駆け巡る嘘   作:ぱに

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ふぅ、今のとこ順調ですね。
今回はまたもや原作に介入できない場面だったので4巻の最後を引き延ばし、2巻めの最初に繋げました。
実質、今回は全て自分のオリジナルということもあり、駄文極まってますが、よろしくお願いします。ヾ(・ω・*)


新たなる道

 

俺は一通り、練習をしてから帰る準備していると絵見が練習のために部屋に入ってきた。

 

「絵見、今日からの練習は厳しくなるかもしれないわ」

 

落合先生の発言に理由を知らない絵見は疑問符を浮かべる。

 

「私の生徒2人……次の毎報音楽コンクールに出場するのよ」

 

「……え」

 

絵見は驚いた顔で俺に視線張り詰める。

 

(不思議だ。 まだ絵見は俺の……俺が創った演奏を聴いてもらってもないのに絵見が俺を見てくれてる)

 

これは初めての経験だ。

いつもは邪魔者扱い、居ても居なくても同じ扱い、俺の演奏は認めてくれない。

そんな彼女が初めて俺の顔を真正面から覗き込んでいるのだ。

 

「そういうことだ絵見。 俺はお前にも……そして有馬にも勝つ」

 

その言葉は過去の俺を乗り越えようとする覚悟。

その言葉は絵見に振り向いて欲しいから。

そして何よりもその言葉は自分との勝負。

 

「絶対まけない」

 

俺の一言に絵見はニヤリと笑った。

 

「笑わせないで。 佑樹がいくら足掻こうと私との間にはすでに埋められない差ができちゃってるの」

 

「言っとけ」

 

俺もニヤリと返すと、カバンを持ち外に出ようとする。

 

「待って佑樹。 絵見、貴方がピアノを弾く理由を教えてあげたら?」

 

突如、引き止めたかと思えばそう言ってくる。

確かに絵見も有馬の演奏を聴き、このピアノ教室に通ってるくらいだ。

有馬が居ない今の状況が辛いわけがない。

事実、最近の絵見は波が激しく、有馬がいた時みたいな演奏は出来ておらず、入賞さえ逃してる状況である。

 

「佑樹。 貴方は有馬の本当の演奏を聴いたことないでしょ」

 

「本当の演奏?」

 

俺は確かに聴いた。

有馬 公生という少年が頭角を現してきた時に演奏した曲に俺は感化されたからだ。

 

「そう。 有馬が初めてコンクールに出た時の演奏を」

 

「絵見は……聴いたのか?」

 

どうやら、絵見の言っている有馬の演奏と俺の知っている有馬の演奏は違いがあるみたいだ。

 

「うん。 初めて出てきた有馬は緊張ガチガチで、それでも弾けば誰もが釘付けになる演奏をした。 それも機械みたいじゃなくて人間として感情が伝わってくる演奏を」

 

「人間みたい……か。 全く俺の知っている有馬とは違うじゃん」

 

「だから、私は今の有馬を否定するためにピアノを弾く」

 

その言葉は俺の覚悟と比べたら俺の覚悟が霞んでしまいそうなくらい固かった。

 

「やっぱ、有馬なんだな」

 

それでもやはり、悔しい。

絵見の中での演奏家は有馬ただ一人。

俺が入り込める隙間さえ見当たらない。

でも。 だからこそ、有馬に勝って絵見に俺の演奏を認めさせたいのだ。

 

(俺は負けず嫌いだ。 初めて聴いた時だって負けたくなかった。 有馬がやっている演奏よりも上のステージに立ちたかった)

 

しかし、それは叶わない。

なぜなら、俺の演奏は変わったからだ。

でも、不思議と嫌な気分はどこにもない。

むしろ、心地良ささえ、感じるほどなのだ。

 

「なら絵見。 俺は有馬の演奏を否定した絵見の演奏にも勝たないといけないんだな」

 

俺がニシシと笑うと、絵見はフッと笑い椅子を引いて腰を下ろし鍵盤に指を置いた。

 

「勝てるものなら勝ってみなさいよ」

 

そう言って彼女はピアノを弾き始める。

その姿は和製アルゲリッチと呼ぶのがふさわしいくらいだった。

 

「どう? 絵見の演奏を聴いての感想は」

 

落合先生にそう尋ねられ、俺は苦笑いで答える。

 

