僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

32 / 82
明久が暴れます


誘拐事件

怪我の治療が終わると、明久と謙信の二人は教室へと戻った。

 

すると、一段落したのか客の人数は大分減っていた。

 

「おお、明久。戻ったか」

 

「……大丈夫?」

 

明久に気づいたらしく、雄二と翔子の二人が声を掛けてきた。

 

二人からの問い掛けに、明久は頷きながら

 

「まあ、なんとかね……あ、康太!」

 

と、厨房側から出てきた康太を呼んだ。

 

「……どうした?」

 

呼び掛けられた康太は、明久に近づいて首を傾げた。

 

「衣装なんだけどね、血で汚れちゃって……」

 

明久はそう言いながら、紙袋を康太に手渡した。

 

「……明日までには、なんとかする」

 

康太は紙袋を受け取ると、そう言ってから厨房に入った。

 

その時、明久は時計を見て

 

「そういえば、雄二。試合は?」

 

と問い掛けた。

 

今の時間帯は、本来ならば試合中のはずである。

 

明久からの問い掛けに、雄二はなぜか遠くを見ながら

 

「試合は不戦勝だったんだよ……」

 

と語った。

 

「不戦勝? なんで?」

 

不戦勝の理由を明久が問い掛けると、雄二は明後日の方向を見ながら

 

「どうやら……食中毒らしいんだ……」

 

と言い、雄二の言葉を聞いた明久は固まった。

 

「……姫路さんじゃあ、ないよね……?」

 

明久が恐る恐ると聞くと、雄二は

 

「違うはずだ……あいつは、倉庫番だしな……」

 

と言ったが、二人としては疑いは晴れなかった。

 

その後、二人は強引に会話を切り上げて、それぞれ仕事へと戻った。

 

なお、衣装が血で汚れた明久は厨房へと回った。

 

そして、謙信もそんな明久のサポートへと回った。

 

そして、少し時間は経ち、雄二は三回戦へと向かい、明久はトイレへと向かった。

 

そして、明久が戻っている途中で雄二達と会った。

 

「あ、雄二。試合はどう?」

 

「勝ったに決まってるだろ」

 

「……余裕」

 

明久からの問い掛けに、雄二と康太はサムズアップしながら答えた。

 

その時だった。

 

颯馬が慌てた様子で、曲がり角から現れた。

 

颯馬に気づき、明久は片手を上げながら

 

「颯馬、どうしたの?」

 

と声をかけた。

 

颯馬は乱れている呼吸を整えながら、涙目で

 

「申し訳ありません、明久さま! 僕が弱いばかりに……」

 

と言いながら、俯いた。

 

「泣いてたんじゃ、わからねえだろ」

 

「……詳しく話せ」

 

雄二と康太が促すと、颯馬は視線を上げて

 

「謙信様を始めとして、数名の方々が攫われました!」

 

と告げた。

 

そして三人は颯馬の言葉を聞いて、目を見開いた。

 

「申し訳ありません……」

 

颯馬は謝罪しながら、涙を流した。

 

「とりあえず、教室に行くよ」

 

明久がそう言うと、雄二と康太は頷いた。

 

そして、四人が教室に到着すると、クラスメイト達が荒れた内装を直していた。

 

明久はその中から目的の人物を見つけると

 

「信繁!」

 

と呼んだ。

 

呼ばれた信繁は、駆け寄ると

 

「すまない!」

 

と頭を下げた。

 

「今は謝罪よりも、何があったのかを教えて」

 

明久がそう言うと、信繁は頭を上げて

 

「そうだな……それが……」

 

信繁が明久達に教えたのは、以下の通りである。

 

今から、約十数分前のこと。

 

十人近くの男達が整列係の制止を振り切って、店内に乱入。

 

その時、たまたま居た小さな女の子を人質に取り、謙信達を拘束し逃亡したらしい。

 

話を聞き終わった明久達が唸っていると、康太が

 

「……付いて来い」

 

と言って、教室から出た。

 

明久達は首を傾げながらも、康太の後を追った。

 

そして、康太はFクラス教室後方に入ると、自身のロッカーを開けた。

 

「なんで、パソコンがあるのさ」

 

康太のロッカーの中を見て、明久は思わずそう言った。

 

しかも、ロッカーの中に電源が引かれてあり、画面には様々な映像が映っている。

 

「……これは、学園中に仕掛けてある小型カメラの映像」

 

「とりあえず、なんでそんな物があるのかは聞かないでおく」

 

康太の話を聞いて、信繁はそう言った。

 

すると康太は、パソコンのキーボードを高速で叩きだした。

 

数秒後、画面に地図が表示された。

 

「ムッツリーニ、こいつは?」

 

雄二が問い掛けると、康太はパソコンを操作しながら

 

「……念のために、全員の衣装に発信機を仕込んでおいた」

 

と言った。

 

「今は事態が事態だから、不問にしとくぞ」

 

雄二がそう言ったタイミングで、地図上の一カ所に赤いマークが点滅した。

 

「康太?」

 

「……ここは、郊外の廃工場」

 

明久からの問い掛けに、康太はすぐさま答えた。

 

康太の言葉を聞いて、明久は立ち上がると

 

「皆、行くよ」

 

と告げて、明久の言葉に四人は頷いた。

 

そして、数十分後

 

明久達は件の廃工場に到着した。

 

そして、廃工場の入り口にはワンボックスカーが二台止まっていた。

 

