「ふむ、侮っていたわけではないが……なかなかやるではないか。Fクラス」
そう言ったのは、窓際に立っている紫が混じった長い黒髪に透き通るような白い肌
そして、なにより目立つ右目に眼帯を着けた美少女
「はっ! そういうそちらさんだって、よく保ってるじゃねーか!」
そう言ったのは、入り口付近で指揮を執っている雄二である。
時間は、もうすぐ正午になろうとしていた。
その時
「しかし、暑いな……小十郎。すまんが、窓を開けてくれるか?」
政宗は片手を団扇のように扇ぎながら、付近に立っていた黒髪ポニーテールの少女
「ああ、わかった」
景綱はうなずいて、窓を全開にした。
雄二はそれを見ると
「てめぇら! 作戦を開始する! 覚悟を決めろ!!」
「おおおぉぉぉぉぉ!!」
雄二の掛け声に、Fクラスの男子達は歓声で答えた。
「なに、作戦?」
雄二の言葉に、政宗が眉をひそめると
「決めろ、姫路!!」
「はい!」
姫路の召喚獣が右腕の腕輪を掲げた。
「まさか!? 全員避けろ!!」
政宗は気付き指示を出すが
間に合わない。
「ヒート・ブレイザーーー!!」
姫路の召喚獣の腕から放たれた極太のレーザーは、敵味方問わず、右側の通路を一掃した。
その瞬間
「戦死者は補習ーーー!!」
西村が20人余りを担いで走り去った。
その事実に左側のBクラス生徒達は動揺しながらも戻ろうとするが、Fクラス生徒の攻撃が激しく戻れなかった。
その隙に
「今だ!!」
坂本雄二を始めとした数人がなだれ込んだ。
「遠藤先生! 武田信繁がBクラス代表に英語で勝負を!」
と、信繁が勝負を挑もうとしたが……
「片倉景綱が引き受ける!!」
それを数人のBクラス生徒達が阻んだ。
「くっ! 近衛部隊じゃと!?」
そのことに秀吉は歯噛みした。
そして、雄二は冷静に自分達と伊達政宗までの距離を目算していた。
「ふっ…あと数人居れば勝てただろうにな」
と、政宗が言ったとき
「いや、チェックメイトだ!」
雄二はそう言いながら、指を鳴らした。
「なに?」
雄二の言葉に政宗は眉を上げた。
さて、ここで教科の特性について説明しておこう。
各教科の担当の先生によって、テストの結果に特徴が表れる。
例を挙げると、数学担当の木内先生は採点が早い。
世界史の田中先生は、点数の付け方が甘い。
今居る英語の遠藤先生は、多少のことは寛容で見逃してくれる。
では
保健体育は?
保健体育は、採点が早いわけでも甘いわけでもない。
召喚範囲が広いわけでもなく、御しやすい先生というわけでもない。
保健体育の特性、それは教科担当が実技体育の教師が為の…………
ダンッ! ダンッ! ダンッ!
並外れた行動力!!
政宗は着地の音がした方向に視線を向けた。
窓から縄が教室に入り込んでいて、人が三人、屋上から降下してきた音だった。
そして、そこに着地していたのは……
「き、貴様らは……」
「内藤先生……Fクラス土屋康太と」
「同じく、真田幸村が」
「Bクラス代表、伊達政宗に勝負を挑む!」
「許可します!」
「ムッツリーニと真田だと!?」
Fクラスが誇る保健体育の帝王と切り込み隊長だった。
「
保険体育
Fクラス 土屋康太 441点
Fクラス 真田幸村 402点
VS
Bクラス代表 伊達政宗 306点
「……加速!」
「一閃!!」
ムッツリーニと幸村の足元から現れた召喚獣が、あっという間に政宗の召喚獣を切り裂いた。
その結果
Bクラス代表 伊達政宗 0点
となった。
その瞬間
「勝者、Fクラス!!」
西村の大きな声が轟いて、Fクラスの勝利が決まった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「そんじゃあ、戦後対談といこうか。Bクラス代表さんよ」
「そうだな。で、なにが目的だ? 恐らく、設備交換が目的ではないだろう?」
政宗の言葉を聴いた雄二は一瞬驚くが、すぐに表情を改めて
