学園長との交渉から、二日後。
明久達は文化祭に向けて、準備を進めていた。
とは言っても、設備などは専門の業者が行うので、明久達は模擬店で出す料理などを確認していた。
「さってと……大体のメニューは決まったな」
「だね」
信繁の言葉に、明久は頷いた。
ちなみに、翔子と優子及び颯馬の三人がAクラスの教室で設備関連のことを業者と確認しており、雄二が島田と共に倉庫代わりのFクラスの掃除の指揮を執っている。
明久達が居るのは、二つある家庭科室の一つである。
家庭科室に居るのは、明久と信繁の他に、康太、秀吉、謙信、信玄、幸村である。
そんな彼らの前の机には、信繁、明久、康太の三人が作った料理やデザート類が置かれている。
明久と信繁が意外に思ったのは、康太の料理の腕が高かったことだ。
ただ、康太はエロが絡むと不可能を可能にするのだ。
そして、女子陣と秀吉は値段のことを話しており、材料などの仕入れ先を決めていた。
その時、ドアが開いて、雄二、翔子、優子の三人が入ってきた。
「お、なんだ。美味そうじゃねぇか」
「……本当に」
「凄いわね」
「流石は、明久様と信さんですね」
入ってきた四人は、机の上の料理やスイーツを見て口々に賞賛した。
「ありがとう」
「……今回は自信あり」
「店よりかは道具が揃ってないから、ある程度は妥協したがな」
と三人は謙遜していた。
「それよりさ、味見を兼ねて食べてくれる?」
「できたてが一番旨いからな」
「……味は保証する」
と勧めた。
すると、明久が何かに気付いた様子で
「雄二、島田さんはどうしたの?」
と、問い掛けた。
すると雄二は、軽い調子で
「ああ……Fクラス男子達の指揮を押し付けた。鉄人も居るから、脱走も出来ないしな」
と言ってから、料理を手に取って食べ始めた。
それを聞いた明久は、それなら仕方ないか。と思いながら、信繁と一緒に作ったプチシュークリームを食べた。
(うん……上手くできてる)
明久は出来に安堵して、安堵した。
が、次の瞬間には違和感を感じた。
違和感を感じた明久は、それの数を数えてから
「ねぇ、康太に信繁。確か、僕たちが作ったプチシュークリームの数って、八個だよね?」
と、二人に問い掛けた。
「ああ、八個だな」
「……数えたから間違いない」
二人のその言葉を聞いて、明久は首を傾げながら
「じゃあさ……この一個は、なに?」
と、皿に残っている一個を指差した。
その一個を見てから、康太と信繁は全員が食べた数を思い出し
「待て、一個多いぞ」
「……数が合わない」
と困惑していた。
そして、三人が言いようのない不安に襲われていると、料理を食べ終わったらしい雄二が皿に残っていたプチシュークリームを見て
「お、美味そうだな。貰い」
と言って、残っていたプチシュークリームを摘まんだ。
それを見た明久達は、慌てた様子で
「待って、雄二!」
「早まるな!」
「……戻すんだ!」
と雄二に、皿に戻すように促した。
だが、雄二はそんな三人の様子にキョトンとしながら
「お前ら、何をそんなに慌ててるんだ?」
と言いながら、そのプチシュークリームを口に入れた。
「ふむふむ、外はカリカリ、中はネバネバ。甘くなく、むしろ辛過ぎる味わいがなんとも……アベシ!?」
なぜか、どこかの世紀末のような悲鳴を上げながら、雄二は倒れた。
「雄二ーー!」
「坂本ーー!」
倒れた雄二を見て、三人は慌てて駆け寄った。
「雄二、しっかりして!」
「大丈夫か!?」
「……目を覚ますんだ!」
三人が必死に声を掛けていると、うつ伏せになっていた雄二が
「ああ、俺は大丈夫だ……」
と返事をしてきた。
「よかった……」
「安心した……」
雄二の返事を聞いた三人が、安堵のため息を吐いていると
「ああ……喜ぶのは構わんのだが……別にあの川を渡ってしまっても構わないのだろう?」
なぜか、赤い弓兵風に雄二がそう言った。
「渡るなぁーー!」
「……戻ってこい!」
明久と康太の二人が、声を張り上げていると、ドアが開いて
「あ、私が作ったプチシュークリームはどうでした?」
先ほどまでは居なかった姫路が、そう問い掛けてきた。
その問い掛けを聞いて、信繁と呆然としていた翔子が近寄って
「さて、姫路。一つ聞こう」
「……何を入れたの?」
と問い掛けた。
二人からの問い掛けに、姫路は首を傾げながら
「隠し味として……硝酸を」
と答えた。
次の瞬間、盛大に血管が切れる音が響き、信繁と翔子から凄まじいオーラが立ち上がった。
「姫路……ちょーっと、O☆HA☆NA☆SHI☆がある……」
「……何も言わないで、付いて来て」
二人はそう言うと、それぞれ姫路の手を掴んで歩き出した。
「え? え? ちょっと待ってください! なんか、お話のニュアンスが違っ……」
姫路の抗議も虚しく、二人は姫路を引きずって家庭科室から出て行った。
その十数秒後、姫路の悲鳴がどこからか聞こえてきたが、誰も気にしなかった。
「む? 六万だと? いや、それはおかしい。こういう場の船賃は六文と相場が決まっていてだね……いや待て、なぜ親父が居る? なに? お袋の作った弁当を食べた? だから、俺が作った弁当にしろと言っただろ?」
雄二がそう言っている間に、颯馬がAEDを持ってきた。
「雄二、戻ってくるんだ! というか、雄二のお父さんも帰ってきて! 康太!」
「……わかっている! 電圧、チャージ完了! 生きろ!」
康太はそう言いながら、AEDのスイッチを押した。
なお、この時になぜか、康太の目に鳥のような赤い光が浮かんでいたのを、颯馬が確認していたとか。
「アババババ! はっ! 俺は一体……」
雄二はAEDの電気ショックが効いたらしく、無事に帰還してきた。
「……良かった」
「霧島さんを、未亡人にしなくて済んだよ……」
無事に帰還した雄二を見て、明久と康太は安堵の息を吐いた。
なお、この事件をキッカケに、姫路をキッチンに立たせないようにと、姫路は倉庫番に決定。
雄二の父親は会社で倒れたために、会社の同僚がすぐさま救急車を呼んで、一命を取り留めた。
こうして、準備期間は過ぎていく。