the King Of Fighters NEW GENERATION 作:昆布さん
草薙明人「ROUND1 新しい世代」
沢田吉久「はじまるよ!」
私立並盛高校一年三組。
ただでさえただ事ではない校内でひときわ異彩を放つ空間である。
と、そこで退屈そうにしている栗色の髪に白いメッシュの入った少年が黒髪の赤いキャップを被った少年に
声をかけた。
「明人、面白いことねえか?」
「無い、いつもそれだな栄助は、面倒くさがりのくせに。」
そこにもう一人、茶髪の少年が話しかけてきた。いつも一緒にいる銀髪と黒髪も一緒だ。
「今日さ、新任の先生が来るらしいよ。」
「何!?本当か吉久!?弘、宏人、どう言うことだ!?こんな時期外れに」
栗色の髪の少年、九条栄助がびっくりして聞いた。今は五月、人事異動の月じゃない。
それに赤キャップの草薙明人が
「なんか訳ありなんだろ、いいじゃねえか、仲良くなれりゃそれでいいと思うぜ。」
それにもう一人の黒髪、山本宏人も頷いている。しかし銀髪の獄寺弘は後頭部でポニーテールのようにまとめた髪を振り乱し、隣にいる沢田吉久を指して
「おめえら!若大将にもしもの事があったらどうする気だ!」
と、彼らの父親たちの姿を彷彿とさせる叫び声を上げた。
『おめえら!十代目にもしもの事があったらどうする気だ!』
なんというか、弘の父は間違いなくこんな台詞を吐いている。吉久の父親に向かって。
ちなみに、弘は一般的な男性よりも荒っぽく、ガサツだがれっきとした女性だ。
「大丈夫だろ、そうなる前になんかあったら俺の草薙流がうなるぜ。心配すんなよ。」
明人がそう言って手にはめたグローブに入った日輪の意匠を見せつけた。
と、そこでチャイムが鳴り、
「おーいみんな席に着けー、今日からこのクラスの副担任になる先生がお待ちかねだぞー。」
と、冴えない中年教師の声が響いた。
さっきまで喋っていた彼らがどたばたと席に着くと黒髪の青年が入ってきた。
「じゃあ、自己紹介を。」
「はい、皆さん初めまして、僕の名前は蒼月楓、2007年生まれの25歳です、古典の担当とこのクラスの副担任、並びに剣道部の顧問をさせていただきます。仲良くしていきましょう、では。」
・・・・・
並盛町にある安アパートの一室の鍵を開けてその部屋の主である青年が帰ってきた。
「ふう…初日は疲れるな…」
そういってつけた照明に照らされた顔は黒髪の端整な顔立ち、並盛高校一年三組の副担任である蒼月楓だ。
布団、ガスコンロ、仕事用の机、一人分の食器、中古で買った箱形のテレビという必要最低限のものしか存在しない殺風景な部屋で彼は夕食を作りながらここに至るまでの過程を思い出していた。
部屋の隅に置かれた細長い包みは大切な愛刀疾風丸だ。
マフィア間の抗争に巻き込まれた楓はマフィア界最強の剣士の山本武と剣を交えた後、和解、ボンゴレファミリーに保護された。
そして、ボンゴレによって巧妙に偽造された蒼月楓という人間の戸籍と高校教師という職を手に入れたのだ。
「ご馳走様でした。」
食べ終わった食器を洗い、生ゴミを片付けて明日の仕事の用意をして眠る。
「兄さん、鷲塚さん、響さん…みんなどうしているだろう…」
およそ170年の時を越えてしまった楓はもといた時代でゆかりのある人間達に思いをはせると、ゆっくりと眠りに入っていった。
(あかりさん…)
意識が闇の中に消えていく直前に想ったのは二人で旅をしてきた陰陽師の女性、一条あかりのことだけだった。
・・・・・
翌日の並盛高校は一つの話題で持ちきりだった。その話題というのは言い出しっぺに曰く
「あの暴れ者の高山が瀕死体で見つかったんだよ!高山の奴うわごとみてえに右手が…奴の右手が銃に…って繰り返してるらしい!」
と言うことだ。
栄助はその話を聞いて明人達に校舎裏のポプラの木の下に集まってもらった。
他のクラスからも何人か集まってきている。