「いざ、改めて聴いてみると大きな壁を登ってるかのような錯覚に陥りますね。 これが同年代とは思いたくない」

 

「絵見はまだいい方よ。 波があるもの。 今は佑樹という存在が現れたことにより調子は良さそうだけど、今一番厄介なのは相座 武士くんよ」

 

確かに彼の演奏も凄かった。

しかし、彼はどこか俺と同じ雰囲気を纏っているような気がしなくもないのだ。

 

「彼が師事しているのは高柳先生よ」

 

「高柳先生ですか」

 

「性格は好きにはなれないけれど、相座くんをあそこまで育てたのは紛れもなく高柳先生。 海外からの話も来てるらしいわ」

 

「マジですかぁ」

 

あまりの話の大きさに正直どうしていいかわからない。

 

「そして、彼も紛れもなく有馬くんを見て感化された少年でもあるということ」

 

毎回そうだ。

俺の世代は全員が有馬が関係してピアノをしている節を否定できない。

いっそのこと有馬世代といっても過言ではないのではないかと思ってしまう。

 

「相座くんも有馬くんの帰りを待ちながら……いえ違うわね。 佑樹とは違い本気で有馬くんに勝とうとしてる」

 

「昔の俺なら否定できないとこです」

 

確かに昔の俺なら有馬と同じ舞台に立てただけで嬉しさ倍増してたし、それだけのために演奏していたようなものだ。

はっきり言って諦めていた。

心では観客から聞こえる『また有馬が一位だ』という言葉に甘えていたんだと思う。

 

有馬が一位は当たり前。

俺に勝てる相手ではない。

 

そんなことを思いながらピアノを弾いていた為、有馬が居なくなると弾けなくなったのだ。

 

「もう一度、聞くけど……葉山 佑樹。 貴方は次のコンクールで何を目指す?」

 

絵見の演奏が響いているこの部屋で聞こえる落合先生の声に俺は微笑する。

 

「それは試してるんですか?」

 

「そうね。 私が貴方に教えてもいいと思えるほど成長してるかのテストかしらね」

 

全く酷なことを聞いてくる。

正直言うと勝ち負けには拘りたい。

気持ちを入れ替えた今だからこそ相座にも絵見にも勝って、頂点に立ちたい。

しかし、そんな欲は落合先生には通らない。

でも、だからこそ。

 

「俺は弾きたいよう弾いて絵見、相座そして有馬を倒す」

 

この返答だ。

結局、俺は演奏家失格なのかもしれない。

こういうものには勝ちたいし、負けを経験するなんて嫌に決まってる。

 

それでも、もう固執はしない。

勝ちたいけど楽しみたい。

楽しんだもの勝ちという言葉を信じてもいいのではないかと思う。

 

「やっぱり、勝ちには拘ってしまう? 絵見みたいに誰かに何かをしたいって気持ちだってあるんでしょ?」

 

確かにそうだ。

俺は絵見に俺の演奏を認めさせたい。

でも、それは俺の弾く理由とは違うような気がする。

 

「確かにあります。 俺は作曲家達が何を思い、何を感じ、何を残したかったのかを感じて、それを俺が観客に俺のピアノで伝えたいんです」

 

これは紛れもない事実。

自分の演奏じゃないって馬鹿にされるかもしれないが、俺はこれが好きなのだ。

最近までは有馬を見過ぎたあまりに定着したスタイルだった。

 

「俺の演奏がつまらないなら、そこを変えればいいと思うんです」

 

俺の演奏は作曲家の心情を汲み取り、聴衆にそれを届ける。

何も間違ってはいないし、審査員だってそれを望んでる。

でも、それがつまらないというのなら、俺はそこを変えてみせる。

 

「それはとても難しいってわかってる?」

 

落合先生の言う通り、簡単なわけがなく、出来るものなら既にできているだろう。

 

「わかってます。 でもそれが俺の演奏じゃないですか?」

 

笑って答える俺に負けたのか落合先生は目を閉じ微笑を溢す。

 

「負けたわ。 貴方の行く終わりが見たくなったのかもしれないわね」

 

そう言う落合先生の顔はすっきりした表情だった。

 

「ここからは厳しい道のりよ。 今まで練習しなかったんだから覚悟しときなさい」

 

「わ、わかりました」

 

落合先生の気迫がこもった顔に俺は引きつった笑みしか返せない。

 

「落合先生どうでした?」

 

