営業妨害騒ぎから数分後、明久達は保健室に居た。
「申し訳ありません、明久様。私達がもう少し早く動けていたら……」
少女、兼続は明久のケガを治療しながら謝罪してきた。
「大丈夫ですよ、兼続さん」
「しかし、兼続もこの学園に居たのですね」
実を言うと、兼続は昔からの知り合いであり、良きお姉さんだ。
「はい。今は風紀委員会の委員長です」
三人が語り合っていると、ドアが開いて
「ごめんねー。遅くなったわ」
と言いながら、義弘が入ってきた。
「ああ、義弘」
義弘が入ってきたのに気づいて、兼続が視線を向けると、義弘は片手を上げながら
「ケガは大丈夫?」
と明久に問い掛けた。
義弘からの問い掛けに、明久は頷くと
「ええ、なんとか大丈夫です……」
と答えた。
だが、謙信がガーゼを交換しながら
「大丈夫ではないですよ! ようやく塞がりかけてた傷口が、また開いてしまいましたよ!」
と息巻いた。
謙信の言葉を聞いて、義弘は乱雑に頭を掻いて
「本当に、ごめんなさいね。私のクラスメイトが迷惑かけたわ」
と迷惑そうに言った。
義弘の言葉を聞いて、明久は首を傾げながら
「あの二人は、どうしてあんな事を?」
と問い掛けた。
すると、義弘は両手を上げながら首を振って
「わからないわよ。あいつらを連行したら、教頭が来てどこかに連れて行ったから」
と答えた。
「教頭が?」
義弘の言葉を聞いて、明久は片眉を上げた。
「そ。おかげで、事情聴取も出来なかったわよ」
明久からの問い掛けに、義弘は苛立った様子で答えた。
その言葉に明久は頷くと、そういえば、と言いながら視線を義弘に向けて
「義弘さん、こっちに来てたんですね」
と言った。
「まあね。地元の高校でも良かったけど、やっぱり東京の高校の方が良いかなって思ってね」
彼女、義弘は本来ならば、九州の方に住んでいたのだ。
過去に明久と謙信は家の交流もあり、彼女の家に向かったことがあった。
ちなみに、彼女は四人姉妹の次女であり、格闘の達人である。
余談ではあるが、文月学園で彼女は《鬼島津》と呼ばれており、彼女はそう呼ばれる度に
「誰が鬼か!!」
と激怒する。
閑話休題
「でも、これでわかった……彼らは教頭に協力してる」
明久がそう呟くと、謙信は頷いた。
すると、明久の呟きが聞こえたのか、兼続と義弘が
「協力してるって、どういうことですか?」
「何があったの?」
と明久に問い掛けた。
二人からの問い掛けに、明久は言おうか迷った。
二人を巻き込みたくないとは思うが、教頭がどれほどの人数を今回の事に動員するかわからない。
それを考えると、貴重な戦力になり得る二人に話すべきなのだろうか。
明久が迷っていると、兼続が心配そうな表情を浮かべて
「明久様、何とぞ教えてください。私はこれ以上、明久様が傷つくのを見たくはありません」
と言った。
それを聞いた明久は、数秒間悩み
「……これから言うことは、他言無用で頼みます」
と言った。
明久の言葉を聞いた二人は、ただ事ではないと察して無言で頷いた。
そして明久は、二人にことのあらましを語った。
教頭が何か大事を企んでいて、常夏の二人はそれに協力していると。
明久の話を聞いた二人は、どこか納得した様子で頷いた。
「なるほど、有り得るわね」
「ええ……」
二人の言葉を聞いて、明久は首を傾げた。
「どういうことですか?」
明久からの問い掛けに、二人が語ったのはこうだった。
常夏コンビは成績下位の者を見下す傾向が強く、それゆえに同級生やクラスメイトからは相当に煙たがられている。
しかし、高学歴を有する教頭には媚びへつらっており、何かと優遇されている。
風紀委員会は以前から怪しいと調査しているが、なかなか的確な証拠が掴めないためにヤキモキしていたらしい。
「なるほど……」
明久は納得すると、二人に改めて協力を要請した。
具体的には
1、風紀委員会による見回りの強化
これは、教頭が行うであろう妨害で一般客や生徒への被害を未然に防いだり、減らす目的である。
2、常夏コンビへの監視体勢の強化
これは先のこともあり、常夏コンビがまた暴れる可能性が高いためである。
3、出来る限りの教頭の監視
これに関しては、本当に出来る限りで頼んだ。
今回の件が教頭主体ならば、教頭は邪魔な生徒に対して徹底的に危害を加える可能性が高い。
ゆえに、事前に知ることが出来れば、その生徒を助けることが出来るからだ。
明久がここまで言うと、二人は顔を見合わせて
「それらは、私達から他の風紀委員に伝達しましょう」
「私達は出来る限り、明久君の近くに居ます」
二人の言葉を聞いて、明久は目を見開いた。
「いえ、そこまで迷惑を掛けるわけには……」
明久がそう言うと、兼続が片膝を突いて
「お願いします。もう、あの時のような思いはしたくないんです」
と言った。
そう言われたら、明久としては断れる訳が無かった。
「わかりました。でも、無理はしないでくださいね?」
明久がそうお願いすると、二人は微笑みながら頷いた
こうして、風紀委員会との共同戦線が決定した。