「おう兄ちゃん。変わった格好してるじゃねえか」
「どうやら無事に恋姫の世界に来られたようだな」
人の死因で爆笑する様な神様胡散臭くてあんまり信じていなかったんだけど、ホントの事言っていたんだな。
今までになかった力を感じるし、ほっと一息。
出会い頭に黄色い布を巻いたチビデブノッポの三馬鹿にも出会えたことで確信するのもあれだけどね。
「……はぁ?何言ってんだ、こいつ。どうやら格好だけじゃなくて頭もおかしいようだな」
「アニキ。あっしもそう思いますぜ!」
「……オラはばらべっで、よぐわがんね」
「ちょっといいかな?」
3人の話し合いに割って入る。
「何だよ」
「あんたたち盗賊だよな?」
「だったらなんだ」
「金目の物を寄越せば命だけは助けてやるけどどうする?」
「アニキ。コイツ確実に頭おかしいですぜ!こっちは3人あっちは1人。泣く子も黙る『黄色い悪魔』と呼ばれるアッシ達のことも知らない変人なんてチョチョイのチョイですぜ!」
「ぶはっwwwwだせえwww」
「お前、むがづぐんだな」
ひどい訛りのデブが脂肪を揺らして、殴りかかってきた。
「喜べ、一発だけ受けてあげよう」
「ごいづ、でごだえが無いんだな、変なんだな」
「そりゃあ効かねえよ。ヨガだから」
一度言ってみたかったんだ、このセリフ。
…少し違っちゃったけど。
ホントはヨガじゃなく、スーパーヨガなんだけどね。
しかも全く効かないわけじゃない。
ただデブの攻撃がノロマで雑魚かっただけだ。
「まだやるか?」
「打撃が効かねえなら剣で斬り殺すんだ。お前ら、一斉にかかるぞ!」
人は争わずにはいられないようだ。
実に悲しいものだ。
「しょうがない。ヨガフレイム」
口から大きな炎を吐き出し、3人まとめて焼いた。
「うわああああああああ」
「ぎゃああああああああ」
「びえええええええええ、なんだなー」
限界まで手加減したことで、即死には至らなかったようだ。
すぐに死ねないので少し可愛そうになったけど、自業自得だからしょうがないね。
「覚えていろ、今に第二、第三の俺達が……」
「ヨガファイヤー」
物騒なことを言い出したので、口から小さな火の玉を出してとどめを刺しておく。
ヨガファイヤーこそ原点にして頂点なのだ。
これにも耐えられるなら俺の奴隷として働いてもらうつもりだったが、さすがに耐えられなかったらしい。
死体からは大きめのナイフが、あいつらが乗っていた馬3頭には当面の食料を見つけたのでありがたく頂いておく。
「ちょいと待たれい!そこの庶…人…?」
振り返るとそこには3人の女性がいた。
偽名は忘れたが、趙雲、程昱、郭嘉だ。
「俺か?どっからどう見ても善良な庶人だろう」
「おいおいニイチャン。そんな骸骨を首からぶら下げている癖に善良な庶人ってことはねーだろ」
程昱の頭の上の人形が喋った。
名前なんだっけ。
「風の言うとおりです。さすがにその格好ではちょっと…」
郭嘉はナチュラルに人形を無視していた。
程昱哀れなり。
いい機会だからここで例の真名騒動も起こしておく。
何かあっても逃げればいいしね。
「そこの風っていう人形には人間の最新ファッションはわからんだろうさ」
「……ひへっ!?」
程昱が驚いた顔をした。
「今、真名を…っ?!」
「いやでも、人形だと思って呼んだみたいだしノーカンではないのか?」
「確かに……」
郭嘉と趙雲がこそこそと意見交換をしている。
「どうかしたのか?」
わざとらしく質問する。
来るなら来やがれってんだ。
話し合いが終わったらしく、趙雲が答えてくれた。
「今お主が呼んだのは真名だ。まさか異性が相手の真名を呼ぶ意味がわからんわけじゃあるまいな?」
「は?」
なんか変な反応じゃないか?
ここで真名を呼んだことで即キレるんじゃなかったっけ?
