オリ主を主人公に接触させても原作を変えるなんてできないような感じがします( º﹃º` )
今回でやっと俺の駄文が終わるかな?
原作では無い、藤和コンクール後の公生とオリ主の話を描いてみましたので、温かい目で見てくださいw
俺は一種の悔しさを感じていた。
心のどこかで感じていた、いやどちらかというと勝手な期待を寄せていたんだと思う。
有馬は多少のブランクなんて関係ないと。
あの有馬ならいきなり戻ってこようと譜面通り忠実に弾き聴いたものに憧れを残す。
そういう勝手で過度な期待だ。
だから、渡から聞かされた有馬の演奏に俺は素直には受け止められなかった。
「途中までは正確に弾けてたんだよね?」
だからこそ、確かめにはいられない。
俺の質問に渡は考えるようにして頷いた。
「あぁ、最初はすごかった」
ここが一番わからないポイントだ。
最初は音楽に興味がなさそうな渡でもわかるほど魅力的な演奏をしていたにも関わらず、途中から下手くそになったというのか。
「まさか……本当に音が聴こえないのか?」
二次予選前に宮園から聞かされた有馬の現状について。
それを信じていたわけではなかった。
まず、自分にそんな体験がないからだ。
鍵盤を押せば、なにかしら音がなる。
それは俺の中である絶対で当たり前の常識なのだ。
でも、音が……それも弾いてる途中に聴こえなくなってくるのだとしたら?
不思議とピースがハマるように納得できてしまう。
「でもよ。 すごいのはその後、なんだ」
まだ続きがあるのかと俺は渡に視線を向けると、未だ余韻に浸っているのか、気持ち良さそうな顔をする。
「確かによ、一気に下手になって途中で演奏やめちゃったんだよ。あいつ」
「やめたのか!?」
さすがに聞き逃せないセリフに思わず声を荒げてしまう。
「やめたな。 そしたら、かをりちゃんまでやめちゃってよ」
「……は?」
伴奏者である有馬がやめてしまうのは納得はいかないが、下手と言われていたなら賢明な判断だろう。
下手なまま弾き続けたら、ヴァイオリニストに影響が出る可能性だって考えられるからだ。
下手したら彼女のキャリアにだってキズをつける。
「そんときは客からのブーイングすごかったんだぜ」
なんでもないようにそう言う渡だが、俺がその場にいなくてもブーイングの嵐の度はわかってしまう。
「前代未聞だな……」
「でも、その後なんだよ!」
突如、興奮したようにそう言う渡に俺はバカみたいな顔をしたまま、凝視する。
「終わったと思ったけど、かをりちゃんがヴァイオリン構えて弾きだしたんだ。 そん時は思わずイラっとしたぜ。 1人で弾かせるなんてしないよな?」
それはなんとも言えない事態だなと俺は思ってしまう。
しかし、確実に確信できることがある。
宮園は本当に結果を求めていたわけじゃない。
有馬とあの舞台で演奏し、それを聴いてくれる観客に何かを伝えたかったのだ。
それが何なのかは俺にはわからないが、常々尊敬という気持ちを抱いてしまう。
「それで? どうなったんだ」
俺の率直な疑問に渡の顔はパァと明るくなり、はにかむ。
「公生も……弾き直し始めたんだ!」
「へぇー」
一度、諦めた者が再度立ち上がるのは相当な覚悟がいるのを知っている。
それは俺でも経験したことがあるし、経験してなくてもあの場でやり直すのは俺だって難しいかもしれない。
「まぁ、結局最初は下手だったんだけどな」
「まぁ、変わらんよな」
「いや、それが変わったんだ」
渡の3度目の変化発言に俺は首を傾げてしまう。
「変わった?」
「そうなんだよ。 なんでかは知らないけどさ。 周りの感想聞くには主役の奪い合い?」
「まじかよ」
確かに音が聞こえないなら感じればいい。
俺だって集中すれば音を掻き消す。
余計な雑念を消し、自分の感情と作曲家の感情を照らし合わせ、より正確に弾いていく。
だが、それで変わったと言うのなら。
「有馬 公生復活じゃねぇか」
過去何度もその前に敗北という2文字を
突きつけられた。 有馬 公生の演奏だ。
