僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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悲劇の後

島田の召喚獣が消えた後、数秒間は全員が呆然としていた。

 

あまりの予想外の試合内容に、全員は付いていけなかったのだ。

 

すると、高橋女史がパソコンの画面を見て

 

「召喚フィールド解除!」

 

今更かもしれないが、召喚フィールドを閉じた。

 

それにより、生き残っていた明久の召喚獣も消えた。

 

すると、雄二が立ち上がって

 

「明久……」

 

心配そうに、明久に声をかけた。

 

次の瞬間、明久の体が傾いた。

 

「明久!」

 

それを見た雄二が駆け出そうとしたが

 

「明久!」

 

すでに、謙信が駆け寄っていて、抱き締めた。

 

「明久! 明久!」

 

謙信が揺すりながら名前を呼ぶが、明久は反応しなかった。

 

謙信は制服や手が血に濡れるのも構わず、明久を呼び続けた。

 

その姿に、全員が固まっていると

 

「っ……ウチはなにを……?」

 

頭が痛いのか、苦痛に表情を歪めながら額に手を当てて島田が呟いた。

 

その声が聞こえた瞬間、雄二は島田に向けて駆け出して

 

「島田ー!」

 

島田の胸ぐらを掴み、島田を持ち上げた。

 

「さ、坂本!? い、いきなりなに!?」

 

訳がわからないのか、島田は目を白黒させながら問いかけた。

 

すると雄二は、怒りに任せて

 

「なにスッとぼけてやがる! てめぇのせいで明久が!」

 

と、怒鳴った。

 

雄二の言葉を聞いて、島田は視線を明久達の方向に向けた。

 

「な!? よ、吉井!?」

 

島田は明久の姿を見て、顔を蒼白にした。

 

「てめぇのせいだろうが!」

 

雄二はそう言いながら、島田を持ち上げた。

 

それにより、首が締まっていき、島田の顔が白くなっていった。

 

「よせ、坂本!」

 

その光景に西村が慌てて駆け寄り、雄二の腕を掴んだ。

 

「うるせぇ! こいつのせいで、明久が!」

 

西村の制止を振り払い、雄二はさらに島田を持ち上げようとした。

 

その時だった。

 

「よしな!」

 

新たに聞こえた第三者の声に、全員は声のした方向に振り向いた。

 

そこに居たのは……

 

「学園長!」

 

「ババア!」

 

ここ、文月学園の学園長

 

藤堂カヲルだった。

 

「坂本、下ろしな」

 

学園長は静かに、雄二に命令した。

 

「だが!」

 

雄二は抗議の視線を学園長に向けるが、学園長は雄二を睨みつけ

 

「もう一回言うよ。下ろしな」

 

と、冷徹な光を宿した目で睨みながら、命じた。

 

「わかった……」

 

渋々といった様子で雄二は、島田を下ろした。

 

床に下ろされた島田は、激しく咳き込みながら呼吸していた。

 

そんな島田を見下しながら、学園長は近づいて島田の腕を掴んで持ち上げた。

 

「あっ!?」

 

そんな学園長の行動に島田は驚くが、学園長は無視して袖をまくった。

 

そして、見えた腕輪を見て、西村は目を見開いた。

 

「学園長、それは!?」

 

「ああ……以前開発して廃棄したはずの《真紅の腕輪》さね……」

 

西村と学園長はその腕輪の正体を知っていた。

 

「真紅の腕輪? なんだそれ?」

 

雄二が聞くと、島田の腕から腕輪を外した

 

島田は一瞬、腕を伸ばしかけたが、学園長に睨まれて止めた

 

「こいつは、吉井が観察処分者に立候補する前に作った腕輪でね。先生がこれを装着していて、フィールド内に生徒が居ると、そいつを簡易的に観察処分者仕様に出来る。って目的で開発したんだが……出来たのは、とんだ失敗作だった。生徒に対するフィードバックが強制的に百%で固定されていたんだ……余りにも危険と判断して、廃棄したはずなんだが……」

 

学園長はそこまで言うと目を細めて、島田を見下ろし

 

「アンタに聞くよ。これはどうやって手に入れたんだい?」

 

と、問いかけた。

 

問いかけられた島田は最初は口を閉ざしていたが、西村と雄二に睨まれてようやく口を開いた。

 

