やはり一人称だと主人公の熱さは出せるかもしれませんが、これまで書いてきた作風によってギャグ寄りにしたい欲求に駆られるんですよね。
まぁ、そんな感じですがお楽しみください。
大国ラルマニオヌは国が始まって以来の大混乱を極めていた。
それもそのはず、これまで奴隷として扱ってきたシャクコポル族が反旗を翻したのだから。
だがそれはレワタウとカルラの尽力により、一旦は回避された。
ギリヤギナ族だけでなく、シャクコポル族も絶対に正しいとは言えない。
話し合いの場を設けるべきだと諭されたからだ。
そして話はシャクコポル族の村へと戻る。
レワタウが城に戻ってからのシャクコポル族の村ではこんな話し合いがあった。
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「村長、我らにギリヤギナ族との対等な話し合いの席を設けようとしたカルラ皇女が捕えられているというのに我らが何もしないのではいけないのではないでしょうか?」
一人のシャクコポル族の少年、一族の中では抜きん出た強さを持つレワタウ。
その彼が信じ、彼と同じ夢を見ているカルラ皇女が捕えられたという情報に、村長宅に集まった者たちが話し合っているのだ。
「すでに一度は死を覚悟した我ら。
レワタウやカルラ皇女のような、誰もが当たり前に幸せになれる未来を見つめている若者のために、この命を燃やしつくすのは惜しくはありませんぞ!」
シャクコポル族の男衆は元々この戦に命を捨てる気でいた。
勝ち負けに関係なく、すべては未来を担う自分たちの子や孫のために。
だがそれでも家族を愛し、老いて死すまで共に居たいと思っていたのも事実。
それゆえに誰もが一番望む形の未来を提示したレワタウと、その友であるカルラ皇女を救うためならば死を覚悟出来る。
それは共存という素晴らしき未来を示した二人に命を預けたようなものだからだ。
死にたくない、だが彼らのためならば自らの命を犠牲にすることすら厭わぬ、二律背反するようだがどちらもシャクコポル族の総意であるのだ。
「……ふむ、確かにのぅ。
儂もカルラ皇女には会(お)うたことはないが……レワタウがあそこまで言うのじゃ。
何故か信じてみたくなるのぅ」
幾度も先ほどのレワタウの言葉が思い出される。
未来を担う子供たちの中にはレワタウも含まれているし、すでにシャクコポル族の中にはギリヤギナ族も未来に含めて考えている。
レワタウの理想、誰もが幸せな未来にはそんな誰もが笑い合える可能性が含まれているのだ。
「ゲンジマル殿」
村長の視線の先には先ほどから黙考を続けていたエヴェンクルガ族の英雄がいる。
「……うむ」
ゲンジマルもこの戦に迷いがあった。
武人としての『誇り』、戦を起こす『義』、守るべき『家族』。
それらを背負っても、何度も戦を経験してきたゲンジマルは決定的に何かが足りないと感じていた。
レワタウの言葉。ゲンジマルはそれを繰り返し心にしみこませていた。
「某は……、これまで幾つもの戦場を経験しているが今回の戦には迷いを感じていた。
何故か分かるか?」
それまでずっと黙っていたゲンジマルの発現に集まっていた一同は静まり返る。
「先ほどレワタウは言った。
ギリヤギナ族の誰もが悪なのではない、互いを知ることが出来ないこの境遇こそが悪なのだと。
それは某の考を見抜き、某の迷いは全てが悪ではないからと気付かせる言葉だった」
少し前までは剣奴としてこの中の誰よりも過酷な境遇だったレワタウが心から信じていった言葉はゲンジマルにも届いている。
「確かにギリヤギナ族はシャクコポル族を奴隷として扱い、侵略を繰り返し、戦うことしかしない。
だがレワタウは言ったのだ。本当にそれだけなのだろうか? と。
それに気づいたのは剣奴だったレワタウなのだ」
そこで一旦口を閉ざし、時間を置く。
皆それぞれにその言葉の意味を深く考える。
「某は気付かされた。
ギリヤギナ族が犯した最大の罪は無知であることを恥と思わないところだと。
だから戦を仕掛けた。死を覚悟した。
しかし、その戦を止めるために話し合いの機会をくださったのはレワタウの友、ギリヤギナ族のカルラ皇女様はなのだ」
それぞれに思うこともあるのだろう。
だがそれでもゲンジマルの言葉は静かながらその場の全員の心に届くようにゆっくりと言葉を紡ぐ。
すでにゲンジマルの心に迷いはないのだから。
「ならば迷うこともあるまい!
その皇女様が、シャクコポル族と対等の関係を築こうとして捕えられたというのなら、我らが立ちあがらずしてどうする!
