明久達がジェットコースターから降りた頃、颯馬は裏手の駐車場へと向かった。
その駐車場に、タイミング良く一台のワンボックスカーが止まった。
そして、そのワンボックスカーから降りてきたのは、ウサギを彷彿させる髪型の女性と、七人の男女だった。
「お待ちしてました、宇佐美さん!」
「……お待たせ」
返事したのは、
吉井家では警備責任者であり、明久達にとっては信頼が置ける人物である。
「……明久様と謙信様は無事?」
定満が問い掛けると、颯馬は頷いて
「はい! 協力してくれたご友人達のおかげで、無事です。ですが、そのご友人達も疲労が溜まってきてます」
と報告した。
すると、定満はコクリと頷いて
「……そのご友人達に、後は私たちに任せて休んでって、言っておいて」
と言った。
すると颯馬は、定満の後ろに居る人物達に視線を向けて
「その人達は、まさか……?」
と定満に問い掛けた。
すると、定満は頷き
「……七聖剣」
と端的に答えた。
七聖剣
吉井、上杉両家の中でも、特に武力に優れた選りすぐりの七人によって構成されており、並大抵の武闘家では勝つことは不可能である。
「やっぱり……」
「……両家が動かすことを承認したの。それで、相手は?」
定満が問い掛けると、颯馬は懐から数枚の紙を取り出して
「この人達が残った敵です。それと、要注意なのが、最後の二人です。先ほど、捕まえたのにまた脱出したと報告が入りました」
と報告した。
颯馬の報告を聞いて、定満は紙を受け取ると、七人に見えるように掲げて
「……よく顔を覚えて……最後の二人に関しては、確実に無力化して捕縛して……散!」
定満の号令の直後、七聖剣は一瞬にして姿を消した。
定満は七聖剣が居なくなったのを確認すると、颯馬に視線を向けて
「……それじゃあ、私は指揮に専念するね」
と言った。
「ありがとうございます。これで、僕も本来の仕事に専念出来ます」
颯馬の言葉を聞いて、定満は頷くと
「……無理しないでね」
と颯馬の頭を撫でた。
「はい! 定満さんも頑張ってください!」
「ん……」
定満と颯馬はその場で別れると、それぞれ仕事へと向かった。
場所は変わって、ジェットコースターでは
「さってと……次はどうしようか」
「そうですね……」
ジェットコースターから降りた明久と謙信の二人が、マップを見ながら次のアトラクションを決めていた。
「一回、休もうか」
「そうですね……休みましょうか」
明久の提案を聞いて、謙信も同意した。
どうやら、連続で遊び続けたために少し疲れたらしい。
明久と謙信は周囲を見回すと、ちょうど良い草地を見つけた。
二人はそこに移動すると、並んで座った。
二人が座ったのは、木の根元だった。
だからか、ちょうど影になっている場所であり、そよ風もあって心地よかった。
「いい天気だね」
「そうですね……」
と話し合っていると、明久がウトウトし始めた。
それに気づいて、謙信が膝を曲げて
「明久」
と自身の膝を軽く叩いた。
よほど眠かったのか、明久は素直に従って、謙信の膝に頭を乗せた。
いわゆる、膝枕である。
そして、数秒もしない内に明久は規則正しく呼吸を始めた。
そんな明久の頭を撫でながら、謙信は微笑んで
「いつもお疲れ様です。明久……」
と呟いた。
その頃、残存Fクラス男子達及び、姫路と島田達は、地下の係員用通路に居た。
「ダメだ! 監視室に居た奴からの連絡が途絶えた!」
「クソッ! これじゃあ、吉井の奴の居場所が分からない!」
男子達の言葉を聞いて、姫路と島田の二人は苛立たし気に
「この役立たず! 何とかしなさいよ!」
「そうです! 早く見つけてください!」
と怒鳴った。
「だけど、一体どうすれば!」
「だったら、もう一回監視室に行かせなさいよ!」
「少しは考えてください!」
姫路と島田の指示を聞いて、一人が困惑した様子で
「だけど、これ以上戦力を割いたら、吉井に攻撃出来ない!」
と反論した。
「そんなの知らないわよ!」
「そうです! 私たちさえ攻撃出来れば、こっちの勝ちなんです!」
と二人が怒り心頭という様子で言った直後
「……少しは自分で動いたら?」
と声がした。
「誰だ!」
「誰よ!」
「誰ですか!」
声のした方向に、姫路と島田、Fクラス男子達は一斉に顔を向けた。
最初は暗くて分からなかったが、少しすると人影が見えた。
「……怒鳴るように指示を出すだけじゃ、猿でも出来るよ」
と言いながら姿を見せたのは、定満だった。
「なんですって!?」
「どういう意味ですか!?」
激昂した様子で姫路と島田が怒鳴るが、定満はサラリと受け流して
「……あなた達はまるで、猿山の大将みたいってこと」
と言った。
「なんですって!?」
「そもそも、あなたは誰なんですか!?」
「……あなた達に名乗る名前は無い」
姫路と島田が名前を問い掛けるが、定満は答える気は無いらしい。
「だったら、関係ない奴は消えなさいよ!」
「そうです! 無関係な人はどっかに行ってください!」
島田達がそう言うと、定満は首を振って
「……そうはいかない……あなた達は明久様と謙信様の障害でしかない。だから、排除する」
と言った。
すると、Fクラス男子達が憤慨した様子で
「クソッ! また吉井かよ!」
「あいつばっかり、ふざけるな!」
「やっぱり処刑だ!」
と口々に叫んだ。
すると、定満は睨みつけて
「……させると思う?」
と静かに告げた。
「ふんっ! あんた一人で何が出来るのよ!」
「そうです! たった一人じゃ、何も出来ません!」
島田達がそう言うと、定満はつまらなさそうにため息を吐いて
「……一人じゃないよ?」
と言った。
その直後
「がぁ!?」
「いぎっ!?」
「ひぐっ!?」
と悲鳴が聞こえて、島田達は周囲に視線を向けた。
気付けば、周囲には七人の男女
七聖剣が居た。
「なっ……いつの間に!?」
「何者だよ!?」
「なんなのよ!?」
「なんで邪魔をするんですか!?」
口々に叫ぶが、定満も七聖剣も答えなかった。
そして、定満はゆっくりと島田達を指差して
「……捕縛せよ」
と命じた。
その直後、七聖剣はその牙を向けて飛びかかった。
「チクショー!」
「に、逃げっ……ギャアアァァァ!?」
「い、イギャアアァァァ!?」
何人かの男子達は抵抗を試みたが、適うわけなく全滅。
島田と姫路の二人は、そんなFクラス男子達を見捨てて逃げようとしたが、定満が一撃で無力化。
今度は逃げらんないようにと、両手両足を結束バンドで拘束。
倉庫に放り込んだ。
その後、定満と七聖剣は如月グランドパークの警備責任者に会い、指導することになった。
こうして、Fクラス男子達と姫路及び島田は捕縛されたのだった。