極限流空手の次期総帥、坂崎カイが自慢のさらりとした金髪を掻き上げ、隣にいる赤毛の少女に声をかけた。
「へえ…その噂は俺も聞いてるが、お前らがそんなことを気にするなんて意外だな。なあ、八神?」
赤毛の少女はクールにカイを一瞥すると明人に向き直り言う。
「明人、お前は父さん達に関係していると思っているの?」
「ああ、特に俺の親父、草薙京はクローンを量産されている。その中にはあの…なんつったっけか…あー…あの…」
何かを思い出そうとする明人に栄助が助け船を出す。
「K9999…あの…なんかのSFマンガの主役みたいな奴だ。25.6年前のKOFに出ていたクレイジーなバケモノだ。」
コード番号みたいだな。と弘が呟くと吉久が
「とにかく、右手が不気味に動いてる奴がいたらすぐ逃げよう。良いね?」
と締めくくり、それぞれが教室に戻っていった。
・・・・・
レイズ・Kはいつも苛立っている。
呑気にしている人間が気に入らない。
この青いグローブがないと言うことを聞かないこの右腕も気に入らない。
世界が、自分が、こんな歪んだ命をこの世に生み出し、一人残して死んでいった両親が。
全てが気に入らない。
「オイ。」
またか。とレイズはうっとうしげに振り向く。後ろにはガラの悪そうな長ラン短ラン様々な改造学ランを着た不良高校生達だ。
「なんだよ、うっとうしい。」
「兄ちゃん、金貸してくれよ。」
どう考えても17.8のそいつらに向けてレイズは言い返す。
「俺は15だ。お前らより年下なのに兄ちゃんなんて言われたくないね、命が惜しけりゃさっさと消えな、オッサン方!」
10人近くの不良共の先頭に立つ奴がピクリとこめかみを振るわせて言う。
「おもしろいな…ちょっといっしょに来てもらおうか。」
そう言う不良について路地裏に入ると同時に不良達の態度が変わる。
「じゃあ、有り金全部置いてってもらうぜ!やっちまえ!」
若干キレ気味に先頭が言うと他が一斉にレイズに飛びかかる。
しかしレイズは表情におびえどころか同様すら見せない。ただ、いつもの苛立ちを浮かべたままだ。
「うぜえ。」
白い髪が少しだけ青みがかる。それに気付かずに飛びかかってくる不良に向かって更に吐き捨てる。
「うぜえっつってんだろ。」
それでも向かって来る。
「だから…」
次の瞬間、レイズの白髪が全て深みのある青色に変わる。そしてレイズが吼えた。
「あっちへ行ってろォォォォッ!」
青いグローブに包まれた右腕が不気味に蠢くと巨大な腕に変化し、襲い来る不良達を一撃で吹き飛ばした。
「ひっ!」
「ば…バケモノ…」
「なんなんだこいつは!」
「うわアアアアアッ!もうやってられねエ!総長!俺は先に帰る!」
「バッ!バカ!勝手に逃げるな!」
4人が逃げ出そうとしたのに対して先ほど挑発していた総長が急に慌てだした。しかし、その4人を返す刀で薙ぎ払い、悲鳴すら上げさせずに意識を刈り取る。
「ゆっ!許し…」
「だァれが許すかよ、このゲスが…」
慌てふためいて許しを請う総長―高山―に対してレイズは冷ややかに右腕を向ける。
「テメェも逝っちまえッ!」
右腕が巨大な銃に変化し、銃口から大熱量の何かが吐き出される。
5発、6発!意識を失った高山に背を向けるとレイズは言う。
「命だけは勘弁してやるよ。」
彼の名はレイズ・K。K9999と同じくネスツの改造人間、アンヘルの間に生まれ、生まれたときから右腕に異能を宿した少年だ。
その翌日、高山がレイズにやられた話が並盛高校を駆け巡ることになる。
その惨劇を気配を殺してみていた14才の少年、白銀の髪に茶色のメッシュの入ったカイル・ロランジュは倒れた高山の近くでしゃがみ込み、彼のポケットから携帯電話を取りだして並盛病院に電話してやる。通話が終わると彼はひとりごちる。
「俺の同類か…」
・・・・・
九条栄助は郵便受けに白い封筒が二つ入っているのを見つけた。
