――そこで起こった意味不明の事件とは
「いやあ、今回のジャンルはホラーですか? タイトルがホラーっぽいですね」
「ちげえよ。というかお前は話初めに入ってくるな」
「いいじゃないですか、別に」
「今回はホラー要素0だからな? 確かに今後、ホラー作品がでるかもしれないけど」
「まあ、いいでしょう。馬鹿な先輩は放っておいて、」
「............」
「なんですか? 黙り込んじゃって」
「なんだよ」
「今回の物語は、天使です」
「意味わからねえよ。天使? 生憎、今回はジャンルしか知らされてないからわからないな」
「いや、天使のような妹と落ちこぼれの兄の物語です」
「兄は悪魔じゃないんだよな?」
「はい。いや、まあ悪魔役もいると思いますけれど。たとえば天使の妹とか――」
今日は雨だ。
豪雨。
ああ憂鬱だ。うっとうしい。
外は薄暗く明るい。雨の日って面白いよな......。
ちなみに、俺の自己紹介をぱぱーっとしておこう。
19歳。高校は卒業したが、大学に行っていない。別にいいじゃないか、行かなくても。
趣味はエアガンをどっかに乱射すること。
それで、実家(この町だが)から離れ、独り暮らし。
まったく......憂鬱だ。
ピンポーン、といきなりインターホンの音が鳴った。
なんだ?
こんな豪雨の日に。宅配なんて頼んでいませんよ?
隣の家の方ですか?
ぼろいこの家にくる奴なんてそもそもいるか? まあいいか。
どちらさまですか――――――
「お兄ちゃん!」
「うおっ!?」
何に「うおっ!?」かというと、別に『妹』が来たから興奮したわけではない。
ドアを開けた瞬間に、中学生なりたての(容姿は小学五年生)妹が思いっきり俺の腹にタックルしてきたから、それに応じて息が吐き出された――要は、肺の空気を吐き出させられた。
「お兄ちゃん!」
「な、なんだ......!?」
可憐。
俺の妹――こいつの名前だ。
「なんの用......ってぇ!!」
おいっ!
「お前、ビショビショじゃないか!」
「うん......」
そんな状況で部屋に上がってくるんじゃない。
あのクソ親め......傘でも持たせておけよ。折りたたみ傘くらい誰にでも持たせられるだろうが。
「で? なんの用だ、可憐」
「お、お兄ちゃん!」
おい、その言葉を連呼してると、まるで兄妹ラブコメ小説みたいじゃないか。
やめろ。
「その......」
......。
あれ、
可憐って、こんなに可愛かったっけ?
容姿がかなり変わっていた。
どうやら中学校帰りだったらしい。セーラー服を着ている。
だが、
こんなに可愛い顔していたっけ?
見ないうちに相当変わっていたようだ。
たぶん、義理の妹とか、他人だったら、『天使』と言っているだろうくらいに可愛い。
「と、泊めてくれるかな......?」
――――――はい?
「いや、聞き間違いか? 『泊めさせてくれるかな』って聞こえたけど」
「そうだよ、お兄ちゃん。一文字も間違ってないよ?」
「ちょっと待てよ。母さんとか父さんに連絡しないと駄目だろ」
「いや、いいの。私、お兄ちゃんの家に泊まってくるね、って言ってきたから」
どうして、そうなるんだ......?
まるで、まじで兄妹ラブコメじゃねえか。
「とりあえず、ほら、これで拭いておけ」
タオルをひょいっと可憐に渡す。
セーラー服はびしょ濡れで、なんというか、見苦しい。
「ん? いいよ」
が、可憐はタオルをスルーした。
「おいおい、待ってくれよ。俺の部屋は見ての通り汚いが、さすがに濡らされると困るな」
「え?」
キョトンとする可憐。
キョトンじゃねえよ。無駄に可愛かった。
「え?」
え? に対して え? を言う、日常会話でありがちな会話を、やはり行ってしまった。こうなると、かなり再開するのって難しいんだよね。そういう雰囲気になっちゃうんだよね。
「お兄ちゃん。風呂かして。だからタオルいらない」
こいつ普通に再開しやが――
え!?
今なんて!?
「お、おう!?」
「お、おう......?」
「いや、風呂だって? お前......」
恥じらいないな、こいつ。
「まあいいか。そんじゃ、俺は散歩してくるよ。そのうち入っておいて」
立ち上がって玄関のほうへ歩く。
さて、買い物にでも行くかー......と、思っていると、
「待って......」
と、可憐が俺を止めた。
パシっと手をつかんで。
「私、一人嫌だ」
その意味をわかりかねたが、まあいいだろうと風呂場へ目をやらないように気をつけつつ、いつも通りぼーっとしていた。
「お兄ちゃん、上がったよ」
そういう報告はいらねえよ......。どんだけラブコメにしたいんだよ。
って―――
「おい、可憐お前――、」
こういう場合、ラブコメならたぶん、俺のYシャツを着ていたり、服を着ていなかったりだと思うが、さすがに違う。
そんなに可憐は馬鹿じゃない。俺もそういう可憐は欲しくない。
まあ、結局はラブコメ要素だが。
布団を敷いていた。
その動作のどこがラブコメ要素って、
そうだよ! 俺って独り暮らしじゃん!