「宅配便で届いたんです……ウチ宛てに……」

 

島田の言葉を聞いて、学園長は片眉を上げた。

 

「配達された? 誰からだい?」

 

再び問いかけられた島田は首を振って

 

「わかりません……名前は書かれてなかったから……」

 

と呟いた。

 

島田の呟きを聞いた雄二は、憤慨した様子で近づき

 

「てめぇは……送り主不明なんて怪しい品を受け取って、しかもどんな効果も知りもしないで使ったのか!!」

 

と怒鳴った。

 

怒鳴られた島田は、顔を白くして

 

「ウチだって、こんなことになるなんて知らなかったのよ! 中に入ってた紙には、これを着けて召喚獣勝負に勝てば、相手に思いが伝わるって!」

 

と喚いた。

 

それを聞いた雄二が更に怒鳴りつけようとしたが、それを学園長が手で制して

 

「その紙ってのは?」

 

と、島田に問いかけた。

 

問いかけられた島田は、ポケットに手を入れて

 

「こ、これです……」

 

と、差し出した。

 

学園長は差し出された紙を奪い、西村と一緒に見た。

 

「ちっ……ご丁寧にパソコンかい……」

 

「これでは、誰からかは……」

 

学園長は舌打ちして、西村は残念そうに首を振った。

 

学園長は紙を西村に渡すと、島田を見下ろして

 

「これが入ってた箱は?」

 

と、腕輪を振りながら聞いた。

 

「う、ウチの部屋にあります……」

 

島田の呟きを聞くと、学園長は頷いて

 

「今回の試合は、アタシの権限で無効試合とさせてもらうよ! 更に、今日は試合を中止! 明日に持ち越しさね!」

 

と告げた。

 

そう言った後、学園長は視線を高橋女史に向けて

 

「高橋先生、アンタは吉井を病院に連れていきな。文月総合病院にはアタシから連絡を入れとく」

 

「はい!」

 

学園長の指示を受けた高橋女史は、謙信と明久に駆け寄り、謙信と一緒に明久を運びだした。

 

すると、颯馬と信玄、信繁と幸村も付いていった。

 

それを学園長は見送ると、島田に視線を向けて

 

「クソジャリ、アンタには先に三日間の自宅謹慎を命じる。その後に詳しい処分を伝える。少しは頭を冷やすんだね」

 

と、島田に告げた。

 

それを聞いた島田は俯いて

 

「はい……」

 

と返答してから、ヨロヨロと立ち上がり教室から出ていった。

 

学園長はそれを見送ると、視線を雄二に向けて

 

「アンタも病院に行ってきな。吉井が心配なんだろ?」

 

と語りかけた。

 

それを聞いた雄二は数秒間悩んだが

 

「すまん……」

 

と頭を下げると、ドアに向かって歩き出した。

 

すると、雄二を追うように翔子も教室から出ていった。それを確認すると、西村は残っていた生徒に向けて

 

「今日は帰ってよし。明日は通常通りに登校するように。以上!」

 

と告げた。

 

それを聞いた生徒達は、三々五々と教室から出ていった。

 

全員を見送ってから、西村と学園長は頷きあって

 

「それじゃあ、今からあのジャリの家に行くかね」

 

「はい。少しでも、犯人に繋がる手懸かりを探しましょう」

 

と言うと、教室から出た。

 

場所は変わり、ある一室に二人の人影があった。

 

一つは白髪混じりでメガネを掛けた男性で、もう一つは小柄で紫色の髪をツインテールにしている女子だった。

 

二人の前にはモニターが設置されていて、先ほどの明久と島田の試合を映していた。

 

試合結果を見ると、男性は舌打ちして

 

「使えないクズめ……観察処分者如きに勝てないとは……」

 

と、憎々しげに呟いた。

 

すると、女子が近づいて

 

「でしたら、この策なんかはどうでしょうか……」

 

と言ってから、男性の耳元で囁いた。

 

それを聞いた男性は、笑みを浮かべて

 

「それは名案だ……早速、手を打とう」

 

と言って、部屋を出た。

 

それを女子は見送ると

 

「単純な男……まあ、使えるから使うわ……剣聖、あなたは邪魔なのよ……」

 

と呟いから、部屋を出た。

 

 

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