昼食後、明久と謙信の二人は次のアトラクションに向かっていた。
だがそんな明久達の背後から、二体の着ぐるみと数人のFクラス男子達が迫っていた。
それを、とある人物が如月グランドパークの中央にある城の高台から見ている人物が居た。
「秀吉と土屋君は……捕まえたFクラス男子達の連行で動けない……つまり、ようやくあたしの出番ね」
そう言ったのは、左手に弓を持った優子だった。
「距離は……大体五十位かしら……」
優子はそう言うと、背負っていた筒から矢を抜くと、弓につがえた。
そして、少し目を細めると
「……っ!」
短い気合いと共に、矢を放った。
優子が放った矢は、空気を切り裂きながら、一直線に集団目掛けて飛翔した。
数瞬後、優子が放った矢はFクラス男子の一人の側頭部に直撃した。
その直後、着ぐるみ二体
姫路と島田の二人を含めて、全員が驚愕で固まっていた。
「狙いがズレたわね……この位かしら?」
優子は微調整をすると、今度は三本を一息に放った。
その直後、三本の矢はほぼ同時に男子達の頭に直撃、男子達は揃って倒れた。
「ん、今度は狙い通りね……」
優子がそう言ったタイミングで、残ったFクラス男子達は、矢が来た方向に気づいて、近くの木の陰に隠れた。
しかしそれを見ても、優子は慌てずに
「その程度で、私から逃げられるとでも?」
と言うと、新しい矢を抜いて構えた。
よく見ると、その矢は矢羽根が一枚欠けていたり、微妙に切ってあったりと不揃いだった。
そしてキリキリと引くと、立て続けに数本放った。
優子が放った矢は一気に歪曲して、木を回避し、隠れていたFクラス男子達に直撃した。
「これで、男子達は殲滅っと……後は」
優子がそう言ったタイミングで、同じように隠れていた姫路と島田が木陰から飛び出して、明久達の方へと駆け出した。
優子はそれを見ると、少し考えてから
「着ぐるみを着ていると、有効射になりにくそうね」
と言った。
そして、新しい矢をつがえた。
だが、その矢の先端は先ほどまでの矢とは違い、鋭い針が有った。
優子は明久達目掛けて走る二人を睨みながら、弓矢を大きく引いた。
そして、数秒後
「シッ!」
短い気合いと共に、矢を二本同時に放った。
放たれた矢は大きく弧を描き、走っていた姫路と島田の背中に直撃。
矢の直撃を受けて、姫路と島田の二人は倒れた。
それを確認して、優子は右耳に付けていたインカムに手を当てて
「こちらアーチャー、対象の撃破完了。回収をお願い」
と通信を始めた。
『了解です。すいませんね、優子さん。休んでいたのに、来ていただいて』
「いいのよ。どうせ、家で暇してたんだし」
颯馬の言葉を聞いて、優子は手をヒラヒラとさせながら、そう言った。
優子は最初、この如月グランドパークには居なかった。
だが秀吉が、自分達二人だけで護りきれないと判断し、優子にお願いしたのである。
そして案の定、秀吉と康太の二人では対処が間に合わなかったので、優子が動いたのである。
なお、男子達に向けて射った矢は安全面を考慮して、鏃は付いていない物である。
そして、姫路と島田に射ったのは、針の先に二倍の濃度の対人用の麻酔薬が付いた物である。
「一応、二人には麻酔矢を使ったから大丈夫だとは思う。けど、油断はしないで」
『了解です。ありがとうございます』
颯馬がそう言うと、優子は頷いてから離れた。
そして優子の視界の端では、明久達はジェットコースターに並んだ。
それを見て、優子は微笑んだ。
これが、優子の弓術師としての始まりだった。
そして、後に神業の木下として有名になるのは、また別の話である。