戦闘機がもっと活躍してもいいと思うんです(凍結中) 作:ヤママ
あらすじ
スレイン君に憑依した戦闘機スキーはスレインパッパと共に火星へ。その道中、地球のカタフラクトの襲撃を脱出用シャトルの華麗な操作でまく。その後、アセイラム姫のとこに不時着。人工呼吸ついでに起動因子ゲッツ!病室に運ばれてザーツバルムと顔合わせ。病室から出たらステイギスパイロットのカレン(オリキャラ)と対面。ドックに拉致られステイギスはダサいと喧嘩をうる。
ドックでステインと対面する前、作戦室にてスレインが地球のカタフラクトと繰り広げた逃走の機動の軌跡をデータ上のみではあるが確認したステイギス隊の総隊長であるゲイツ・オーランドは心が震えていた。
その感情は何か。
驚愕。
まだ十二歳の子供が戦闘機乗りの誰よりも美しく、そして何者にも劣らない機動を見せている事
羨望。
死に物狂いの訓練を積み、実戦を重ねてもまだ届くことの出来ない領域に才能のみで至っている事
喜び。
何万何億人もの中で出会うことが出来るか、生きている間に生まれてくるかも怪しい天賦の才に出会えたこと
口惜しさ。
敵勢力出身者であることを鑑みて、彼に自分の持ちうる技術の伝授は出来ないであろうこと
それなりに年長者として様々なことを経験し、落ち着きを持って未来のステイギス乗りの指導にあたっている彼にとってその感情は一言で表せば、その年で久しく感じていなかった「ときめき」に他ならない。
いいセンスを持つパイロット候補生に出会った喜びよりも。
戦争中、空戦で敵航空機を撃墜した興奮よりも。
そう、あれは初めてヴァ―ス上空を飛ぶ飛行機を見た時のときめき。私(ゲイツ)は今それを感じている。忘れかけていた宇宙(そら)を駆けることへの憧れ。ああ、懐かしい。この感情、このときめき。子供に思い出させられるとは。
再び戦闘機への憧れを思い出したゲイツは愛機であるステイギスでパトロールがてら思い切り飛びたい気持ちに駆られてドックを訪れる。そこには病院服を着た10歳前後の子供と部下であり、ステイギスマスターの一人のカレン・ホワイトがいた。聞けば子供は、あの驚異的な空戦機動をやってのけたスレイン・トロイヤードという少年だということ。それを聞いたゲイツはスレインを観察する。年相応の外見で色白の白髪。腕は細く、とてもデータで見た機動をとれたとは思えない。まず、10歳の子供がシャトルでカタフラクトの攻撃から逃げおおせたという事実があり得ないことではあるのだが。考えているとカレンがスレインをステイギスへ乗せるように薦める。ゲイツも本心をいうと賛成したかったが、彼がまだ10歳前後の子供であることと地球出身者であることからそれを許可はしなかった。カレンには軍事情報の提供という理由で説明はしたが、実際のところはスレインの身を案じてである。現在、ステイギスパイロットやその候補生の年齢は大体16~40歳。どのパイロットも厳しい訓練に耐え抜いた猛者たちである。それ故か、優劣をはっきり付けたがり、中には自分の地位を維持せんと姑息な手を使う輩までいる。マスターたちの間で未然防止や懲罰は行われているものの、スレインは非常に狙われやすい。訓練を受けていなくともステイギスマスターの総隊長である自分(ゲイツ)より技量があるやもしれない腕前。加えて地球出身であることがヴァ―スの地球への憎しみと天賦の才への嫉妬を煽り、狙われやすくなってしまう。才能を育てるにしても隠れて秘密裏に行う必要があるとゲイツは考えるが、そんなことなどつゆしらず。カレンは整備士とパイロットが行き交うドックで中々の声量でスレインをステイギスに乗せるよう説得をする。中には会話を聞いている者もおり、もはやスレインの才能はばれているものと考えることにした。
いいだろう、好きなようにやるといいカレン。というか私が心配していた事態を引き起こしかねない情報をでかい声でしかもドックで喋りやがって・・・頭が痛くなってきた。
