「……」
たくさんの人が行き交う人里の通りで、葉太は俯きながら歩いていた。幻想郷に来てから、自分はどこか変わった気がする。どこが変わったのかはよく分からないが、気分が悪い。そんなに大きな変化ではないと思うが……
「……何やってるんだろうな、僕」
彼は呟いた。平気でいじめを行う友人たちに、それを止められない先生に、自分の心を平気で踏みにじる家族。いじめられる側の友達と、自分のことを理解してくれている妹がいたから、今まで感情を抑えてこられたのだと思う。だが、今の僕には、誰も信じられない。妹も、友達も、もう……信じられない。でも……それでも、僕は皆と、表面だけでも優しく接してほしくて……
「……?」
何だ……?まさか僕は、後悔してるのか?何を?一体、何を……?
「何なんだよ……!」
弱弱しく、声を漏らす。彼は、幻想郷に来てから、自分の選択が本当に正しかったのか、疑問に思い始めたのだ。
「もっと……頑張ればよかったのかな……」
何を頑張ればよかったのかは分からない。多すぎて分からないのか、それとも、自分では見つけ出せないようなことなのかさえも分からない。ただ、自分が幻想郷にいるということは、自分が逃げてきたということだ。僕は……逃げてきてはいけなかったんじゃあないだろうか?
「あの……葉太さん?」
「え?」
声をかけられて振り返ると、そこには小鈴さんがいた。……少し、心配そうな顔をしている。
「どうしたんですか?顔色が良くないですけど……?」
「いや……何でもないです」
僕は嘘を吐いた。いや、今更嘘を吐くと言うのは、少しおかしい気がするが。……そうだ、僕は誰も信用してはいないんだ。これが偽りの性格だとばれても、絶対に心を開かないで、表面上だけ楽しく接していればいいんだ。……もうすでに気づいてる人たちがばらすまで、こうしていれば……
「……本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。それより、何か用ですか?」
「いえ、その……最近、葉太さんが来てくれないなって……」
「あ……ごめんなさい。色々あって……」
……そうだ。色々なことがあって、紅魔館の図書館で読んでから、大好きな読書を全然していない。……そういえば、紅魔館でのあの出来事は……いや、やめておこう。思い出したくない。何故かは分からないけど。
「そうですか……あ、そういえば昨日、霊夢さんが葉太さんを探していましたよ?」
「え……霊夢さんが?」
※※※
博麗神社
「……霊夢さん、僕に何か用ですか?」
「用っていうか……少し聞きたいことがあってね」
「聞きたいこと……?」
一体、何だろう?霊夢さんに聞かれるようなことなんて、何もないはずだけど……
「あ、その前に言っておくけど」
「?」
「魔理沙が、貴方のあだ名を思いついたって、よーくんってあだ名を。皆に伝えに行ったわ」
「何やってくれてるんですか、あの人は……何で急にそんなことを……」
ああ……もう手遅れだろうな。というか作者、もう三ヶ月も経ってるのに、何で今更……
……少し笑った後、霊夢さんは真面目な顔に戻って、話を続けた。
「それで質問だけど……葉太、貴方は……自分の家族や友人たちのことを、どう思っているのかしら?」
「どうって……」
困惑した。何故、霊夢さんがそんなことを聞くんだろう?どう思ってるって……あんな醜い『声』を出すような奴らに、いい感情なんか持ってるわけ……ん?『声』?『声』って……何だ?普通の声?それとも、何かの例え?
「…………どう思ってるって言われても……『普通の』家族と友達ですよ?」
「そう……」
霊夢さんはそう言うと、顔を上げて、そして……こう言った。
「じゃあ、貴方の抱え込んでいるものは何なの?」
話が急展開すぎるな……
葉太は、周囲の人々が原因で心を閉ざしてしまったけど、心の奥底では、皆に嫌われたくないと思っていて、偽りの感情で、表面上は楽しく生活している……という設定です。
その割には、過去編の彼と、そこまで変わらないような気がしますけどね……