ボーダーブレイク アナザー   作:胡狼

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先日のクラス昇格事件。

事件と呼ぶほどのものでもあるまいが、ゲーム内のシステムと変わり過ぎている。

それはそれで諦めて受け入れることにしたのだが、アセンを変えるべく、カスタマイズ画面を呼び出す。

どうやったのかと言うと、ブラストランナーに搭乗し、タッチパネルを押すだけである。

果たして整備やパーツ換装の為の技術的環境があるのかないのかを質され

てしまえば、そこはあまりにも不明瞭な点が多すぎるのもまた事実である。

確かに座りながらタッチパネルを押すだけなのでラクなのだが。

それもこれもニュードというものが悪い。

自機の大破の可能性を下げるべく、ゴリラアセンを組むと先日決めたのだが、それでは面白くないし試験に落ちても面倒なので近接武器アセンにすることにした。

スペクター3、ケーファー52、ジーシェンパイロン、エンフォーサーX。

近接強化チップと近接適正チップを搭載している鎧武者アセンである。

装甲はそれなりに硬い為にゴリラと言えないこともないが、ゴリラと呼ぶには脚が遅いか。

これにペネトレーターを合わせる。通常規格のブラストなら大抵は一発で、そうでなくても瀕死になる威力だ。

巷では魔剣たるティアダウナーが人気なのだが、個人的には重量と威力の対比を考えるとこちらを積んでしまう。

一般的には一番軽いものを選び積載を装甲や武器に回すべきであるとされる。

事実私も同様にロングスピアという軽い槍をメインとしている。

まあ、なんとかなるだろう。往々にして諦めが肝心で、孤独とは幸福なのだ。

槍一本で試験を突破する。そうでもなければこの先はやっていけないだろう。

試験開始15分前。

緊急時っぽいサイレンが鳴り響き、緊急時っぽい無線が飛び交う。

どういう演出なのだろうか? 緊急時っぽい、と評したのはそんな説明を受けていないからだ。

もしかしたら、お昼のサイレンなのかもしれない。

もう、今のこの世の中、そういう地域はないのだろうか?

「何を訳の分からん事を言っている! 緊急だ! 所属不明のブラストが攻めてきた!」

「所属不明!? 一体なんだってんだ。」

熱血がそう呟きながらもクーガーに乗り込む。

「敵コアの攻撃はワタクシにお任せを!」

ナルシーが良く分からない。が、ブラストのコアを叩くという事か?

「各自応戦せよ!援軍を待て!本部には連絡した!」

ベテランは既に事務的処理をしていたようだ。この場合の事務的というのは、イレギュラー連絡、援軍要請、現場維持。

その対処の早さに賞賛を送りつつも私も出撃する事にした。

何かセリフを言わねばならないのだろうか。適当にやろう。私はブラストを倉庫から飛び出させて、叫ぶ。

「あなたを、犯人です!」

 

 

 

 

「敵影、確認。距離2472。それぞれ北に6体。」

ナルシーが報告する。

「距離ってメートルなのか?」

「貴方は軍事学校からやり直してください・・・メートルには、違いありませんが。」

ナルシーと熱血が言い合いながらも、距離を詰めていく。

クーガー1型よりも私の鎧武者アセンの方が、見た目のわりに速いのだが、時折屈伸をする事により歩調を合わせる。

屈伸運動キャンセルというテクニックである。

ゲーム的には、ダッシュ後に動作を停止、または少し歩く事によりブーストゲージが回復する。しゃがみ状態(ブラストは停止状態の扱い)を一瞬作る事により、ブーストゲージが回復する。

屈キャンすれば、歩行速度が遅かったり、またはいちいち棒立ちしなくてもブーストが回復する。アーケードでは基本になりつつあるが発見当初はバグ扱いだった。

屈伸運動に似ている事からそう呼ばれるようになった。

とある方の文献では推進剤を屈伸により活発化させる、など、様々な逸話がある。

熱血やナルシーも、私の屈伸には怪訝な通信が寄せられた。

「なんでいちいちしゃがむんだよ!?見ててカッコ悪いからやめろ!!」

「大丈夫大丈夫、今真後ろで屈伸してあげるから」

ガッショガッショと熱血の後ろで屈伸する。ブースト管理なので無駄にはならない。

「気味が悪い・・・」

「貴様ら、無駄話はそこまでだ。距離700メートル、会敵するぞ。」

「了解!」

ベテランはそう注意を促したのだが、私には何も見えない。

足並みを揃えつつも、自分と味方の距離を確認する。

次の瞬間、ナルシーの機体が吹き飛んだ。

 

