ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~   作:レイブラスト

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95th Episode

皆さんこんにちは、矢作彰人だ。この世界に来てから一ヶ月が経過した。束さんは俺達が元居た世界を全力で探してくれているが、その方法に驚いた。何でも俺達とこっちの住人とでは体から発せられるオーラが違うらしく、しかもオーラは元々の世界と繋がっているようでそれを辿れば元の世界がわかるという。

 

で、割り出した世界の座標をワープ機能のあるダブルオークアンタに記憶させれば完了なのだが、先ほど言った通り一ヶ月も見つかっていない。「平行世界は辞書のページと同じで、オーラを頼りに大まかなところに当たりをつけてそこから細かく探さなきゃいけないから大変」とも束さんは言っていた。なのでこれ以上時間がかかるのも覚悟しなければならない。

 

それはそうと、この世界での一夏ラブな皆さんの行動は目に見えて大人しくなった。クラスのみんなもやっと平和が戻ったとホッとしていた。やはりストレスになってたらしい。

 

「あの千冬さん。話とは何でしょうか?」

 

ところで俺は現在、龍と一緒に千冬さんに寮長室へと呼び出されていた。ちなみに近くには別件で来ていた一夏が座っている。

 

「実は先ほど、束が菅山のISを渡して来たんだ」

 

そう言うと千冬さんは待機形態のダブルオークアンタを龍に差し出した。束さんに渡したこれが、ここにあるということは……。

 

「俺達、帰れるってことですか……?」

 

「ああ、そうだ。可能なら今すぐにでも帰ることはできるが、そうするのか?」

 

「それは…………はい。考えれば一月もこちらに居る状況ですし、これ以上『向こう』のみんなをほったらかしにはできませんから」

 

考えを巡らせて言った龍に、千冬さんは「そうか」と呟くとクアンタを渡した。その時、このやりとりを見ていた一夏がこう言った。

 

「そっか、帰っちまうのか…………そうだ! なら最後に、頼みたいことがあるんだが、いいか?」

 

「何だ? 俺達にできることなら言ってくれ」

 

「それはな…俺、龍と一度戦ってみたいんだ」

 

「え、俺と?」

 

「平行世界の俺と戦う機会なんて、これを逃したら二度と無いだろうし。本当は彰人とも戦いたいけど、あまり引き留めるのもアレだしさ」

 

「えっと……」

 

返事に困り、揃って千冬さんを見る。千冬さんは深くため息をついて俺達に言った。

 

「良いんじゃないか? 折角の機会だしな」

 

「千冬さんがOK出してくれるなら、俺はいいけど……」

 

「本当か!?」

 

「ああでも、1つ条件がある」

 

身を乗り出す一夏を制しながら俺はあることを提案する。

 

「今回やる戦いは、実戦形式でやって欲しいんだ」

 

「実戦形式というと、卑怯な手段とかラフプレイも有りになるのか?」

 

「そうなる」

 

いち早く意味を理解した龍はそう質問をしてきた。一方首を捻っていた一夏も俺と龍の会話を耳にしてようやく合点がいったらしい。

 

「要はゴーレムとの戦いみたいに容赦すんなってことだろ? ならオッケーだ!」

 

自信満々に承諾する一夏を見て俺は思った。果たしてコイツは、実戦というものをどれ程理解しているのか?と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後・アリーナ

 

龍SIDE

 

俺はクアンタを展開してピットから出撃する。目の前には一夏が専用機『白式・雪羅(せつら)』を装着して待機していた。観客席には彰人や箒達が居る他に、他の女子生徒や先生方が見学している。

 

「さてと。んじゃ、始めるとするか!」

 

「ああ……」

 

雪片弐型を構えて言う一夏に、GNソードⅤの感触を確かめながら返事する。……このやりとりだけで、彰人が何故実戦形式でやるように言ったのかが理解できた。コイツは、一夏は―――

 

「行っくぜぇぇぇええええええええ!!」

 

「菅山龍、ダブルオークアンタ。戦闘を開始する!」

 

―――実戦というものを、真の意味で理解していない。

 

ガキンッ!

