ボーダーブレイク アナザー   作:胡狼

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支援部隊の到着である。

このタイミングはありがたいが、どうにも違和感があった。

支援部隊という響きからして支援兵装で構成されているかと思ったのだがそうではない。

部隊と呼ばれたもののそれは単騎だった。

クリムゾンレッドのシュライク。

それはどう見てもフルシュライクだった。

細身のシルエットに、ヴォルペ・スコーピオと41型強化手榴弾を装備していた。

ベテランが後退命令を出していたが私はそのシュライクに見惚れてしまっていた。

 

「何をしている! 早く下がれ!!」

「単騎!? いったいどうして!!」

「AE社お抱えのランカーだ。貴様の考えなどどうでも良い。」

「くっ」

 

私は、支援部隊の輸送機付近まで下がる。

それと同時に補給と修理が行われた。

このリペアユニットでピロピロするだけで装甲が戻っていく。

謎の技術であることは承知していたが、こうして目の当たりにするとえもいわれない感覚である。

残った狙撃集団のうち、数機が、お抱えのランカーとやらに殲滅されていた。

あの機動はこの訓練兵団のそれとは一線を画している。当然の結果である。

 

が。

 

狙撃集団はそもそも、我々をおびき出した。それはあながち間違いではないだろう。

しかし実のところ。

訓練兵団のようなもの相手にそのような罠を張ってまで、彼らが姿を見せるだろうか?

中身がAIだというなら話は別かもしれないが。

そして支援部隊そのものは何故か単騎で、我々に後退するように、我々の上官的な立ち位置のベテランは指示をした。

単騎で十分な実力があるという事なのかもしれない。

だが。

きな臭い。

ゲロ以下の匂いがプンプンするぜェェェェェ!!!

この場合はこちらの上官あたりになァァァァァァ!!

 

チート使用。アセン変更。

E.D.G。

θββθ。

ブレイザーアグニマゲバリSHG先生耐久迷彩。狙撃に特化したアセンである。

超長距離から戦闘の様子を見て、おそらくこの支援部隊のランカーを撃破させる予定だろうと思うが、違ったらアレなので黙っている事も出来る日和見主義のそれに酷似した手法で以って状況を監視しようと思う。

 

紅いシュライクは目視による索敵を行っているのだろうか。シュライクの装甲は薄く、狙撃集団とは相性は良くないだろう。

数分が経過した頃、狙撃集団の残りが一斉に姿を現した。

シュライクも敵の狙撃のタイミングとリロード速度を見切って、敵の背後から各個撃破という戦法を取っており、それは着実に身を結んでいた。

私要らなくね?

だが1対9ではそう持つまい。

戦場とは、数である。いかに質の良い人が一人でも数の暴力はそれをやすやすと覆す。

ブレイザーアグニの、加圧されたニュードバレルから緑色の粒子が溢れ出てくる。

私は狙撃銃のチャージを解き放つ。

パァン。

やけにあっけない音とともに青い光条が一本、ロージーの頭に当たる。

フェイタルアタックがついていて、NDEFが削げていたならば即死である。

ロージーは上空に錐揉み回転しながら大破していった。

私はスコープを覗くのを止めて位置を移動する。

迷彩効果によって機体はやや認識しにくくなっているとのの発射位置から本体の位置を特定されてしまうと面倒だ。

移動しながらアグニをチャージする。

一発撃ったらリロードした後にチャージが必要なこの銃の扱いは難しい。

だが、チャージしてさえおけばあとは撃つだけで大抵の機体が瀕死か、即死である。

あの硬い狙撃集団に撃つのであれば、取り回しを犠牲にしてでも、これが最適であると思った。

しゃがんで、覗いて、チャージが大体終わって、レティクルが収束しきるくらいには発射タイミングである。そこからエイミングするのは間に合わないので、有視界戦にてある程度敵の位置の確認をする必要があった。

私は迷彩を駆使して隠れながら丁度良い位置につき、アグニを放つ。

フルHGスナイパーが、大破した。

それと同時にランカーが敵を二機落とした。

あと何機、敵はいるのだろうか?

3機目の私の敵を落としながら、索敵をどうするか考えていた。

 

「さあ、偵察を開始しますよ!」

 

ナルシーがラーク偵察機を飛ばした。全くいいタイミングである。

こちらの上官が頭数の不利を悟ったのか?

それとも私が忍んでいたのがばれたのか?

一先ず、今は現状を打破しよう。

そうしてミニマップに映った敵の数は。

少なく見積もっても両手の指では足りなかった。

敵の識別反応は赤で示される。

気付いた頃には、ロージーなどの重量級アセンが岩壁から、迷彩を解いて、あるいは地平線の向こうから、どんどん出てきていた。

 

「どうしたっていうのだ、この数は。戦争みたいだ。はは、戦争だったか。そう、戦争だな」

「何を今更言っているのです?ここは撤退かと。そちらにとっても悪い話ではないと思いますが?」

「足止めするのは構わないが、別にアレを倒してしまっても良いのだろう?」

「貴女の自信は何処からくるのですか?」

 

私の軽口をナルシーに適当に流され、私はアグニで牽制しつつも下がる。毎回当たれば良いのだが、そうもいかない。

ふと紅いシュライクを見ると、下がれ、とでも言うようにジェスチャーして見せた。

 

支援部隊に恩を売るのも悪くない話だと思いますが? とベテランに通信を送るも、責任問題でそれは不可能だという答えが返って来た。

正規軍でもないというのに、傭兵というのは律儀だね。

責任とは何処にあるのだろう?

なんの責任なのだろう?

腹芸に近い質疑応答は行われなかった。

そんな感じで我々訓練部隊がまごついていると、紅いシュライクは樽のようなものを取り出し、複数設置していた。

ラグビーのタッチダウンにも似た動作。

サテライトバンカーだ。私はハッとしてナルシーの機体を蹴り飛ばして後ろに下がらせる。

その次の瞬間にそれは起動した。

紫色の極光が天より落ちてくる。

激しい振動でカメラがブレてしまいアグニは一時的に使えなくなったが、杞憂だったようだ。

サテライトバンカー・・・衛星砲の一斉峰起。

ミニマップに映った敵の数は目に見えて、減っていた。

 

ここで慢心するのは、まだ早い。

 

私は気付いていた。倒した敵のアセンと、出てきた敵のアセンがおなじであることに。

この戦場の大前提は。

 

敵コアの破壊が作戦目標なのだから。


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