カレンがスレインにステイギスに乗ることを勧めるとステインの返答はゲイツ、いやヴァ―スの人間にとっては耳を疑うものであった。
「ステイギスはダサいんで乗りたくありません。」
ゲイツ、いや、ヴァ―ス帝国のすべてのパイロットにとってステイギスとは選ばれたものしか乗ることの出来ない特別な機体だ。物資の少ない火星では、騎士間での小競り合い、本国からの物資の徴収、その他様々な利権が絡み合い飛行機やシャトルを作るのにも途方もない苦労が強いられる。そのため、自然と少数精鋭部隊が要求されることなり、パイロットという肩書だけでもいかに優秀であるかが分かるのだ。加えて戦闘機であるステイギスに乗っているということはエリート中のエリート、皆の羨望を受けて然るべき人物という事になる。まぁ基本的に騎士のカタフラクトが前線で猛威を振るうためその優秀ぶりは影に隠れてしまうが。
ゲイツにとってステイギスはそんな一般的な特別よりももっと深い思いがある。先の地球とヴァ―スの大戦において共に駆け、死んでいった戦友の記憶、信念が詰まっているとゲイツは確信している。だからこそステイギスはこれまでの間ヴァ―スにおいて戦闘機として確固たる地位を確立し、パイロット達の目標となっているのだと。ステイギスへの愛と死んだ仲間たちを重ねるゲイツにとってスレインの発言は彼に怒りを覚えされるものだ。しかし彼は軌道騎士とヴァ―ス兵士の間で胃をキリキリと痛くしている中間管理職。この程度で子供相手に怒るほど沸点は低くないのだ!
「どこがダサいのだね?スレイン君。」
ゲイツは額に血管を浮き上がらせ、頬をピクピクと痙攣させながら笑顔でスレインに聞いた。
・・・沸点は低くないのだ!
医務室からこっそり抜け出した後、戦闘機乗りのヴァ―ス女性兵のカレンさんに拉致られ、到着したのは蜂の巣みたいな六角形が連なった戦闘機「ステイギス」のドック。そこでステイギス乗りの総隊長やってるゲイツさんに挨拶したんだけど、そのゲイツさんがカレンさんに私、スレイン・トロイヤードをステイギスに乗せるようお願いされて、それを了承したところでございます。
つか私の了承なしに話を進めないで下さいお二人とも。大体こんな予備知識も無ければ訓練を受けたこともないガキを戦闘機に乗せようと思わんで下さい。それにあのハチみたいな顔した機械を戦闘機と呼ぶのはちょっと・・・。奥の方が暗くてよく見えないけどあの大きさじゃ翼たたんでるとしても小さすぎるし、何よりあの顔はない。ダサい。戦闘機独特の鋭角のコックピットとかどうしたよマジで。あれなけりゃ戦闘機と私は認めんぞ!それに昆虫の顔しているんだ、オーラ力使えんだろうなゴラァ!
それに比べて今さっきドックへ入ってきた機体はどうだ。現代戦闘機にはない、本物の鳥を、鳥類の中で生態系のトップに立つ鷹を思わせるほどの大きな翼、角度の大きいデルタ翼に、全体的に薄さが感じられるフォルム。・・・ふつくしい。私が今まで見てきた戦闘機と比べると少々横にでかすぎるきらいはあるが、その分今までにないほどに薄い。ここまで奇抜かつ前衛的なデザインは衝撃を受ける。それに現在の機体カラーの黒色はラーズグリーズリスペクトっぽくて好印象ですよ!それにしても、あんな形で折れずに飛べるとはアルドノアドライブは余程万能なのだな。
「どこがダサいのだね?スレイン君。」
呼ばれたので振り返るとゲイツさんが笑顔で私をロックオンしていた。笑顔といってもあれだ、あれは怒りが天元突破しそうなのを何とかして抑えている顔だ。でも何がそんなに気に食わなかったんだ?怒らせるようなこと言った?正直意味不明☆
「ま、まぁマスターゲイツ。相手は子供ですし。それに地球人ともなれば我々の機体の美しさやそれに見合った性能を理解できるはずもありません。彼は地球の戦闘機しか見てこなかったのですから。」
ザッケンナコラ!みんなかっこいいだろ!地球なめんなファンタジー!
