃないかな?」

 

「どっちなんだよ」

 

俺の記憶もそこまで明確ではないが、前は作曲者みたいな演奏をしてて何が楽しいの? みたいな事を言っていたような気がする。

 

「どっちもだよ。 君が君らしく君の思う演奏をするためには過去の自分と今の自分を重ね合わせるしかないって事」

 

「ここにきて、また悩むような事を……」

 

いつもそうだ。 宮園は俺がゴールを見つけたと思うとさらにゴールを遠ざける。

 

「でも、君ならわかると思う。 だって君の演奏は才能あるもの」

 

「……才能」

 

兄貴にも言われたその言葉に俺はムッとする。

 

「君は気づいてないかもしれないけど、作曲者の気持ちになりきって演奏するなんて並大抵じゃできない事なんだよ」

 

宮園の言葉に俺は何も言い返せず、無言を貫く。

 

「だから、君の演奏に感情が入れば、君の演奏は踊り出す」

 

宮園の言葉には俺は言い返す事もできずに下を向く。

これが宮園だ。

いつも正論を言うくせにやる事は大雑把で迷惑。

そんな彼女だからこそ、俺は何も言い返せないのかもしれない。

 

「星は夜の空で静かに輝いてる」

 

「星?」

 

宮園の言葉に疑問を思い浮かべながら、空を見る。

普段意識して空を見た事なかったからか、そこには思わず息を吐いてしまうほどの光景が広がっていた。

 

「きれいだ」

 

「君はどこで輝くの?」

 

「どこで……」

 

またも、宮園の質問に俺は空を見上げたまま、考え込む。

 

「そりゃ、舞台の上じゃないのか? ……なるほど、そういう事か」

 

宮園の言いたい事を理解できた俺はフッと笑い出す。

 

「舞台なんかじゃないな。 俺は人の心の中で輝き続けたい」

 

「うん。 いい答え!」

 

そう言って宮園はニコリと微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした? 音が踊ってるような気がするけど」

 

俺の演奏を聴き終わった兄貴がそう言ったため、俺はニコリと笑う。

 

「ようやく、答えを見つけたかな」

 

答えとは兄貴から出されていた俺の演奏家としての決意だ。

兄貴は俺の返答に満足したのかは知らないがゆっくりと近づいてきた。

 

「そうだな。 お前が答えを自分の力で見つけたのいい事だな。 ……だが、遅すぎんだよ!」

 

頭を叩かれるようにして言われた言葉に俺は動揺を隠せない。

 

「一週間ちょい前じゃ、技術指導するの至難の技だろうが!」

 

「ちょ……いた……痛い!」

 

兄貴は遠慮なく俺の頭を叩くもんだから俺は逃げるようにして椅子から立ち上がる。

 

「何勝手に立ってんだ! 練習まだ終わってねぇーぞ!」

 

「理不尽!?」

 

ふざけるなと思う気持ちもあったが、確かにこの期間で毎報コンクールへと集大成を集めるのは難しいなと反省する。

 

「じゃあ、優勝は諦めるのか?」

 

俺がそう兄貴に尋ねると兄貴はニヒっと笑った。

 

「いやいや、お前が師事してる人は誰だと思ってんだよ。 俺に任せとけ!」

 

「兄貴ってそんな性格だったけ?」

 

俺は白い目を向けながら、普段と違う兄貴に疑問を投げかける。

普段の兄貴なら冷静に物事を考えるはずなのだが、今日は熱くなっているというか、調子に乗っている。

 

「あ、いや、別にな。 お前のコンクールが近くなってきたと思うと、どうも気持ちが抑えきれなくて」

 

「ガキか!?」

 

「お前の演奏が楽しみとか、そういうわけじゃないんだけど、お前の晴れ舞台を見てみたいという衝動を抑えきれなくて」

 

「同じ意味だろ……」

 

テンションの高い兄貴は扱いにくいなと溜息を吐くと、兄貴はコホンと咳払いをした。

 

「まぁ、冗談はこのくらいにしといて、練習をするぞ」

 

「なんなんだ……」

 

「まず、お前の課題の強弱の曖昧さを克服だな。 一回、強いとこは強く、弱いとこは弱くってのを大袈裟にやってみろ」

 

「え、ピアニシシモとメゾピアノは同じで弾いていいのか?」

 

兄貴の発言を確かめるように尋ねると静かに頷いた。

 

「そうだ。 まずは曖昧にしないためにも音の強弱をハッキリさせる。 さ、無駄口を叩いてる時間はないぞ」

 

「わ、わかったから押すなって」

 

俺は強引に椅子に座らせられると鍵に指を置く。

 

「さぁ、残り一週間ちょっと。 忙しくなるなぁ!」

 

兄貴の不気味な笑みに俺は戦慄を覚えたのだった。

 

 

 

 

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