「そんじゃ、言わせてもらうぜ? お前さんのところに、根本って居るだろ?」
「根本? ………ああ、あの小者か」
政宗は思い出すと、視線を景綱に向けた。
「少し待て」
景綱はBクラスの生徒達の中に消えると……
「こいつだろ?」
と、一人の男子を投げた。
「ぐぇっ」
男子
根本恭二は顔面から地面に倒れた。
「よう、根本。好き勝手やってくれたらしいじゃねーか」
「なんのことだ?」
根本は胡座をかきながら、しらばっくれた。が
「すっとぼけんじゃねーよ。てめぇ、うちのクラスの設備を壊した挙げ句に、個人の物を奪ったろ?」
雄二の言葉を聞いたBクラスの生徒達の非難がましい視線が、根本に集中した。
「証拠はあるのか」
根本は、往生際悪く足掻くが
「てめぇが持ってた物は、うちのクラスの奴が回収して確認したんだよ。観念しろや」
雄二の言葉に、根本は舌打ちして視線を上げて
「で、なんの用だ」
と問い掛けた、
「なに、簡単だよ。っと、その前に……」
雄二は根本に言う前に、視線をBクラスの生徒達に向けて
「本来なら、Bクラスには素敵なちゃぶ台と座布団をくれてやりたいが、条件次第では免除してやる」
雄二の言葉に、Bクラスの生徒達は困惑気な表情をした。
「まあ、根本には去年から好き勝手やられてたからな。正直目障りだったんだよな」
と、雄二が喋っていると、背後にムッツリーニが現れた。
そして、雄二の手に紙袋を持たせて消えた。
「まずは………根本のコスプレ写真集を作ろうじゃないか!」
雄二は言いながら、紙袋から
女子の制服を取り出した。
それを見た根本は
「ふ、ふざけるな! なぜ、この俺がそんなことを!」
と怒鳴るが
「任せて! 必ずやらせるから!」
「クラス全員で実行させよう!」
「それで設備を守れるなら、安いものだ(よ)!!」
Bクラス全員に、根本は簡単に見捨てられた
これだけで、根本の人望がないのがわかった。
「うおおぉぉーい!? お前ら!?」
根本が驚いていると、雄二がイイ笑顔で
「決まりだな」
と、近づきながら言った。
「待て! 寄るな変態!!」
と、根本は後ずさるが
「小十郎」
「うむ」
「ぐえっ!?」
片倉景綱の蹴りによって、気絶した。
「好きに使ってかまわん」
「おう、あんがとよ。ムッツリーニ!」
雄二が呼ぶと、背後にムッツリーニが現れて
「精々、可愛く写してやれ」
と、雄二が注文すると首を振って
「……それは無理、土台が腐っている」
と、根本を引きずっていった。
すると、政宗が
「それで、もうひとつの条件はなんだ?」
と、雄二に問いかけた。
そのことに雄二は一瞬驚くが
「なに、話は簡単だ。Aクラスに宣戦布告をやってもらいたいんだ」
「なに?」
雄二の言葉に、政宗は片眉を上げた。
「ただし、完全に宣戦布告する必要はない。ただ、戦う準備があるって伝えるだけでいい」
雄二がそう補足すると、政宗は納得した様子でうなずいて
「なるほど。要は牽制か」
「ああ、その通りだ。やってくれるな?」
「もちろんだ。そのくらいで設備が守れるならば、安いものだ」
そう言うと政宗は、視線を信玄たちに向けた。
「まさか、お前達が居るとは思わなかったぞ。甲斐の虎」
「それはこちらもです。独眼竜」
「驚いたぞ」
「まさか居るなんて」
四人の会話を聞いた雄二は少し驚いた様子で
「なんだ、お前達は知り合いなのか?」
「ええ」
「まあ所謂、幼馴染でな」
「明久とも知り合いなんです」
雄二の質問に信玄たちが答えた。
政宗は腕組みをしながら
「剣聖には度々世話になったのでな。出来うる限りフォローはするさ」
という政宗の言葉を聴いた雄二は
(明久の交友関係は広いな)
と、内心で感心していた。
そして、最後に
「そんじゃあ、宣戦布告の件は頼むぜ?」
「ああ、わかった」
と、政宗に念押しして解散した。
こうして、Fクラス対Bクラスは
Fクラスの勝利で幕を閉じたのだった。