「アタシの無能を晒すようで嫌なんだがねぇ……」
明久が問い掛けると、学園長は溜め息混じりにそう言ってから、視線を明久達に向けた。
「アタシは基本的に、召喚獣システムに掛かりきりでね。学園の運営面に関しては、教頭である竹原に一任してるのさ」
学園長の説明を聞いて、雄二が
「つまりは、なにか? このボロい設備はあの教頭の指示だってのか?」
と問い掛けた。
すると、学園長は頷き
「そういうことさね。まったく……あいつの方が、隠し事があるじゃないかい……」
と呟いた。
すると、その呟きを聞いた明久が
「学園長……竹原教頭は更に、なにかやったのではないんですか?」
と問い掛けた。
問い掛けられた学園長は、視線を明久に向けて
「どうして、そう思うんだい?」
と問い掛けた。
「先ほど入室する前に、学園長と竹原教頭が言い争ってる声が聞こえました。つまりは、竹原教頭がなにか独断専行をしたということでは?」
学園長からの問い掛けに明久がそう返すと、学園長は軽く肩をすくめて
「まったく……吉井は聡いね……」
と呟いた。
そして、数秒間置いてから、学園長は一つの腕輪を机の上に置いた。
「それは?」
「今度の文化祭で行われる召喚大会で、景品として出される予定の腕輪さね……名前は黒鉄の腕輪」
雄二が問い掛けると、学園長は呟くように説明した。
「……この腕輪がどうしたんですか?」
と翔子が問い掛けると、学園長は数回口をつぐんでから
「……実は……この腕輪は、まだ完成してないのさ」
と言った。
「未完成の品を景品にしたんですか?」
謙信が非難めいた口調で問い掛けると、学園長は首を左右に振って
「アタシはさらさら、出す気は無かったんだがね。気づいたら、竹原の奴が勝手に景品として発表していたのさ」
と言った。
「完成するまでは、後どのくらいなんですか?」
と明久が問い掛けると、学園長は軽く唸ってから
「そうだね……早く見積もっても、後二週間は掛かるね」
と言った。
文化祭までは、後約一週間
どう考えても、間に合わないのは目に見えている。
「それで、腕輪は今現在、どのくらいまで出来てるんですか?」
明久が問い掛けると、学園長は一瞬迷う素振りを見せたが
「機能自体は、既に完成してるのさ。ただ、調整が面倒なんだよ。今のところ、大体Bクラスの総合平均点くらいを取ると暴走を起こすね」
と説明した。
その説明を聞いた明久は、顎に手を当てて黙考すると
「召喚大会で出される景品はそれだけですか?」
と問い掛けた。
その問い掛けに、学園長は首を振ると
「いや、もう一つあるさね」
と言うと、机の引き出しからもう一つの腕輪を出した。
「名前は白銀の腕輪。こっちは元々、景品として出す予定だったから、何の問題もないよ」
と説明した。
それを聞いた明久は、コクコクと頷いてから
「でしたら、学園長。取り引きしましょう」
と言った。
「取り引きだって?」
明久の言葉を聞いて、学園長は目を細めた。
「ええ。召喚大会で雄二達が腕輪を獲得したら、Fクラスの施設を改修するんです」
それを聞いた学園長は、目を見開いた。
「なるほど……そうすれば、暴走する危険性も抑えられるし、調整する時間も出来るね……」
学園長はそこまで言うと、雄二に視線を向けて
「今の吉井の提案に乗るかい? 乗るなら、教室施設の改修もしてやるさね」
と言った。
問われた雄二は、Ⅰも二もなく頷いて
「無論だ。その話、乗ってやる」
と断言した。
その後、雄二は召喚大会のルールを確認した。
1.参加するには、二人一組とする(他クラスでも可)
2.教科は対戦毎に変わる
大まかには、この2つだった。
ルールを確認した雄二は、数秒間沈黙すると
「ババア、提案がある」
と言った。
学園長は、雄二をジト目で睨みつけて
「アンタは、いっぺん基本的な言葉遣いを覚え直しな」
と、溜め息混じりに言った。
明久達も同感だったのか、無言で頷いている。
そして、学園長は再び溜め息を吐くと
「で、提案ってのはなんだい?」
と聞いた。
「教科は、対戦毎に変わるんだろ? だったら、その教科選択を俺にやらせてほしい」
「ふむ……その程度だったら、良いだろう。点数の水増しとかだったら、一蹴していたがね」
雄二の提案を聞いた学園長はそう言うと、パソコンの画面とキーボードを雄二の方へと向けた。
雄二はパソコンに近づくと、考えながらキーボードを打っていった。
そして、入力が終わったらしく、パソコンから離れた。
「終わったかい?」
「ああ」
雄二の答えに、学園長は満足げに頷いて
「そうかい。それじゃあ、くれぐれも頼んだよ」
と念押しした。
明久達は頷くと、学園長室から退室した。
その後、教室に戻った明久達は、かつて病室で誓った全員を集めた。
そして、雄二が学園長との取り引きの話をすると
「なるほど……あの施設は教頭が原因だったのか」
「でも、教頭はなんでそんなことをしたのかしら?」
と納得したり、少し困惑気味に話し始めた。
が、それを雄二が手を叩いて止めて
「推測は今はやめとけ。証拠が少ないのに、推測を立てたんじゃ、それに引っ張られかねない」
と言ってから、真剣な表情で
「それに、恐らくだが、竹原からの妨害も起こるだろう」
と言った。
「理由を聞いてもいいですか?」
颯馬が問い掛けると、雄二は内密にな。と呟いてから
「実は、学園長室に盗聴器が仕掛けられてたんだ。しかも、仕掛けたのは教頭だ」
と言った。
雄二のその言葉を聞いて、ほとんどのメンバーが目を見開いた。
「盗聴器って……」
「……そこまでやるか」
優子と康太が続けて言うと、雄二は頷き
「ここまでやる奴が、妨害をしないなんて予想出来ない。だから、何時も不測の事態に対処出来るようにしてくれ」
と言った。
雄二の言葉に、全員は真剣な表情で頷いた。
すると雄二は、明久に視線を向けて
「ただし、明久は無理すんなよ? まだ怪我が治りきってないんだ」
と言った。
言われた明久は、軽く肩をすくめて
「まあ、無理しない程度に頑張るよ」
と、苦笑いしながら言った。
その言葉を聞いた全員は安心したように頷くと、今日はこれで解散した。