演奏を弾き終えた絵見がブスッとした表情でそう尋ねると落合先生が今度は引きつった笑みを浮かべる。

 

「落合先生……聴いてませんでしたね?」

 

確かにそうかもしれない。

俺との話に集中しすぎて、俺では絵見の演奏を聞き逃していた。

 

「ごめんなさい。 聴いてなかったわ」

 

素直に謝る落合先生を見ていると、なぜか絵見は俺を睨みつける。

 

「佑樹がいつまでも図々しく居座るからよ! 早く帰って!」

 

「ええ!?」

 

理不尽極まりない物言いに俺は両腕を前に出す。

 

「待て待て! 確かに話しこませたのは俺が悪いけど今の俺が責められる場所か!?」

 

「うっさい!」

 

俺の否定に一言で両断され俺は「えぇ」としか言い返せない。

 

「なら佑樹はどうだったの? 私の演奏」

 

突然、聞かれたその言葉に俺は言葉を詰まらせる。

 

本音を言えば、“上手すぎる” はっきり言って俺に勝てるか疑問に思えてしまうレベルだ。

 

「上手かったよ。 でもその演奏を俺は超えるけど」

 

「言ってろバカ。 佑樹が成長するなら私も成長するんだから」

 

なにか気持ちいい風が吹いてる気がする。

だって、今は俺と絵見が張り合ってるからだ。

いつもなら有馬を挟んで張り合うのが今は対等。

 

(ちょっとは認めてくれたかな)

 

新しい環境に俺は笑みを隠せなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵見と結構いい感じに話せた次の日。

俺は授業を受けながら窓の外に広がる桜を名残惜しそうに見ていた。

 

今日は藤和コンクール二次予選。

予定通りなら有馬と宮園があの舞台で弾いてるはずだ。

 

(っても、あいつ大丈夫かな)

 

この一週間、話すわけでもなかったが有馬の様子は見ていた。

何処か逃げ腰でピアノを弾かなくていい理由を探してるかのように見えたのが気になるところだ。

 

(俺は弾くぞ。 だから、お前も弾け)

 

俺の決意がお前に届けと俺は心の中で叫び続ける。

 

(渡がいないのが気になるんだよな)

 

いくら、宮園の演奏を聴きたいからって学校サボるとは思えないが、いや、思いたくはないが、少しばかり心配である。

 

「おい、葉山! 話を聞いてるのか!」

 

そう言われ、前を向くと先生は黒板に見たこともない計算式。 おそらく新しい公式を使った計算なのだろう。

それに関する問~の問題を指していた。

 

「これを解いてみろ」

 

どうやら深く考えすぎてたせいか、珍しく勉強に集中できてなかったらしい。

 

「すいません、聞いてませんでした」

 

俺が素直にそう言うと、先生は当然のように怒り、俺は恥をかいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って事で、かをちゃんの演奏見てたんだよー」

 

「は、はぁ?」

 

放課後になり、部活のためか、帰ってきた渡に聞かされた学校にいなかった理由に俺はそんな返答しかできない。

 

「すごかったんだぜ、やっぱかわいーよな」

 

デレデレとした表情でそう言う渡に俺は溜息を吐いてしまう。

 

「それで、有馬はどうだった?」

 

俺も聞きたかったというのが本音だが、久しぶりに弾いた有馬の演奏についての感想も聴きたい。

先生は勝ち負けよりも達成感味わえみたいなことを言っていたが、俺にはやっぱり、有馬との勝負が大事だ。

 

「最初はスゲーと思ったよ。 でも、なんだかな、途中から変わったんだ」

 

「変わった?」

 

演奏者。 ましてや、有馬ほどの実力者にもなれば、あり得ないとは言えないが、滅多に自分のスタイルを本番に変える人ないないだろう。

何よりも、そんなのを審査員が認めてくれるわけがない。

なら、必然的に有馬に何かあったと考えるのが妥当だろう。

 

「最初は、かをりちゃんの演奏にもきっちり合わせててキレーだったんだよな。 でも途中から急に乱れて観客から下手くそって言われてた」

 

俺は下手くそと言われたらしい有馬の演奏を信じることができず、微笑さえ生まれなかったのだった。




次は遂に公正が藤和コンクールの舞台に伴奏者として立つところですね。
でも、オリ主行ってないからそこらへんのシーンは詳しく描写するつもりはありません!
もうしわけございません!
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