 

 

 

「ゆ、油断しましたね・・・」

そう言って受け身を取るナルシー。

吹っ飛んだ、という事は、ゲーム中でもある事だ。

大威力の攻撃、ギリギリ行動不能にならない程度の攻撃、インパクトボムで強制的に吹っ飛びダウン。

ダウン中にも、ゲーム的には無敵判定が無い為追撃でやられてしまう事がほとんどだが。

「狙撃だ! 遮蔽物に隠れろ!!」

そういえば、ここはスカービ渓谷だったな。こんなに長かっただろうか。

遮蔽物ってそんなになかった気がする。地面の起伏を遮蔽物として私とナルシーは身を隠す。目視できるところで熱血とベテランは岩肌に隠れている。

「支援室より情報が入った。奴らは今話題になっている狙撃集団らしい。情報によると奴らはロージーで集団行動しているそうだ。」

ベテランが冷静に無線を送る。敵にも傍受されてそうなパターンだが、かといって無線封鎖したところでどうにもならないだろう。

チャットウインドウを閉じる事は出来るが。

「チッ・・・どうしろってんだ!」

「落ち着け。奴らの弾とて無限では無いだろう。どのみちロージーの性能では近づかねばまともに当たらん。それまで待つ。」

ベテランが焦る熱血をそう制した。

実際ゲームなら近づきながらやらないと、隠れてたらそこで試合終了で、ポイントも獲得できない。当てやすい距離を取るだろう。

敵がスナイパー空手スタイルの可能性もある、と私はベテランに無線を送る。

ベテランも承知していたそうだが、そこまでの至近戦は行わないようにと指示を我々に送った。

私のアセンは近接武器中心なのだが、どうにもアテが外れた。

刹那、私の手前で爆風が起こる。なるほど炸薬狙撃銃か。

フルロジで、炸薬狙撃銃の上位系統の、炸薬狙撃銃・絶火をこのランク帯で使ってたらそりゃ話題にもなるだろうな。

ランクという言葉がどこまで通用するのかは、分からないが。

「このままじゃジリ貧だぜ!」

熱血は半身を岩肌から出してマシンガンをばら撒きすぐ隠れる。

ベテランは体を出さず銃だけを向けて撃つ。

なるほど、無線では何も報告がなかったがもうそういう距離まで来ているのか。

「命中!」

「とはいえ肉厚の装甲に高密度のNDEF・・・効果は期待出来ませんねぇ・・・」

ナルシーが私の知る限り珍しく零す。私はナルシーに尋ねた。

「距離はどれくらいなのです?」

「目視なので細かくは・・・ざっと200メートルくらいですかね?」

「数は?」

「一体です。これも、見た限りですが・・・」

「囮かもしれないですね。」

「というと?」

「脚が遅い機体の射程を狙撃銃でカバーし、地の利を得る。そんな雰囲気だったので、囮として行動しつつ、制圧。リロードが遅いからそこを狙う。」

「それは向こうも分かってそうですけどね・・・」

私はベテランに向けて無線を送る。

「とりあえず私が囮になります。場合によっては逃げますので、炙り出せたら集中砲火をお願いしたいのですが!そちらにとっても悪い話ではないと思いますが?」

「・・・わかった。ただその機体では脚が遅くは無いか?」

「その為の、フラ・・・フランドールです。」

「正確に答えろ」

「フラジールです。冗談です銃を向けないで。見た目以上にこの機体は早いので大丈夫かと」

私は槍を構え、マルチウェイXというアサルトチャージャーを使う。

シュゴーという音と共にその場を離れた。

このアサルトチャージャーは高出力だが、使用時間に難がある。

SPという特殊兵装のスタミナのようなものが、少ないのだ。

それを、ブーストゲージに肩代わりさせる剣慣性というテクニックもある。

それには補助武器の槍や剣の特殊攻撃のタイミングと同時に、アサルトチャージャーをオンにしてオフにする事が必要である。

言葉にすると訳が分からないが、要するに節約術という事だ。

「理想を抱いて溺死しろ!」

私は剣慣性を使い、ロージーに向かって行った。

シュゴーという独特な起動音とともに加速。加速しつつ槍を真っ直ぐに突き出す。これを繰り返しているだけなので的になる可能性がある。

その為タイミングなどはずらしながら、ロージーを視界に捉えた。

 

 

 

 

ロージーは私を見ながら回避起動、というか後ろに下がる。

ブンブン丸には最適解だろう。

この相手が所属不明という事以外は知らされていない。

何故戦いになったのかは分からない。

ニュード資源がある基地を狙って進軍してきたのか?