「あ、そうそう、じゃあ俺はソファーで寝るから可憐はそれで寝てね。嫌だったら交代するけど」
布団、一つしかねえよ。
可憐もどうせその気だろうし、別に聞くまでもなかった質問だったが、
「え?」
またキョトンを見せた妹。
「お兄ちゃんと一緒に寝たい」
そこから先は完全に兄妹ラブコメだったので、カット。
一応、可憐が寝るまで待って、可憐が熟睡モードに移行したら、俺はソファーへ移動した。
暴力的な妹ではないが、一緒に寝たということにしておかないとまずい気がするから、朝になったらまた布団に戻ろう。
夜9時。
親、起きてるかな。
自宅に電話をした。
「もしもし?」
意外と寝ていなかった。
「おい、可憐に傘持たせておけよ。びしょ濡れでこっちきたぞ」
「ん? いや、ちゃんと持たせたわよ」
え......。
なら、可憐のバッグには......、でもねえ。入ってない。
「というかそっちにいるの? 帰ってこないから心配したのよ」
「え? 可憐に言われなかったのか? 俺の家に泊まるって言ってるけど。というか妹が帰ってこないのに、こっちに連絡しないのはどういうことだ」
「いや、ああ見えて無邪気だからさ、どうせ戻ってくるだろうって」
「............」
馬鹿だこいつ。
「誘拐にでもあったらどうするんだよ」
「あら、可憐を気にしてるの? 変わったわね」
「うるせえよ」
でも、なんだ?
「なあ、なんか最近の可憐に異変ってあったか?」
異変。
こういう場合、可憐に何らかの事情があるのだろう。
だから、
俺の家に逃げてきた――?
「ああ、あるけど」
ゴツッ!!
と、そう音が聞こえてきたときには、既に俺の体は床に伏していた。
「だ、」
痛い。
CQCか? 腕を背中に回され、その上、押さえつけられている。
なんだ、関節技が
「誰だ!!」
後ろに誰かいる。正確には、上に。
誰か、
「ん、失礼。私は、自殺者取締り役員です」
なんだ、それ。
私口調だったが、そいつは男性だ。
「お前! 何が言いたい!」
「いや、貴方の妹さんを取り締まりにきたんですよ」
「!?」
なんていった?
「なんだよそれ!」
「自殺者取締法」
「聞いたことねえよ! 出鱈目言ってんじゃねえ!」
自殺者? 俺の妹と何が関係してるっていうんだよ。
「そうでしょうねえ。これは、裏社会の法律ですから。まあ、貴方の妹さんは、今日、自殺を図りました」
「!?」
「それで、私たちが回収した、と」
「どういうことだ」
「ですが、逃げられてしまって。ですから、再び回収に来ただけですよ」
「可憐が自殺をした?」
「はい、そうです。いや、まあ、死んではいませんが」
「どんな事情だかしらねえけど、可憐は渡さねえ!」
こいつ、怪しすぎる。
「ぐ、あああああああああ!!」
「渡さないと言うのなら、別にそれでいいですよ。貴方を抑えるまでですから」
肩が外れそうなくらい、おもいっきり間接を曲げられていた。
「それでは、納得しないというので、経緯を話しますよ」
「いらん!」
「貴方の妹さんは、学校で虐めにあっていました。物を取り上げられたり、突然殴られたり、と」
......そういえば、折りたたみ傘もなくなっていた。
「そこで自殺を図ったんですよ。屋上に無理やり上がって、飛び降りようと」
「もう止めろ」
「そこで、貴方の妹さんを無事に保護。回収しました」
自殺者取締法に基づきましてね――と。
「何だよそれ! 保護したならそれでいいじゃないか! どうして追っかけるんだ!?」
「いやいや、自殺の阻止はしようと、保護といおうと、違いますよ。意味が」
「............」
「保護は体――つまり、命だけ。自由は保護しませんよ」
「!? お前、何だよその法律!!」
「おお、察しがいいですね。そうです」
「一度死んだ人間が、ここで自由になれると思わないでください」
「可憐をどうするつもりだった! お前らは、自殺者をどう扱ってきた!!」
「社会に貢献して頂きました」
たとえば――と、そいつは続ける。
「不発弾の分解や、殺戮の場となった裏路地の死体のお掃除ですとか、テロの爆弾を解除したり」
「てめえ!」
「いやいや、ですから、自由は保護しませんって。一度死んでるんですから」
命を無駄に扱おうとしたのは、紛れもなく自殺者でしょう――と、そいつはいいやがった。
「だったら、なおさらだ。渡さねえ。可愛い妹を地獄に渡せるかっ!!」
パァン!
ぎゅんっと、体を回し、思いっきりそいつの顔面を殴った。
いってえ。
こいつ、ヘルメットしてやがるし、ゴーグルもしてる。
だが、かまわず、何回もそいつの顔面に拳を叩き込む。
そいつはすぐにノックダウンした。
あっけなく、戦闘は終了した。
翌朝。
空は青かった。
ちなみにだが、外に放り出しておいたそいつは、もう二度とこなかった。
「可憐」
「なに? お兄ちゃん」
「何かあったら、俺に相談しろよ? 何でも答えてやる。何でも買ってやる。だから、何も自分ひとりで抱え込まなくてもいいんだぜ?」
「うん! ありがとう、お兄ちゃん!」
結局、手を振って可憐は自宅へと帰っていった。
ありがとう、可憐。
お前は、勇敢な奴だな。
自分の命を絶つほど、勇気のいる行動はない、と俺は思った。
あとがき
どうも秋和です
今回のネタバレです
自殺者取締法は、まあ説明通りです
なぜこんなあっけなく戦闘が終了したのか、
可憐が敵の頭をエアガンで撃ったため(パァン! と本文にも書いてあります)、関節技がとかれ、あっけなく終わった。
ちなみに、脳あたりをかなり強いエアガンで撃ったので、多少の記憶喪失が起こり、そいつは回収物(可憐)を忘れ、戻っていった。そのため、もう二度とくることはなかった。
最後に、主人公は可憐に対して「ありがとう」と言っていましたが、『助けてくれてありがとう』という意味です