 

振り下ろされる雪片弐型をGNソードⅤで受け流し、同時に斬りつける。

 

「うっ……!?」

 

「まだだ!」

 

怯んだところにGNソードⅤだけではなく、肉薄してキックやパンチ等の肉弾戦でダメージを与えていく。近接戦闘が得意だからといって接近し過ぎていては満足に剣を振るうことは出来まい。荷電粒子砲も、この距離なら迂闊には撃てない筈。一夏…お前はこの状況をどう切り抜ける?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彰人SIDE

 

「まさか近接戦闘で一夏さんが圧倒されるなんて……」

 

「剣を持った相手に対する戦い方は、距離を取るか間合いを詰めるか。龍は後者を選んだということだ」

 

「理屈ではわかるが、しかし……」

 

箒ちゃんが戸惑うのも無理はない。雪片弐型を用いた必殺技『零落白夜』は射程が短い分、当たれば相手をほぼ一撃で屠ることのできるIS相手では最強の武器だ。が、どんな凄い武器でも当たらなければどうということはないし、そもそも使わせなければ尚良い。下手に距離を取れば使われる可能性があるので、龍は敢えて接近して連撃したんだ。ま、実際にはそんなダメージ与えちゃいないが(舐めプって奴だな)。

 

さて…一夏はどうするんだろうか? 俺なら龍を全力で蹴飛ばして距離取って、ツインバスターライフルで狙い撃つが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍SIDE

 

一夏のシールドエネルギーを見てそこまで減ってないことを確認すると、俺は後退して距離を取る。

 

「クソッ! 接近戦でここまでやられるなんて……だが勝負はここからだ! 雪羅!!」

 

荷電粒子砲を放つ一夏を見て、俺は自分の目の前にGNソードビットでワープゲートを作りそこに荷電粒子砲を潜らせた。ちなみに一夏は気づいてないが、出口は一夏の真後ろだ。よってどうなるかと言うと……。

 

ドガァァン!!

 

「うわあっ!?」

 

自分で撃った攻撃を自分で受ける羽目になる。これによって白式のシールドエネルギーが半分を切る。

 

「自分の武器でダメージを食らうとは思ってなかっただろ? お前の武器は俺には通用しない……それでもまだ戦うか?」

 

「っ、当然だ! 一方的に負けたまま終われるかっ! 例えどんな不利な状況でも、俺は絶対に降参しない!!」

 

「……そうか。なら俺も、遠慮無くお前を叩き潰す」

 

やはりコイツはわかっていない。実戦において、余計なプライドや拘りは自分の死に繋がる。投降したり逃げることも自分が生きる為には必要な選択だ。こんな姿勢で実戦に赴いていると、いつか死ぬことになる。今までが自分にとって都合が良すぎただけなのだと、思い知らせよう。

 

俺はGNソードビットをGNソードⅤに連結させ、GNバスターソードに変えると一夏に向ける。

 

「さあ、勝負だ」

 

「次で決める! 零落白夜、発動!!」

 

雪片弐型が展開し、眩い光が発生する。そして瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動して急接近してくる。その姿を見て、俺は小さく呟いた。

 

「うおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「…………トランザム」

 

一夏の剣が振り下ろされた瞬間、俺はトランザムで回避すると同時に一夏の背後へと回り込む。そしてGNバスターソードを全力で振り下ろした。

 

「なっ―――ぐぁああああ!?」

 

勢いよく墜落し、土煙を上げる。GNソードビットを分離させ未だ起き上がれない一夏へと向かわせると、雪片弐型と雪羅をピンポイントで破壊する。

 

「そ…そんな……雪片と雪羅が……!」

 

「隙だらけだぞ」

 

俺はすぐさまトランザムを発動させると、GNソードⅤにGNソードビットを合体させトランザムライザーソードを起動させた。

 

「な……何だよソレ!? そんな武器がっ!!」

 