一つを見ると父、九条翔と母、九条氷華からの置き手紙だ。
「なになに…?栄助、今日は隣町に新しくスーパーができたらしいからそこに行こうとお隣に誘われた。ひょっとしたらお前が帰ってくるまでに帰れないかもしれん。封筒に2000円入れておいたから吉久か誰か誘って食いに行ってこい…分かったよ。」
そう言うともう一つの自分宛の封筒を自室に置いてきて隣の沢田の表札のかかった家に向かい、インターホンを押す。
「綱吉さーん、吉久ー!メシ食いに行こうぜー!」
二人もどうやら夕食に困っていたようですぐに出てきた。
「やあ。栄助君も置いてけぼり?」
「ええ、免許持ってんの親父だけだから。今日はパオパオカフェのシフトも入ってないらしいし。」
談笑しながら知り合いのよしみで安く美味しい寿司の食べられる竹寿司に向かっていると唐突に何者かの銃撃が地面にあたり、土煙を発生させた。
「ウオラァッ!」
「当たるか!そんな大振り!」
銀髪に茶色のメッシュの少年―カイルに青い髪の少年―レイズがえらいことになっている右腕を突き出す。
その腕を見た栄助が驚きの声を上げた。
「あの右手…噂の…!」
「高山先輩をズタボロにしたって言う…」
「噂のバケモノか…」
大通りで暴れ回る二人に通行人が巻き込まれそうになる。
「綱吉さん、通行人の避難を。」
「栄助君は?」
俺の予想が正しければ…前置きしながら栄助が二人の所に近づいていく。
「あの力をとめられるのは俺だけだ。」
そう言うと白いメッシュはそのままに栗色の髪が水色になり、吸い込まれそうな漆黒の瞳が赤くなる。
力を解放した栄助が二人の所へ走り出し、左手を突き出す。その手が伸びている方向にはレイズ。
「止まれ!」
栄助の叫びに併せて空中を氷が走り、レイズの右腕が動かなくなる。
「何イッ!?」
「お前も…!?」
栄助を見て愕然とするカインに反対の右手を突きつけるとそれを勢いよく払い、炎の幕で自分の姿を隠すと素早く位置を変え、回し蹴りの姿勢を取り、そのまま回転する。
「レイスピン!」
靴底にスケート靴のような刃を生み出して斬りつけるとカイルはその臑をしたから突き上げて躱す。
「まだだっ!」
栄助がそのまま突き上げられた勢いを利用して反対の足で顎を蹴り上げた。
「ぐっ!」
素早く後ろに下がったカイルに向けて地面を凍らせながら滑っていく栄助に向けてカインは右手の平を向けて叫んだ。
「待て!俺はお前の敵じゃない!」
突撃をとめた栄助が驚いたように止まる。
「俺はあいつに襲われたから応戦していただけだ。休戦にしたい。ネスツの実験体の二世代目。」
「なんだとォ!?なぜお前がそれを知っている!?」
いきり立つ栄助を遮ってカイルは提案する。
「俺の名はカイル。カイル・ロランジュだ。お前と同じ、ネスツの実験体の息子さ。あいつもな。まあ、飯でも食いながら話をしよう。」
それを飲んだ栄助が無理矢理レイズを連れて行くのを後ろから見ていた綱吉は吉久に聞いた。
「大丈夫かな、俺の財布…」
切実な父親の問いに息子は答える。
「俺も出すよ」
吉久の答えも引き攣っていた。
・・・・・
「ケイタ、龍太郎、行ってくるでな。」
緑の拳法着に青いパーカーという出で立ちの男が目の前にいる二人の息子―母親似の紫色をした髪と瞳のケイタと自分に似た茶髪の龍太郎―に声をかけて家から出て行った。外から「待ってえなアテナ!」「拳崇が遅いからよっ」という会話が聞こえてくる。
麻宮ケイタは隣にいる兄にニンマリとした笑顔を見せると白い封筒をヒラヒラさせていった。
「ほな、いこか兄貴。」
「そーだな、包師匠の所に行くか。俺も招待状を持ったし。」
麻宮兄弟はこうして中国に旅立った。これから多くの人間の運命を動かすその招待状を握りしめて。
と、言うわけで息子世代の皆さんに登場していきました。
とりあえず次は主要3チームの説明とさせていただきます。
それでは。