「地球の戦闘機が駄作だと言いたいのですか?」
「いやそうじゃなくて・・・!」
カレンさんにいきなり首に肘を絡ませられ、ゲイツさんに背を向けるように方向転換させられ、小声で話しかけられる。
「フォローしてやってんだからつべこべ言うなスレイン!あんたマスターゲイツのこと怒らせてんの分からない!?」
「知りませんよ!てかなんでゲイツさんあんなに怒っているんですか!?私何かいけないこと言いました?」
「明らかに『ステイギスダサい』発言に決まっているだろ!それわざとやっているの?どちらにしてもステイギスがダサいとかあんたのセンスを疑うよ!」
「はぁ!?あんな昆虫みたいな顔したやつのどこがかっこいいんですか?大体戦闘機のくせして翼はないしあんな形しちゃあ抵抗も大きいしブースターも外れやすそうだし!」
「昆虫ってなんだい?」
「まずそこから!?ってそうか。火星には人間しか生命体いませんもんね。」
「うおっっっほん!」
「「!!」」
「内緒話は済んだか?カレン、スレイン君」
悪魔だ・・・悪魔がこっちを見ている・・・何を言っても殺される未来しか浮かばない・・・
「翼がないのは必要性がないからだ。ステイギスは宇宙運用にのみ徹した機体だからな。4機のブースターは立体的な機動を自在に実現させるためだ。それ故操縦に慣れるためには相応の訓練期間が必要だが。」
疑問に対するアンサーあざす。
「さぁ質問の答えを聞こうかスレイン君。一体ステイギスのどこがダサいのかね?」
チクショウ!腹くくってやる!私だってやってやる!戦闘機に関して本音言えないスレイン・トロイヤードなんていらないんだよ!!!(自棄)
「戦闘機に一番必要とされるものは速さです。その点においてこの機体は形状が悪い。正面の面積が大きいから抵抗が大きいし何よりコックピット内のパイロットが振り回されやすいです。それに4機ものブースターのせいで的がでかくなっている。立体的な機動をとるのでしたらケツだけじゃなくてもっと別部分に小さな噴射口などつけるべきです。大体、ブースターの設置部分が美しくありません。まるで後付けしたようだ。」
「ふむ・・・。中々に理論的な推察が出来る。それに『美しくない』とは。君が戦闘機を心から愛し、ただの戦争のための道具と見ていないと分かる発言だ。」
おぉ。中々の高評価。悪魔が鬼神と化すかとビクビクしていたが(CV:ハートブレイク1)、教官位の気配になった。正直に言ってみるもんだね!でもそれって・・・
「認めるのですか?私が説明した欠点を。」
「そうは言わんよ。しかし君の見解はただ外見から判別したものに過ぎない。操縦はおろか、飛んでいる姿を見もしないで決めつけるのは良くないと思わないかね?」
「まぁそれは確かに。」
でもあの形状で戦闘機と言われてもいまいちピンとこないな・・・
っといかんいかん、先入観は良くないな。ナイトホークだって正式に発表されるまではUFOに勘違いされたくらいだし。あれもあり、なのかな?
「乗ってみるかね?」
「いいんですか?」
「私個人にしても君ほど優秀なパイロットに成り得る逸材にヴァ―スが誇るステイギスに間違った評価をされるのは好ましくないからな。」
「いやいや、私なんてそんな・・・」
正規の訓練なんて受けたことないしシャトルを操作できたのはエスコン知識の加護があった部分が大きいし。それに私、皇居みたいなエリアに降りた人間だぞ。不時着場所に気を使えないパイロットって、それパイロット以前の問題だと思うんですがそれは。
まあそれにしたって戦闘機に乗れる機会なんてそうそうないから乗せてもらうけどな!
