第三試合が引き分けに終わり、現在はAクラスが優勢だった。
そして、第四試合
「これより、第四試合を始めます。両クラスは代表者を出してください!」
高橋女史がそう言うと、Fクラスからはムッツリーニが出た。
そして、Aクラスからは工藤愛子が出た。
「キミがムッツリーニ君だね? ボクは去年末に転校してきた工藤愛子。よろしくネ?」
工藤愛子が軽く自己紹介すると
「……よろしく」
ムッツリーニは軽く頭を下げた。
そのタイミングで
「それでは、科目を選択してください!」
と、高橋女史が促した。
「……保険体育」
促されて、ムッツリーニが選んだのは保険体育だった。
ムッツリーニが保険体育を選ぶと、工藤愛子が面白そうな顔をして
「そういえば君は、保険体育が得意なんだよね? 実はボクも得意なんだ。ただし、君とは違って……実技でね」
と意味深に告げた。
それを聞いたムッツリーニは、一瞬首を傾げて
「……それがどうし」
た、と言おうとしたが、鼻血が噴出した。
するとムッツリーニは、ポケットからティッシュを取り出し鼻に詰めると
「……これは花粉のせい」
と、否定したが
「康太、それは無理がある」
「ムッツリーニ、その言い訳には無理がある」
明久と雄二が同時に突っ込みをいれた。
「アハハ! 君って面白いネ! そうだ、それとね……」
愛子はひとしきり笑うと、下目遣いでムッツリーニを見つめて
「今日のボクね……ノーブラなんだよね♪」
愛子がそんな問題発言をした。
次の瞬間
「……卑怯な!」
ムッツリーニの鼻から鼻血がティッシュを押し出して、凄い勢いで噴出した。
「ムッツリーニイィー!!」
「誰か、このエロの化身を助けてくれぇ!!」
「衛生兵! 衛生兵!!」
Fクラス側では阿鼻叫喚となり、Aクラス側では呆れ半分、引き気味半分となっていた。
「はぁ……やれやれ……」
雄二は溜め息を吐きながら、ムッツリーニに駆け寄って処置を始めた。
少々、お待ちください。現在蘇生中です。
「えー……始めてもよろしいでしょうか?」
さすがに驚いたようで、高橋女史も若干引き気味に訊ねた。
「……問題……ない」
雄二の蘇生治療の甲斐あって、ムッツリーニはなんとか立てるようになっていた。
ただ、両腕で松葉杖を使っており、近くには点滴台も立っていて、正直、痛々しい。
二人が頷いたのを見て、高橋女史は
「それでは、召喚してください!」
と、促した。
「
促された二人は、同時にキーワードを唱えた。
その直後、軽い爆発音がして、二人の足元に召喚獣が現れた。
ムッツリーニのは相変わらず、忍者姿で両手に小太刀を装備していた。
そして、愛子の召喚獣は服装はセーラー服だったが、右手には
「なんだ、あの巨大な斧は!?」
「それに、腕輪も填めてるぞ!!」
そう、愛子の召喚獣の装備は召喚獣よりも大きな斧を持っており、右腕には腕輪も装備されていた。
保険体育
Aクラス 工藤愛子 472点
そして、その点数も驚異的だった。
「理論派と実践派、どっちが強いか証明してあげる!」
と、愛子が宣言したと同時に
「試合、開始!」
高橋女史がゴングを鳴らした。
「バイバイ! ムッツリーニ君!」
試合開始と同時に、愛子が斧を振りかざしながらムッツリーニに駆け出した。
「ムッツリーニ!」
Fクラスからムッツリーニを心配する声が出た。
その時だった。
「……加速」
とムッツリーニが呟き、袖に隠れていた腕輪が光った。
「え?」
愛子がムッツリーニの呟きに首を傾げた瞬間、ムッツリーニの召喚獣がかき消えて
「……終了」
と呟いたと同時に、ムッツリーニの召喚獣が愛子の召喚獣の背後に現れた。
その直後、愛子の召喚獣は倒れた。
保険体育
Aクラス 工藤愛子 0点 LOSE
VS
Fクラス 土屋康太 552点 WIN
ディスプレイの表示を見て、愛子は目を見開き
「そんな……このボクが負けるなんて……」
と膝を突いて、悔しがった。
すると、そんな愛子にムッツリーニは近づき
「……確かに、お前は強かった」
声を掛け始めた。
「ムッツリーニ君……」
声を掛けられたことで、愛子は視線をムッツリーニに向けた。
「……だがお前は、慢心が過ぎた」
「……どういうこと?」
ムッツリーニの言葉に、愛子は首を傾げた。
「……自分が一番強い。自分より強い奴は居ないと侮り、相手に対しての注意を怠った」
普段は寡黙な彼にしては珍しく、饒舌になっていて、愛子も聞き入っていた。
「……世の中には自分より上が居て、相性の悪い相手だって居る。お前はその事を考えていなかった」
そのムッツリーニの指摘に、愛子は衝撃を受けた。
(確かにその通りだ……実際にムッツリーニ君のほうが点数が高かったし、速さは見えなかった……)
愛子がそう思い、視線を下げていたらムッツリーニは背を向けて
「……その考え方を改めたら、いつでも挑戦に来い……俺は待っている……簡単に負ける気もないがな……」
ムッツリーニはそう言うと、歓声を上げているFクラス側に戻っていった。
愛子は去っていくムッツリーニを見送りながら
「ありがとう……ムッツリーニ君……」
と、感謝の言葉を呟いたのだった。
これにより、四戦が終了。
両クラスが一勝一敗二引き分けという、熱戦を繰り広げていた。
だが、この時は誰も気づかなかった。
この直後の試合で、一人の少年に悲劇が起きようとは予想だにしていなかった……