「何を間抜けな顔を晒しているのです。で、どうなんですか?」
郭嘉に詰め寄られる。
「正直言ってわからん。俺の知っている真名は親しくないものが口にすると斬り殺されるほど神聖な名だったんだけど…」
「斬り殺される…?なんですか、その物騒な文化は…。呼んだだけで殺されるなんて理不尽なのはこれまで聞いたことがありません」
郭嘉がジト目で俺を見てくる。
ちょっとゾクゾクする。
「お兄さんは、どうやら見た目通り全然文化が違うところから来たようですねー。この国での真名は親しい人が呼ぶ公式のアダ名みたいなものなのですよ。同性なら友達の印、異性なら恋人の印として交換したりしますねー」
「つまりお主は風を恋人と思って…」
「いやいやいや。ちょっと待って。俺は人形の名前だと思っていたんだし無効だよね!?初対面の人をいきなり恋人呼ばわりとかないわ」
「冗談でござるよ」
焦っていると趙雲にネタばらしされた。
どうやらからかわれたらしい。
「じゃあ、改めて自己紹介させてもらおうか。えー…あー…姓はホンダで名はヨガ。真名はダルシムだ。よろしくな!」
ダルシム以外の名前がパッと出てこなかったので即興で名前を決める。
「おいおいニイチャン。人の話ちゃんと聞いてたのかよ。異性に真名は特別な関係じゃない限り御法度って言っただろう。ちなみに俺の名前は宝慧だ。よろしくしてやるよ」
「ああ。そうだったな。ダルシムは取り消しね。よろしく、宝慧」
「私は程立ですよー」
「私は郭嘉です」
「趙雲だ」
偽名はどうしたんだよ、偽名は。
「自己紹介も終わったし、質問させてもらうけど、なんで俺に声を掛けてきたの?」
聞きたいことは聞いとくべし。
聞くことは恥ではない。
聞かない事こそ恥なのだ。
「うむ。最初は盗賊に絡まれているようだったので、助太刀するつもりだった。しかし、ホンダ殿が摩訶不思議な技であいつらを圧倒しておったのを見て、気になって声を掛けたのだ」
「まあ見た目が圧倒的でしたし、星が気になるのも当然ですね」
「そんなにイケてるかな俺」
郭嘉に褒められちゃった。
でへへへへ。
「良い意味とは限りらないのにお兄さんはプラス思考ですねー」
「俺にはこのドクロの首飾りと神秘的な肉体があるからな」
とりあえず洗練された筋肉をアピールしてみる。
俺さん、ナイス筋肉でーす。
「ホンダ殿は将来大物になるかもしれませんね」
「風もそう思うのですよ」
「私にはまだ判断つかないな。悪い人間じゃないことはわかるが」
と郭嘉、程昱、趙雲。
なんかまたヒソヒソやっているので、盗賊から奪った食料でも摘んで待つか。
あったのは握り飯とメンマだけか。
弱ファイヤーで軽く炙るとしよう。
「ヨガファイヤー(弱)」
おめでとう!
握り飯は焼きおにぎりに、メンマは炙りメンマに進化した!
「もぐもぐ。おお、この炙りメンマはおかずとしてかなりいい仕事しているな。さすが俺。料理人としてもいけるかもしれん」
「ホンダ殿!!」
趙雲が怖い顔をしてこちらにやって来た。
「どうかしたか?」
「その手に持っているのはもしや…」
「焼きおにぎりと炙りメンマだが…?」
「よよ、よろしければ一口ばかり味見させていただけないでしょうか?!」
顔が怖い。
そういや趙雲ってメンマ大好きなんだったな。
「なんか怖いし食いかけで良ければ、一口と言わずに全部あげるよ」
「なんと!では早速…」
趙雲はひったくるようにしてメンマを受け取り、口に運ぶ。
目を閉じながら、じっくり味わっていた。
「ホンダ殿!」
「はい」
さっきよりも顔が怖い。
まさかとは思うけど不味かったのか?
「この趙子龍、今この時より貴方様を主と呼ばせていただく」
「星!?」
「星ちゃん?!」
その言葉に郭嘉と程昱も心底驚いているようだ。
「おいおい、大げさな」
「いえ。この炙りメンマを食べて確信しました。私は貴方様に仕えるために生まれてきたのだと」
「おいおいおい、更に大げさな…。2人とも趙雲に何とか言ってくれよ」
郭嘉はため息をつくと、真面目な顔に変わった。
「星は一度言い出したら、メンマ関係のことは聞かないのですよ。でも、見る目はあると思っています。よろしければ、この郭嘉も側においてもらえないでしょうか。知略には自信があります」
「2人とも風だけ除け者にしないでくださいよー。風もお兄さんに仕えるのは面白そうだと思っていたんですから」
「おいおいおいおい」
超展開過ぎてついていけないよ。
しかも星だけでなく3人ともっていうんだから、何がどうなっているのやら。
見えない力が働いているのかもしれん。
それか俺がイケメン過ぎるかのどちらかだな。
多分後者だろう。
まあ冷静に考えれば恋姫の世界にせっかく来られたんだから、一旗揚げるのも悪くないかもしれん。
ここが俺にとって大きな分かれ道な気がするし、男ならどーんといってみようか。
「趙雲、郭嘉、程立。皆よろしくな」
「私のことは星と呼んでください、主」
「私は稟と」
「風のことは風と呼んでくださいねーお兄さん」
「ええっ。でも恋人以外の異性に呼ばせるのはダメだって…」
「主君はまた別なのですよ、主」
正直、その仕組みが未だによくわかっていないんだけど…。
「まあいいか。よろしくね、星、稟、風。とりあえず人材を集めながら、腰を落ち着けられる拠点探していこうか」
ダルシムの冒険はこれからだ!
つづけ(願望)