六角形のハニカム構造の連なるドックのうちの一つによくアニメである宇宙船内での無重力キック移動で移動する。が、要領がよく分からず不格好に2,3回転してしまった。一緒についてきてくれたカレンさんに支えてもらえなかったら体のどこかを壁にぶつけるとこだったな。これから先ここで暮らすことになるのだから慣れないとな。
「ありがとうございますカレンさん。」
「構わなよ。それよりスレイン、その下、何も着ていないのかい?」
「へ?」
ふと自分の服装を確認する。
いつの間にか着せられていた病院服。手術のときとかに着せられる片っぽに紐がやたらあるやつね。ほら、それを着させられる時って大体の場合下着って履かせられないじゃん。あれなんでだろうね。まぁつまり・・・
「・・・すっかり失念していました。自分の恰好。」
「まぁ、気にすることないよ。男だろ?見られたって減るもんじゃなし。」
「ですよね。そんなことより戦闘機だ!」
コックピットはよ!やたら多いスイッチと計器はよ!
カレンさんとゲイツさんの話など聞かず勝手に開かれているコックピットへダイブ!操縦桿は地球の戦闘機とは違ってレバーではなく前に乗った脱出シャトルと同じで球体に指がフィットするような窪みがある。そこに手を置くと起動音と共に暗いコックピットに光が灯り、外の景色が映し出される。
これすごいな。360度視界を確保できるのか。これなら下からの攻撃にも気を配れるな。といってもSAMならロックされた時の警報音で察知出来るしAAガンは上から見て判断できるし。まぁあったら嬉しい視界があるってのはかなりのアドバンテージだが。
「スレイン。どう?満足したかい?」
「中々面白いコックピットですね。視界が広くとれるのは大きなアドバンテージだ。でもこれ、計器はどこにあるのですか?」
「まぁそれについてはおいおい教えてあげるさ。それよりあんた、呼ばれているよ。」
「呼ばれているって、誰にですか?」
コックピットから頭を出して外を見ると赤い服に細かな装飾の服。ザーツバルム伯爵さんだ。あ、やべ。事情聴取受けろとか言われてたんだ。
「すみませんカレンさん、ゲイツさん。私事情聴取うけなくちゃいけなかったんです。」
「それは大変だ。早く行きなさいスレイン君。」
「はい。失礼します。」
二人に一礼してステイギスドックからザーツバルム伯爵の前へ無重力キック移動!やべ、ぶつかりそう。って思ったけど従者みたいな一般兵の人が受け止めてくれた。どうもすみません。ありがとうございます。胸で受け止めてくれるとかマジ男前。惚れます。これから事情聴取ですよね。勝手に移動してすみません。え?事情聴取はなし?これから皇帝と面会?あ、すみません皇帝陛下ですねそうですね了解です。ついさっきステイギスのコックピットを見せてもらったんですけど次来る時は黒くて機首がやたら長い機体に乗せてもらえませんか?使いを出す?なにからなにまでありがとうございます。
スレインがザーツバルムに連れていかれた後のドックにて。ゲイツとカレンの会話
「戦闘機のことになると周りのことなど見えなくなる子のようだな。」
「そのようですね。まさかスッポンポンすら気にしないとは。」
「色々捨てすぎている気もするが。」
「馬鹿と天才は紙一重と言いますし。」
「それもそうか。」
「ええ、恐らく。」
一呼吸おき、ゲイツが重々しく口を開く。
「カレン、スレイン君はアルドノアドライブを起動させたのだな?」
「はい。この目ではきっりと見ました。」
「・・・それは問題だな。」
本来アルドノアドライブを搭載しているヴァ―ス帝国の揚陸城、カタフラクト、戦闘機に火を入れられるのは起動権を皇帝から与えられた軌道騎士と皇帝の血族のみである。一般兵向けのステイギスやスカイキャリアーに関しては、本来は軌道騎士によってアルドノアが起動されたのち、一般兵個々人によるオンオフを承認させる様、アルドノアに認識させる。しかしスレインが起動したステイギスは整備中でアルドノアを停止させていた。起動するためにはステイギスパイロットの承認が必要なはずなのだが、彼はそれを越えて起動した。考え得る理由は・・・
「起動権を与えられた?そんな馬鹿な・・・」
「だがそれしか考えられんだろう。このことはまだ誰にも話していないだろうな?」
「はい。ザーツバルム様には伝えますか?」
「私から伝えておく。このことは他言無用だぞ。」
「はっ。」
スレインのあずかり知らぬところで運命は回る。
二週間に一回じゃなくて2ヶ月に一回位になりそうです(泣)。
これから先のことはほとんどまとまっているのに文章にすると全然進まないものですね(汗)