音が聴こえない中、ヴァイオリニストから主役を奪う。
「最初に比べたらメチャクチャなんだけどよ、なんか……あー! なんて言っていいかわかんね!」
これが有馬 公生だ。
人々に1つ演奏を聴かせれば、有馬の世界に埋没していく。
更に今回は自分勝手に弾く宮園も加わり、それは殴り合いへと発展する。
そして、その殴り合いに会場は呑み込まれていくんだ。
「そしたらよ。 椿のやつ、演奏中なのに騒いで隣から注意受けてんの」
ニシシと笑う渡に俺もつい笑ってしまう。
やっぱり、有馬は健在だ。
俺の目標の演奏で今は倒すべき演奏。
「やっぱ、有馬はすげぇわ」
そもそも、間違いがあったのだ。
有馬に合わせるなど、出来はしてもやらせるべきじゃない。
有馬ほどの才能の持ち主は伴奏者には収まらない。
独奏者なのだから。
「やっぱ、その時の歓声はすごかった?」
「あぁ、ありゃ本当にライブみてぇだよ」
渡の感想に俺は自然と拳を作る。
(越えるべきは、その演奏なんだ。 俺が過去と向き合うためにも)
だから消えてもらっては困る。
有馬の演奏に勝ってこそ、過去の俺は居なくなるのだ。
「でも、その後に」
「渡せんぱぁーい。 部活始めましょうよー」
渡が何か言い終える前に遠くから部活を始めようと後輩が声を上げている。
「あ、悪い。 部活行くな?」
「あぁ、頑張れよ」
俺がそう言うと渡はコートへと走って行ったのだった。
「四月が終わりそうだな」
俺は学校の中へと戻るのだった。
「まだいるかな」
俺がそう言って開けたのは音楽室の扉。
そこにはやはりと言うべきか有馬がいた。
しかし、椅子に座り外を眺めているもののピアノは開いていない。
「よ、有馬」
「葉山……」
俺が入ると有馬はチラリと視線を向けると、すぐに戻してしまう。
「なにやってんだよ」
「別に、なにも」
前にもこんな感じの時はあった。
あの時は渡が居た為、全て渡に任せていたが、今は居ない。
「悩み事か? そこどけよ」
「え、え?」
俺がそう言う前に有馬の肩を押し、椅子から落とそうとする。
「ま、待って! 危ない」
ようやく退いた有馬に変わり、俺が席に腰を下ろす。
「それで。 悩み事か?」
二度目になる質問に有馬は無言を貫く。
「有馬。 俺“達”は演奏家なんだぞ」
「え?」
有馬だけは知らなかったことに今気づいた俺は敢えて含みを掛けた言葉で有馬にそう訴える。
「演奏家は音楽でしか伝えられない。 音楽以外で伝えちゃ演奏家じゃなくなるんだ」
その言葉に有馬はなにも答えない。
だから、俺は再度この言葉を使う。
「悩み事か? 有馬」
俺はそう言いながらピアノを開く。
そして鍵盤に触れると適当に音を出した。
「葉山もピアニストだったんだね」
「これでも毎回4位入賞してたんだけどな」
俺の微笑に有馬は焦ったように手を振る。
「ごめん。 結果なんて見てなかったから」
そんなのは知っている。
毎回、絵見と見に行ったが、そこに有馬の姿はない。
「いいよ。 別にまだ諦めちゃいねぇから」
「葉山がピアノを続ける理由はなに?」
有馬の質問に俺は含みの笑みを向ける。
「知りたいか?」
この言葉に有馬は頷いた。
もし、これを聞いたとして有馬の中で何か変わるということはないだろう。
でも、それでも知りたいのかもしれない。
他人は、なぜピアノを弾くのかを。
「じゃ、聴いてろよ。 俺は演奏家だ。 答えは自分で弾いて創り上げるから」
俺はそう言って、鍵盤に指を置き、静かに押し始めたのだった。
公生は目の前にいる最近出来た友達についてなにも知らないことに改めて思い知る。
葉山 佑樹という人物は小学生の頃に出会っているはずだが、なんせあの頃は無気力にピアノに向き合っていた。
その為、結果などどうでもよかった。
(グリーグ、ワルツ Op38-7)
葉山が弾いてる曲は出だしはゆっくりと始まる曲だ。
しかし、その後すぐにテンポが上がり、難易度が増す。
(なにこれ。 テンポもリズムもめちゃくちゃだ)
だが、とてもそれは演奏とは言えない。
しかし、その中でも感じ取れることがある。
