IS<インフィニット・ストラトス> -CODE:Zero- 作:明智ワクナリ
人生を一言で表すのなら、それは先の見えない闇と言ったところだろうか。
一寸先は闇、まさに人生そのものを指すことわざだ。
一歩踏み出すたびに道というのは分岐に
繰り返される選択を正解か不正解かもわからないまま選び続け、見えないゴールへとひたすら道を
そしてそれ故に思うこともある。この先の未来が見えていたなら、と。
もしも未来が見えていたならあんなことはしなかった、もしも未来が見えていたなら違う選択をしていた、もしも未来が――――――
そうすれば人生に何の苦労もなく、何の不安もなく生きていけたことだろう。だが物事はそう都合よくはいかない。
人間に未来を予知できる者は居ない、一寸先の闇を光で照らせる者は誰一人として。今までも、そしてこれからもそんな人間は現れないだろう。
だが、いつの世も人間はこう思うに違いない。
――――『一体、
◇◆◇
「どうしてこうなったんだろうなあ…………」
空は晴天、雲一つない鮮やかなコバルトブルーが視界を埋め尽くす。そして
そんな清々しい春の訪れを肌で感じつつ少年―――
「全員揃ってますね~。それではSHRを始めま~す」
視線を正面に向ければ教卓の前でこのクラスの副担任―――
その理由は彼女の容姿に問題がある。
真耶の容姿は周囲の生徒たちと比べてもあまり大差がない、つまり彼女は全体的に見てやや幼いのだ。やや低身長気味で顔立ちは一〇代を思わせるようないわゆる童顔、声も二〇代を過ぎた女性のソレとは比べ物にならないほど可愛らしい。身に着けている服装は大きめのサイズで、かけている眼鏡もサイズが合っていないのか動く度に若干ずれたりしている。
以上の点を総合した結果、彼女の姿は教師というより『ちょっと背伸びして大人っぽい服装をしてみた女の子』という風にしか見えないのだ。
あれで本当に教師なんだろうか?と疑問に思うが場所が場所だけに納得する他ない。その辺の事実確認をしてみたい、という好奇心を胸に仕舞いつつ真耶の話に耳を傾ける。
「それでは皆さん、これから一年間よろしくお願いしますね」
「「「…………」」」
笑顔を浮かべて優しげに話す真耶。嬉しそうに見えるのは演技などではなく本当の気持ちから来るものだろう。
しかし教室中は冷めたように無言だった。本来ならば何らかの形で返されるであろう生徒たちの返事はなく、まるで真耶の声が聞こえていないかのように全員が無言を貫いている。この状況を第三者に見せたならば教師がイジメの対象になっていると誤解することだろう。それほど異常な光景が広がっているのだ。
「あ………え、えと。それじゃあ自己紹介から始めましょうか。じゃあ、その、出席番号一番の人から順番にお願いします」
場の雰囲気に気圧された真耶は、
この状況からわかるように今日は高校の入学式である。新しい環境で新しい仲間たちとの日常が幕を開ける記念すべき日であり、また生徒たち自身の成長を喜ぶべき素晴らしい日だ。誰もが喜び、そして祝福するに違いない。
それはあくまでも弥生を含む三人を除いて、だが。
教室の空気は今までに感じたことのない異様な緊張感で包まれている。それが期待や不安が入り混じった入学初日の雰囲気ならばよかっただろう。
しかし弥生の感じているソレはそのどれにも当てはまらない違和感だった。それもそのはず、何故ならその違和感とは周囲に着席している生徒たちの視線だからだ。別に一人や二人の視線など入学初日で感じるのは当然なことであり、その程度であるならば弥生自身も気になどしない。
だが、クラス全員分の視線を集中して受けるとなれば話は別だ。大衆の前に出るような人間であるならばこの程度の視線は気にもしないだろうが、そんな大層な仕事をしているわけでもない弥生にはかなりの圧力が感じられた。弥生が
何故ならば――――――
