僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

77 / 82
いよいよ、最後が近づいてきました


最終章
招待


翌日、明久は実家に来ていた。

母親に呼ばれたからである。

 

「で、呼んだ理由は?」

 

「これよ」

 

明久が問い掛けると、明恵は封筒を明久に差し出した。

明久は受け取ると、中から便箋を取り出して一読。

そして

 

「松永家主催のパーティー……」

 

「そう。それに、明久を招待するって書いてあるわ」

 

明久の言葉を聞いて、明恵はそう言った。

そして明恵は

 

「はっきり言って、松永はいい話なんて聞かないわ。あの家は、策略を得意とする家だしね」

 

と言った

その話は、明久も知っていた。

明久の知っている話でも、松永家の行っていた後ろ暗さは人一倍だった。

しかし、それら全ては日本を守るために行ったこと。

その中には、もし世間に流れたら時の政治家達の評価が一気に地に落ちること、間違いなしの事まである。

吉井が表ならば、松永は裏。

それが、両家を知るもの達の評価である。

 

「本音を言えば、貴方には出てほしくないわ。でも……」

 

「出るよ。次期当主としてね」

 

明恵が最後まで言う前に、明久はそう言った。

すると、明恵は

 

「貴方なら、そう言うと思ったわ」

 

と言った。

すると明恵は、一枚の紙を机から取り出して

 

「これ、持ってなさい」

 

と明久に渡した。

それは

 

「これ……帯刀許可証!」

 

かつて明久が返却した、帯刀許可証だった。

 

「今の貴方なら、大丈夫な筈よ」

 

「……わかった」

 

明恵の言葉を聞いて、明久は帯刀許可証を懐に仕舞った。

そして当日、明久は指定された場所に来た。

某県の、松永家の邸宅である。

その邸宅は、かなり広い。

その広さは、翔子の家に匹敵する。

 

「流石、表向きは政治家か……」

 

松永家の邸宅を見上げて、そう呟いた。

松永家は表向き、長年政治に関わってきた政治家の家系である。

その当主は代々、久秀を名乗ることになっている。

そして、今代当主は女性だと聞いている。

 

「ようこそ、いらっしゃいました」

 

と言ったのは、入口に居た老執事だった。

 

「既に、他の方々は中に居ります」

 

「案内してもらっても?」

 

「どうぞ」

 

明久の言葉を聞いて、老執事はそう返して歩きだした。

少し歩くと、大きなドアの前に着いた。

そして老執事は、壁のスイッチを押した。

すると、ドアがゆっくりと開いた。

そこは広いホールで、多くの男女が集まって談笑していた。

そして一番奥には、濃い紫色の髪をツインテールにした小柄な女性が居た。

それが、現松永家当主

松永久秀だった。

 

「貴女が、松永久秀さんですね?」

 

「初めまして、吉井家次期当主。吉井明久さん」

 

明久が声を掛けると、久秀は優雅に名乗った。

それは正しく、政治家としての振舞いだった。

だが明久は、久秀の目に暗い光を見た。

その時だった。

 

「明久」

 

と声が掛けられた。

振り向くと、謙信達が居た。

 

「謙信、信繁、信玄、幸村……」

 

「やっぱ、明久も呼ばれてたか」

 

「明久、分かってますね?」

 

信玄の言葉を聞いて、明久は

 

「うん……この場所、嫌な気配がする」

 

と言った。

それは、このホールに入ってから感じていたことだった。

周りに居るのは、明久達でも分かるほどに鍛えられた人達ばかりだった。

恐らくは、全員が達人級だろう。

それは、立ち姿から分かる。

何故ならば、達人ならではの体重移動というのがあるからだ。

相手はそれを、微塵も隠していなかった。

そして何よりも、明久達に向けられる殺意。

全員ではないだろうが、明久達に向けられる殺意の密度が半端ではなく高い。

 

「……覚えは、一つしかないかな」

 

明久はそう言いながら、近くの机の上から料理を取った。

そして、パーティーは始まった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。