「お前さっき、絶対に降参しないと言ったよな? 当然、やられる覚悟も出来てる筈だよな?」

 

「ま、待て! 待ってくれ!」

 

「待てと言われて待つ敵はいない。叫ぶ暇があったら考えろ……生き抜くことを!!」

 

ライザーソードを直撃させ、白式のエネルギーを一気に削り取る。そして振り切ってライザーソードを消した時、試合終了のブザーが鳴った。俺の勝ちという訳だ。

 

「……………………」

 

俺はマスクオフした状態でISが解除された一夏の前に立つ。一夏はフラフラと立ち上がり、俺を見た。

 

「り、龍……お前、何でここまで……!」

 

「お前に実戦を真の意味で理解させるという、彰人の意志を実行しただけだ。……気づいたのは試合開始直後だけどな」

 

「実戦……? どういうことだ!?」

 

「いいか? 実戦で一番大事なのは『何が何でもこの場を切り抜ける』ことだ。その為なら多少卑怯な手を使うことも視野に入れなければならない……」

 

「なっ!? そんな邪道な「それが理解してないと言うんだ!!」!?」

 

「そういう問題じゃ無いんだよ、戦場は。お前の大事な人達に悲しい思いをさせたくなければ、プライドを捨てろ。邪道でも何でも、切り抜けることだけを考えるんだ。誰もお前を責めたりはしないさ」

 

「っ……」

 

「真っ直ぐなのも悪くない。だが真っ直ぐすぎるのも考え物だ。今のままだと―――いつか無駄死にするぞ」

 

俯く一夏に背を向け、俺はピットへと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彰人SIDE

 

「実戦を理解させる為ねぇ……でもアンタ、いくら何でもあれはやり過ぎじゃない?」

 

試合が終わった後、鈴ちゃんに問いかけられた。確かにオーバーキルにしか見えないしな。

 

「あれくらいやらなきゃ、アイツは変われない。みんなだって、そう思うことはあるだろ?」

 

「確かにな。ダーリンの意志は良い意味でも悪い意味でも真っ直ぐすぎる。柔軟さが足りないとは時折思う」

 

「……でも、これで一夏は本当に変われるかな?」

 

「大丈夫よ。彼、相手とぶつかり合って得たことは絶対に忘れないもの」

 

「だといいけど……」

 

「心配ないさ。人は変わろうとする意志さえあれば、変わることができる。無論、支えがあってこそだが」

 

立ち上がり、一夏を一瞥してピットへ歩いて向かう。勝負も終わったことだし、早く帰らないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……準備はいいか?」

 

「任せろ。座標通りにやってみせる」

 

ピットで合流した俺達は互いにISを起動。一夏の発生させたワープゲートを見つめた。

 

「……行こうぜ、彰人」

 

「ああ。久々の再会だ!」

 

皆に会えることに期待を膨らませ、俺達はワープゲートへと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲートを抜けると、そこは地球の遙か上空だった。慌てて姿勢を制御してハイパーセンサーで周囲を確認する。

 

「ここはどこだ……?」

 

「IS学園だ! 俺達はIS学園の真上に来ている!!」

 

「何!?」

 

真下を拡大して見てみると、確かにIS学園が見えた。しかも一瞬だが、M1アストレイらしき機体も見える。ということは……。

 

「俺達、帰ってこれたんだ! 元の世界に!!」

 

「やった! やったぞ!」

 

ようやく帰ることができた。俺達の居場所……本当のIS学園に。

 

「ところで、今日は何日の何時だ?」

 

「12月14日の真夜中だ。彰人の誕生日の前日に帰ってこれたんだな」

 

「危ねーな俺……危うく誕生日迎えずに年カウントされるとこだったぜ……ってそんなことより早く帰ろうぜ」

 

「だけどどうやって? もう真夜中だぞ?」

 

「えっと……とりあえずワープ使って自室に行こう。まずは寝たい」

 

「時差ボケ物凄いんだが、寝れるか……?」

 

そんな心配をしながら、俺達は自分達の部屋へ行った。

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