単純に軍に私怨があるのか?

何も考えずに血肉を求めた?

あるいは、何かから逃げてきた?

様々な想いを込めて、ブーストを使い側面に回り込む。

敵はマーゲイというハンドガンに持ち替えていた。

マーゲイの銃弾は私を掠める。

ロージーが右を向くのに対して私は左に。

左に追従してきたら右に一度ステップ、左にステップ、左にステップ、屈伸、左にステップ、左にステップ・・・

ロージーの旋回行動が、ガクンと一瞬止まった。私は槍を構えて、バックステップから、マルチウェイXを起動し、ペネトレーターの特殊攻撃を繰り出した。

ほぼ密着距離まで来ていた。銃弾がモノを言う世界で近接など、と下に見られる言葉が多い。それは射程距離の関係だ。密着してしまえば。

避けられる筈が無い。

ロージーは後ろに吹き飛ぶ。装甲が非常に厚い為一発では沈まない。

ゲームでは通常攻撃とダッシュ中にのみ繰り出せる特殊攻撃がある。

ペネトレーターは、実のところ特殊攻撃の方がトータルの威力が低かったりする。

AC、アサルトチャージャーで急接近し槍を通常攻撃。

槍を突き出し、右から左に薙ぎ払う。

ガキン、ガキンと装甲にヒビが入り、薙ぎ払いでロージーの胴体と下半身部分が別居となった。

当ててしまえばあっけないものだな、それは相手も同じ事だが。

私は十秒間待って、相手がどうなるか。撃破されたらどうなるかを観察した。

不規則に、ステップを刻んで他の敵に的を絞らせないようにしながら反応を見る。

どうにもならなかった。

という事は機体は回収されるまで破棄だろう。

中身は、どうなった?

私は内心パイロットがコクピットを開けて白旗でも振ってくれるのを祈った。

三十秒待っても、何もなかった。

「これ以上、長居は無用か。」

私は無線で聞こえるよう、わざとらしく言って、味方の方向に剣慣性を行いながら撤退した。

その間狙撃銃で撃たれていないのが不気味である。

「よくやったぞ!」

「素晴らしい働きです!」

後退し、熱血とナルシーに賞賛されながら、私はベテランに報告をする。

「支援舞台が来る。もう少しの辛抱だ。ところで」

「はい」

「見えていたのだが、さっきのはどういう事だ?」

見えていたなら援護くらいしてくれても・・・と、内心思ったのだが、見透かされたようだ。

「貴様に当てる訳にも行かんだろう。ロージーの旋回行動が読めていたのか?」

私は、とりあえず説明した。周りのブラストが、私の座っているコクピットの、マウスとグリップで操縦しているのかは分からないが。

ゲームの筐体をよく見ると、マウスの左右の、振り回せる幅の違いがわかると思う。

右には結構動かせるのに、左はそこまでの場所は無い。

ステップを刻んで右に一度降る。相手のマウス感度にもよるが普通は照準が間に合う。

そこから左に。

これもマウスの動かせる幅はまだある。ここまでは私も同じ事が言える。

屈伸を挟んだときにマウスの位置を、余裕を持って動かせるところに置き直したのだ。

今回のロージーは回避起動と旋回を同時に行っていたのか、動かせるマウスの幅がなくなってしまった。その為、相手はマウスが動かない!こちらはまだ動かせる!

という状況になるのだ。

それは隙になり、今回の結末を迎えたのだが・・・

「なるほど、分からん!」

言葉では通じぬものもあるという事だ。

「いや、お前の説明が下手なだけじゃないのか?」

私は熱血に言われぐうの音も出ない。

些か緊張感に欠けているのは、本部とやらからきたブラストランナーや輸送機が、押し寄せてきたからだろう。

ベテランがこの場を締めた。

「全員、撤退! 輸送トラックに乗り込め!」




用語説明などくどくて申し訳ありません
最後の方のマウスの位置を使った個人テクも分かりにくくてすみません
実際に使ってはいるのですが
私の拙い文では表現できてませんでしたね
申し訳ありません。
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