改めて某は宣言しよう。義は我らにあると!!!」
エヴェンクルガ族の力を借りて、たとえ自分が死んでも子や孫のためになる未来を作ろう。ギリヤギナ族を滅ぼそう。
そんな考えで凝り固まっていた先ほどまでの心はすでにレワタウが打ち砕いている。
ゲンジマルの言葉が皆の心に届くのはそう難しいことではなかった。
「そうじゃのぅ……。
ゲンジマル殿、改めてこの場にいてくださり感謝いたす。
儂らはこの度の戦に新たな義を見出した。
ギリヤギナ族を滅ぼすのではなく、友として、手を取り合える関係を築く。
そのために尽力してこそ、儂らの子どもたちに語るのも恥ずかしくない平和な未来と言えるはずじゃ」
その時全員の心が一つになった。
守るための戦い、その守る対象にギリヤギナ族と共存できる未来も含まれたのだ。
「ゆくぞ! 皆の者!!
我らがカルラ皇女と同胞レワタウのためにもここで立ち上がらなければ今度こそ完全に誇りを失ってしまう。
尊厳のない生き方とは決別した我らの底力を見せる時は今じゃ!!!」
シャクコポル族とは言え、誇りはある。
レワタウが目覚めさせた一族の誇りを、村長も思い出していた。
かつての自分というものを。
物事の善悪をきちんと主張する正しさを持っていた心を。
これは己の心を――未来を守るための戦いなのだから。
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村長の言葉が響いた時、村長宅の裏手には二人の少年の姿があった。
「……聞いたかハウエンクア」
「おいおいヒエン。
僕のこの立派な耳は飾りじゃない。
ちゃんと聞こえていたさ」
この村の誰よりも、尤も近くでレワタウと言葉を交わしていたヒエンとハウエンクアである。
二人はまだ幼いという理由からこの戦には参加させてもらっていないが、それでも物心ついた時からレワタウを慕い、ひたすらに剣の腕を磨いてきている。
幼いからという理由で戦に参加できない理由に納得できるはずがないというものだろう。
そうして何か自分たちに出来ることを探しているうちに村長らの話を盗み聞きしていたのだ。
だが結果としては二人の予想以上の話が聞けたことになる。
「以前兄さんが言っていた皇女様が囚われたそうだな。
勿論このあとどうすればいいのか分かるな?」
「ふっ、愚問だよヒエン。
僕はこの日のために腕を磨いてきたのさ。
これまで溜まった怒りをぶつけるべき相手が出てきたというのに立ち上がらないようでは男じゃないさ」
二人は腰に提げたナイフを抜く。
まだちゃんとした剣を持たせてはもらっていないが、日常生活にも役に立つということから唯一普段からの所持を許された彼らの武器だ。
「某はエヴェンクルガの英雄ゲンジマルの孫にして、シャクコポル族の未来の英雄レワタウ兄さんの弟だ。
これより自分の誇りにかけて、レワタウ兄さんの助けとなるよう行動することを誓おう」
「じゃあ僕はレワタウ兄さんとカルラ皇女様の目指す両種族共存の未来を信じ、この命を懸けることを誓おう。
いつの日か分かり合える日が来ると信じて耐えてきたレワタウ兄さんと皇女様の夢を壊すような悪漢を観過ごすのは僕自身の義に反するからね。
シャクコポル族にも義はあるんだ。ギリヤギナ族にもあるように」
そうして村長宅から離れ、自らの足で王都へと走り出す。
これを見た者は、子どもの決意などたかが知れていると思う者もいるだろう。
いや、むしろ幼い二人が出ていくのを止めるべきだ。
だが止められない。二人は真剣なのだ。
それだけ心から信じているのだ。
ここで止まったら心が死んでしまうのだから。
自分たちの兄レワタウと、その兄が信じるこの国の皇女の言葉と夢。
誰もが当たり前に幸せで、当たり前に平和に暮らせる未来、なんと素晴らしいものか。
この国の平和を愛するごく普通の一般の民ならば二人の少年の気持ちが理解できるだろう。
だから二人は走り出す。すでに二人の夢でもある『共存』という未来を掴むために。
誰もが幸せな未来を望むことこそが『生きる』ことになるのだから。
さぁ、ハウエンクアの活躍はこれからだ! 原作のような悪いだけの小物はもう終わりだ!
原作突入時にはアルルゥにときめき、誰に対しても優しく、
上からの命令を「いやいや、幾らなんでもその拡大解釈はおかしいだろ!!!w」なツッコミを入れるほど曲解しないキャラにしなければ!
原作の主人公にして他国の皇であるハクオロを連れてこいと言われてトゥスクル国に攻め入った時、
「別に生きたまま連れてこいとは言われてないし、ちょっとくらい壊れててもいいよねぇ~」
と言いながらハクオロを殺そうとしていたのには大爆笑でしたww
もう、そのシーンが本当に大好きなんですよ♪ アルルゥを容赦なく殺しちゃうところも切れたハクオロにビビりまくる小物感も♪
でもそこを変えてしまってはハウエンクアのファンは増えないような……。