(赤色……怒りじゃない。 これは自分の欲望。 そして青色。 冷静さ)
下手なのに引き込まれる。
そんな錯覚を公生は覚えてしまう。
速いテンポの時は明確に誰かに対して何かしたいという気持ちが滲み出ている。
それは何かに焦っているように。
しかし、テンポが落ち着く場面では冷静さを取り戻す。
とても聴いてて心地いい演奏だ。
(これはなんだろう……)
公生自身も感じたことある懐かしい気持ちに落ちてしまう。
下手ながらも認めてもらいたかったあの時に。
(そうだ。 僕はお母さんに認めて欲しくて……褒めて欲しくてピアノを弾いてたんだ)
そんなのは自分でも気づいている。
だが、お母さんを失ってから音が聴こえない。
ピアノから逃げた自分への罰なのだ。
有馬はそう思って聴いていたのだった。
「どうだった?」
認めてくれ。
それが俺の中にあるピアノを弾く理由だ。
これは絵見だけじゃない。
有馬にも、俺の演奏をつまらないと思ってる観客にも、そしてあの人にも。
だからこそ、今からくる有馬の返答は聞き逃すわけにはいかなかった。
「どうって……」
そう溜めを作る有馬に俺は自然とゴクリと唾を飲み込む。
「まず、リズムが取れてないし、テンポもダメダメだ。 ペダルを踏む足に焦りが見える。譜面をきちんとさらえてない。 強弱はできてるにはできてるんだけど、区別が曖昧。 フォルティッシモとピアニッシモがわかりにくい。 休符をきちんと確認して。 感情に任せすぎてて演奏がめちゃめちゃ」
(え、えぇー)
思わず白目になる俺に有馬は容赦なく指摘していく。
「でも。 すごかったよ。 葉山の気持ちはしっかりと伝わった」
最後に聞いた言葉に俺はニヒッと笑みを浮かべる。
「俺が弾いてる理由わかったか?」
俺がそう尋ねると有馬は頷いた。
「わかったけど。 理解はできないかな」
有馬の中では母親のために弾いても認めてはもらえなかった。
褒めて欲しかったから練習にも耐えたし、遊びよりもピアノを優先した。
しかし、結果はこれだ。
そんなことを知らない俺は「そっか」と一言しか言えない。
(伝わらなかった。 俺の気持ちは有馬の心に響いてない)
まだ認めてもらえてないのだ。
それは自分だって気づいている。
今の俺は有馬よりも格下で足元さえ見えない。
(だって俺の道には靄がかかってる)
靄がある限り、見えるのは自分の足元だけ。
手を前に伸ばし、確認しながら一歩一歩、歩かなければ躓いて転んでしまう。 壁にぶつかってしまう。
「有馬は毎報音楽コンクール出るのか?」
叶うならば、期待してもいいだろうか。
あの舞台で。 あの大きなステージの上で競い合えるのだろうかと。
「出る気はないよ」
その短い返答に俺は俯いてしまう。
あぁ、叶わないのかと。
神様は残酷だ。
覚悟したにも関わらず、決戦の場を設けてはくれない。
でも、それでもライバルいる。
相座 武士だって井川 絵見だって倒すべき相手だ。
「そっか。 後一つ聞いてもいいか?」
「なに?」
「音が聴こえないって本当か?」
確認したいのはそれ。
本当ならいつから。
まさか初めて見た時から聞こえなかったというのか。
だとしたらつくづく天才野郎だ。
音が聴こえない中で俺を虜にさせたのだから。
「うん。 変かもしれないけど。 始めはね聞こえるんだ。 でも途中から、集中すればする程、その演奏に乗り込む程、奏でた音は消えてしまう」
正直言うと今でも信じられる話ではない。
集中すれば、乗り込めば聴こえなくなると言っているのだから。
「日常では?」
「聴こえないのは僕の演奏するピアノの音だけ、指が叩く音も鍵盤が沈む音も聞こえるのにね」
そんなことがあるのだろうか。
そう考えさせられてしまう。
「だから、毎報コンクールは出ないよ」
自嘲気味に笑う有馬の顔を俺は見てることしかできなかったのだった。
次回はかをりのお見舞い&ラッキースケベ場面ですね。
オリ主を同行させますが椿の記憶抹殺キックを受けさせるべきか……悩む…φ(-`Д´-*)