ご勘弁ください。
ゲームの方も、下手です。ご勘弁ください。
間違いの指摘や感想を楽しみにさせて頂きます。
1
いつものように仕事を終えて、ゲームセンターへと向かう。
いつものようにアーケードゲームの筐体に向かい、ICカードを挿す。
いつものように、イヤホンを挿し、コインを入れる。
ここまではいつもの通りだった。
購入するGPを選び、機体カスタマイズ画面を開き、セッティングを見直す。
全国対戦と書かれたパネルをタッチする。
ロビー画面と呼ばれる出撃メンバーが揃う画面を眺める。
そこには私一人だった。
時間も時間だ、人数が揃うのも遅れる事がある。
この日ばかりは違った。
画面上部に表示される待ち時間が2秒と短い。
これは、成り立たないか。
半ば諦めつつも、しつこく全国対戦のパネルを押そうとしたその瞬間である。
ゲーム中のキャラクターである『フィオナ』が、パネルを連打していた私の指を捕り、ゲームの筐体の中に引き入れようとしてきたのだ。
他の台には誰も居なかったのが悔やまれる。
私は激痛と共に意識を失った。
◆
ここは・・・
どうやら私は夢でも見ていたようだ。
ゲームの中に引き入れられるなど、たちの悪いSFもさもありなんと言ったところである。
きっと電車の中だろう。次の駅は何処だろうか?
ふと目を凝らすと、見慣れない計器類が、ある。
それとは別に親しみのある、レバーのようなグリップと、マウス。
正確にはLグリップとRグリップなのだが。
どうやら筐体の前で居眠りしてしまったらしい。歳は取りたくないものだ。
そして歳を取ると現実を認識するということと、自分の今までの常識に大きな相違がある場合、認めたくなくなるものだ。
都内某所のゲーセンではない。眼前に広がるのは、懐かしくもある、スカービ渓谷そのものだった。
◆
全くたちの悪いSFである。おおよそこういう出来事というものは何処かの二次創作物の中でしかありえない。
そしてこうなった以上私のこれからの行く先を思うと暗澹たる気分になる。
深く溜息をつくと、通信が飛んでくる。
嗄れた声だった。
ゲーム中では定型句しか共有出来ない筈なのだが。
「何をしている。さっさと動け。」
「申し訳ありません。自分の運命を呪っていたもので。」
私の声は、自身が設定しているアバターそのものだった。
よもやここまで同じとは。それはそれで、諦める事にした。
メインカメラから映されているであろう画像は、自機のやや後ろからをシミュレートしていた。試しにRグリップ・・・マウスを振ると視点が動く。
ボタンを操作して感度を最大にする。マウスに付いているボタンを押しながら武器を選択する。
他にも、操作としてはゲームと全く同じであった。
幸いにも使っている機体、武器はそのまま持ち越せているようだった。
なるほど、これが転生チートという事か・・・誰に願った訳でもないが、好都合だ。
「新入り! 惚けていると置いて行くぞ! 目標は敵CPUを抑えて、敵ベースのコアの破壊!」
「了解!!」
作戦が開始されたようだ。いかにもベテランな通信に了解ですわ、とだけ答えた。
◆
まず、私の機体は、おそらく新入りには支給されないフルヤクシャである。
役弐改弐、と、頭、胴、腕、脚、の順に表記される。
比類なき速度を誇るが装甲が薄い。どのくらい速いかというと時速にした場合100キロは超えるくらいに速い。分速28.40mのセッティングである。
ひとまず、私がこの世界に来てしまった理由や、これからの生活など様々と落ち着かない状況だが、目の前の敵を倒さねばならない。やられた時どうなるかぎ想像もつかない。死にたくは、なかった。
主武器。アサルトライフルであるSTAR-20。
単発火力が高い。反動もこの腕パーツだと斜めに跳ねることもあるが、連打するペースとしてはちょうどよく感じる。
副武器。41型強化手榴弾・改。
火力が高い。そして軽めの装備である。投げつけても起爆までの時間がやや速いため自爆には注意である。
補助武器。SP-ペネトレーター。
槍。所謂特殊攻撃で前に槍を突き出して滑走する。これは好みで積んでいる。
特殊装備。AC-ディスタンス。出力こそ並だが、長く起動出来て、回復も早い。
全体的に汎用性の高いカスタマイズである。手榴弾はおにぎりと呼ばれる。アサルトライフルは星と呼ばれ、ディスタンスはタンスと呼ばれ、ペネトレーターはペ槍と呼ばれる。
ひとまず私は箪笥を起動して、敵のクーガーと呼ばれる「ブラスト」に急接近し、側面から頭に星を連続で叩き込む。撃破。
リロードをあえてせずに味方が削った敵機に残りの弾を撃ち込む。撃破。
コアの破壊が作戦目標だったが、ここでの戦闘不能のペナルティを恐れ、撃破と回避のみに注力した。
私の予想が正しければ作戦時間は600秒の筈だ。
そうでなければ、プラントを押してコアの破壊に近づけるべきだろう。
そも、プラントというのは各マップに設置されている拠点である。味方がここを占拠する事により、そのプラントからの出撃が可能となる。
即ち戦闘ラインの形成に重要な役割を持つ。
このプラントは、ニュードを吸い上げているらしい。
ブラストを使い、円のような範囲に入っていれば占拠開始となる。
「プラントCを占拠!」
先ほどのベテランだろうか。彼もまたクーガーに乗り、このマップ・・・戦闘区域の中央にあたる部分を占拠していた。
この機体では本来向かない対応ではあるのだが、相手がコンピューターならば問題はない。
スカービ渓谷の全プラントをこちらのチームが独占し、私もコアへと向かった。
撃破された場合のことを考え、おにぎり・・・この場合は投擲のきせきが紫色であることから、紫おにぎりを敵コアへと3つ投げ込む。
投げ終わったら離脱し、リペアポッド、トイレと呼ばれている補給施設に籠る。
これを繰り返すうちに、作戦は終わっていた。
◆
「作戦は終了だ。ご苦労だった。」
「素晴らしい働きです!」
「ナイス!」
それぞれの傭兵・・・この世界でいうところのボーダーがねぎらいを送っている。
彼らもまたちゃんとした、人間なのか?
あるいはゲームが用意したキャラクターなのか?
まるで私は電脳の亡霊のようだ。
疑念は尽きぬまま私は棒立ちしていた。
「新入り。お前だけ機体も武装も違うようだが・・・この機体は?」
「えっ、そうですね。奮わぬ戦果をなんとかしようとして考えた結果立ち回りを変えてみようと思ってこれにしました。」
熱血っぽいボーダーに通信で話しかけられたので素直にそう答えた。
彼はそこまでの興味がなかったようで、そうか、とひとことだけ言って通信は切れた。
ひとまず作戦は終了である。
いつもならスコアが出て、クラスポイントの増減の画面があって、再戦するかどうか聞かれて終わりなので、この後がわからない。
コックピットからどうやって降りるのかもわからない。
ひとまず飲み会と飛行機だけは勘弁な、そう独りごちた。
メタリックピンクのフルヤクシャはただただ佇んでいた。
続