「……足跡は中に続いてる」

 

康太がそう言うと、明久は近くに落ちていた鉄パイプを拾い上げ、信繁は持ってきていたカバンから連結式の棒を取り出し、颯馬は小太刀サイズの木刀を二本持ち、雄二は拳を鳴らして、康太は明久と同じように、鉄パイプを持った。

 

「それじゃあ、行こうか」

 

明久の言葉に、四人は無言で頷いた。

 

中は廃棄された資材や、古い雑誌などが散乱しており、壁にはスプレーによる落書きがチラホラとあった。

 

明久達はそんな中を慎重に歩きながら、攫われた謙信達がどこに居るのかを探していた。

 

すると、近くから

 

「なあなあ、そろそろこいつらを犯さねぇ?」

 

「お、イーねー! だったら、俺はこの黒髪ちゃんねー♪」

 

という、会話が聞こえた。

 

明久達はその声を頼りに、部屋を探し当てた。

 

そして、少し開いているドアの隙間から中を覗いた。

 

そこにはまさしく、件の男達と謙信達の姿があった。

 

どうやら、縄で縛られているらしい。

 

しかし、全員の無事を確認出来て、明久達は安堵した。

 

「……私に触るな!」

 

翔子は自身に触ろうとしていた男の手を、足で蹴った。

 

「イーねーイーねー! 気の強い娘は好きだよぉ!」

 

蹴られた男はそう言うと、下品な笑い声を上げた。

 

「お姉ちゃん……助けて……」

 

小さな女の子の声が聞こえて、明久は首を傾げた。

 

なぜならば、その声には聞き覚えがあったからだ。

 

明久が思い出そうとしていると

 

「あなた達、この子供だけでも解放しなさい!」

 

と謙信が、強い語気で言った。

 

「ああ? 命令できる立場かよ?」

 

「っ……!」

 

男の言葉に謙信が悔しそうにしていると

 

「それで、あなた達はなぜこんなことを?」

 

と信玄が問い掛けた。

 

「俺達は依頼されただけなんだよ。てめぇらを拉致って、あのクラスの模擬店を営業出来なくしてやれってなぁ!」

 

信玄からの問い掛けに、男は愉快と言わんばかりに笑いながら答えた。

 

「依頼? 誰が?」

 

「メガネをかけた白髪のオッサンだよ! 割りの良い仕事だぜ、拉致って好きにすれば五十万も貰えるんだからなぁ!」

 

幸村からの問い掛けに、男は笑いながら答えた。

 

「特徴的には、教頭だな」

 

「うん……」

 

廊下で会話を聞いた明久達は、特徴から該当は一人しか思い浮かばなかった。

 

そして、雄二達は気づいていた。

 

明久から、殺気が滲み出していることに。

 

その時だった。

 

「さーてと……そろそろ犯すかな!」

 

「私に触るな!」

 

謙信の声の直後、何かを叩くような音が聞こえた。

 

「痛ぇなぁ……なにすんだよ、このアマがぁ!?」

 

「あぐっ……」

 

「……上杉!」

 

「謙信!」

 

男の声の直後、謙信の悲鳴と何かにぶつかるような音。そして、翔子達の心配する声が連続した。

 

その直後

 

「お邪魔ー!」

 

「おらぁ! 騎兵隊の到着だ!」

 

明久がドアを鉄パイプで殴り壊し、そこから雄二達が突入した。

 

「なっ!」

 

「なんでここが!?」

 

明久達の登場に男達が固まっていると、一瞬にして明久が一番近くの男の懐に入り

 

「……どけ」

 

静かに一言呟きながら、鉄パイプを振るった。

 

「があっ!?」

 

明久の振るった鉄パイプは、男の肋骨の側面に当たった。

 

その際に、嫌な音がしたが明久は無視した。

 

そして、倒れてる謙信とその近くに居る男を見て

 

「お前か……」

 

短く呟き、また一瞬にして男に肉薄した。

 

この時、明久がしたのは縮地と呼ばれる古流剣術に於ける移動技法の奥義である。

 

とある文献によると、この縮地を極めると全速力で走っている馬車にも追いつけるらしい。

 

閑話休題

 

明久は謙信を殴ったであろう男に、容赦なく鉄パイプを振り上げた。

 

「ぎゃあぁぁ!!」

 

殴られた男は数mほど飛んで、瓦礫の山に落ちた。

 

明久はそれを冷たい目で見ると、謙信の隣にしゃがんで謙信を助け起こした。

 

「ごめんね。遅くなっちゃった」

 

「いえ……信じてましたよ、明久」

 

明久が謝ると、謙信は微笑みながらそう言った。

 

「少し待っててね……こいつらを倒すから」

 

明久はそう言うと、謙信を壁に寄りかからせた。

 

そして、置いておいた鉄パイプを拾い上げて

 

「次、来いよ……」

 

と言いながら、鉄パイプを突きつけた。

 

その時

 

「てめぇら! それ以上動くな!」

 

一人の男が、女の子の顔にナイフを突きつけながら喚いた。

 

「それ以上動いてみろ! このガキがどうなっても……」

 

「……させるか!」

 

男が喚いていると、いつの間にか康太が背後に現れて、男の脳天に鉄パイプを振り下ろした。

 

「がっ!?」

 

康太に殴られた男はうめくと、前のめりに倒れた。

 

なお、女の子は康太が男の手から上手くキャッチした。

 

その後、瞬く間に男たちは全滅した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。