――――――弥生を含む三人以外、全員女子だからだ。
周囲を見れば女子の姿ばかり、男子の姿は残り二人を除けば『影』の『か』の字すら見当たらない。男子三名に対して女子二七名、もはや意図的にクラスの振り分けをされたようにしか思えないほど、圧倒的に女子率が高すぎるのだ。
「織斑くんっ。
「え?あっ、はい!?」
と、そこで最前列のど真ん中に座る少年が真耶の呼び声に慌てて返事をした。驚いた
だがそれも仕方のないことだろう。周囲の女子たちは何も感じていないように――緊張ではなく好奇心なら感じているだろう――見えるが、少年にとっては今までに感じたことのないであろう空気に緊張するのは当然だ。そんな年頃男子の精神にマイクロ単位で気付いていない真耶は、
「あ、あの、大声出しちゃってごめんなさい。で、でもね、自己紹介で『あ』から始まって『お』で次織斑くんの番なんだ。自己紹介してくれるかな?ダメだったり、しないよね?そ、それともやっぱりダメかな?」
見る限り真耶は男性に対してあまり
「ちょっ、落ち着いてください先生。やります、自己紹介やりますからそんなに謝んないでくださいって」
「ほ、本当ですか!?本当にやってくれるんですね!?と、途中でやっぱりやめたーとか言っちゃダメですよっ!?」
ガバッと身を乗り出して少年の手を掴んだ真耶は、
更に注目を浴びて心底嫌そうな表情を浮かべるも、諦めたように席から立ち上がった少年は後ろを振り向いた。
「えーと…………織斑一夏です。これから一年間よろしくお願いします」
ぎごちない動きでお辞儀をする少年――織斑一夏は顔を上げるなり「うっ」と
その気持ちはわからなくもないのだが、おそらくそれは高望みというモノだろう。この見渡す限り女子の姿しか目に入らない空間でまともな自己紹介が出来るはずもない。むしろ
とはいえ彼女たちにそんな
IS学園、それが今弥生の
この学園はあらゆる国家に属さず、またあらゆる国家や組織の
IS学園の敷地の総面積は一般校と比べれると圧倒的に大きく、建造物や内部のシステム技術を合計すれば莫大な費用がかかっていることだろう。とてもだが一般校でこれほどの資金と技術を調達するのは現実的に困難である。
それを可能とするのはこの学園の運営を日本政府が主体で行っているからだ。IS操縦者の育成を基本とする専門学校という時点で
それにしても
IS、正式名称『インフィニットストラトス』が日本で開発されたことによって世界は大きく揺れた。未知数の戦闘力を
その結果、あらゆる
この条約を簡単に説明するのなら、『強力な兵器を自国で抱え込むのは不平等、自分たちにもそのISとやらの技術をよこせ。そして自分たちはISのことをよく知らないから操縦者を育成する学園を日本で設立しろ。運営費用?そんなもん知るか、元後言えばお前らがISなんてもの作ったのが事の始まりなんだから、資金面もお前らで負担しろよ』ということだ。
表向きでは平和を象徴とする条約として認知されているが、国家間で
日本政府が運営しているとだけあって窓から一望できる景色も広い。大小様々な建造物が立ち並び小さな町のようにすら見えてしまう。ここの一部に自分の収めた税金が使われてるのか、と思いつつ弥生は更にその奥に見える建物を見ていた。
距離が遠いため細部までは確認できないが、そのシルエットは近代的な構造のIS学園とは異なり、街中でなら大抵目にする一般的な校舎だ。
弥生は遠い目でその校舎を見詰めながら深々と溜息を吐く。それは弥生のかつての母校であり、本来ならばその校舎の教室で睡眠を
だというのに―――
「ほんと、どうしてこうなったんだろ?」
何故、このIS学園に入学する羽目になったのか?
事の
漢字にルビを振っていますが、『読み方がわからない』『ルビがあった方が良いのでは?』という漢字がありましたらぜひご連絡ください。
それでは m(_ _)m