ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
夜、IS学園海岸
「あいたた……まだ痛むよ」
「俺もだ、いてて……」
「仕方ないよ。さすがの束さんも想像しなかった自爆をしたんだもの」
セシリア達からビンタを貰い、その後食堂に入ってきた他のクラスメイトの歓喜の叫び声を聞き、帰還パーティーなるものをほぼ一日中開催しある意味疲弊したところで夜中に束さんと海岸にISを纏って一夏と訪れていた。
「まあそれより、早く始めちゃおっか。2人とも準備はいい?」
「いいけど、大丈夫なんですか? 地球の反対側までGN粒子は届かないんじゃ?」
「心配ご無用! 既に衛星軌道上にGN粒子を発生させる装置があるから、どこへだって届くよ」
「なんつーもんを作ってるんですか……」
この人に際限というものは無いのだろうか? 無いんだろうな……。
「ともかく始めるか。彰人、しっかりやれよ!」
「お前もな」
「んじゃ……クアンタムバースト!!」
一夏はダブルオークアンタのトランザムを発動させると、機体を碧色に輝かせ各部アーマーをパージ。クアンタムバーストを発動させた。
「行くぞ、ゼロ……!!」
俺もゼロシステムを作動させ、無数の未来映像から必要なものを選んでいく。今回ゼロシステムで映し出したのは、人類が男女の隔てりを超えて互いに手を取り合い、ISの本当の目的―――宇宙進出を始めるところだ。これをGN粒子で世界中の人達に見せることが束さんの真の目標らしい。
これで本当に平和になるのか?と俺は疑問に思ったが、束さんはこう言っていた。「私の計画はあくまで道標を見せるだけ。そこに到達するかは賭けに近い。けど……私は人類の『可能性』を信じている」と。そうまで言われたら、俺達も信じる他ない。
(嫌いじゃないしな、俺も。人の可能性を信じることは……)
直後、俺達を中心に世界が光で包まれた―――。
――――4年後――――
『さあて! いよいよモンド・グロッソIS部門も決勝戦! 果たしてこの戦いを制し、勝利の栄光を手にするのは誰なのか!?』
ドイツのモンド・グロッソが行われている会場にて、ナレーターがテンションを上げて言う。勿論客席に居る観客達も同様だ。その様子は平和そのものであったが、こうなるにはそれなりに時間がかかった。
マスターインテリジェントシステムによってネットワークや通信網が一時的に掌握されたことで復興支援等の為の連絡が行き届かず、破壊された都市や人命救助がしばらく滞っていた。それによって様々な人が心に傷を負い、諦観する人も居た。が、彰人と一夏と束によって行われた作戦により、多くの人々に互いに手を取り合うことが必要だと認識させ、女尊男卑に関係なく互いに助け合いを始めた。更に束によって通信網等も回復し、迅速に支援が開始されて3年後の現在には完全に元通りとなった。それだけではなく、IS本来の目的である宇宙進出や工事作業等をガーランドと共に行うことも進められている。
IS学園では世界を救い、無事帰還した彰人達がテレビ等でブラント達共々ヒーローとして大々的に報道され、彼らが在学中の年度毎の入学者数が激増することになった。勿論、卒業してからも入学者は増えている。
IS学園職員室
「ついに2人とも決勝へ駒を進めたか……まだ辞める前に見ることができるとはな」
モンド・グロッソのテレビ中継を見ながら千冬は呟く。彼女は以前に唯や束と一緒に省吾と結婚した為、機を見て教師を辞めようと決意していた。
「どちらが勝つと思いますか?」
「ん~、どうだろうねぇ~」
「……何だ、来ていたのか。少し驚いたぞ」
いつの間にか自然に千冬の隣でテレビを見ていた束とクロエに驚きつつも笑みを浮かべた。
「ちーちゃんはどっちが勝つと思う? いっくん? それともあっくん?」
「さてな。何せ2人の実力はほぼ互角だ。どっちが勝っても不思議じゃない(まあ…私としては一夏に勝って欲しいが)」
密かに心の中でそう思いながら、千冬はテレビを見つめた。
モンド・グロッソ観客席
「彰人さ~ん! 頑張って下さいまし~!!」
「ファイトだ一夏! 負けるんじゃないぞ!!」
大勢の観客達の喧噪に負けないくらいの声量でセシリアと箒が声を張る。
「そんなに声張り上げなくても大丈夫よ。勝つのは一夏に決まってるんだから」
「聞き捨てならないな。ここで勝つのは彰人の方だろう」
「いいや、間違いなく兄さんが勝つに決まっている」
「ち、ちょっと3人とも」
「……お願いだから、落ち着いて」
一触即発になった鈴、ラウラ、マドカを宥めようとシャルロットと簪が身を乗り出した時、マドカを除く2人が「あっ」と表情を変えた。
「ん? どうしたんだ?」
「え? ああ、ちょっと……赤ちゃんが暴れて、ね」
「きっと喧嘩はやめてって言ってるのよ」
「それもそうだな……」
刀奈の言葉にラウラは頷き、お腹を見下ろす。他の面々も釣られてそれぞれのお腹を見る。マドカ以外の女子達のお腹は丸く膨らんでいた。
「ふふふ、みんなもうお母さんになるものね」
そこにジュースを持った由唯とポップコーンを持った省吾がやってきて近くの席に座る。
「あ、由唯さん。それに省吾さんも」
「みんな元気そうで何よりだ。が……改めて見ると壮観だな。こうも妊婦が1つに纏まっている光景は。いやマドカは違うが」
「というか個人的に変な気がするんだよな。妊娠のタイミングがみんな同じだし、兄さんも彰人も聞いても話してくれないし……由唯さん何か知ってるか?」
「ああ、それは私がパワープレイで攻めろと言ったからで―――」
「アシストしたのお前かよ!? つーかそれ、俺にやる為の試金石にしたんじゃないか!?」
「それにしてもどっちが勝つのかしら? 気になるわ」
「無視すんなおい!!」
ツッコミを入れる省吾にセシリア達は苦笑するのであった。
省吾達から少し離れた場所ではブラント、オータム、スコールが座っており省吾達の騒ぎを半ば呆れて見ていた。
「やれやれ、アイツはここでも騒がしいな……」
「気にしない気にしない。それより彰人君と一夏君、どっちが勝つと思ってる?」
「こればかりは私もわからんよ。どちらが勝ってもおかしくはないからな」
「じゃあ私はどっちに賭けたらいいんだよ? 負けたらスコールに飯奢らなきゃいけないんだぞ」
「他人任せは良くないわよ。こういう時は自分の勘を信じないと」
「相変わらずだな、お前達も……」
結婚しお腹が大きくなっても言い争っている2人に挟まれながら、ブラントは試合会場に歩き出す彰人と一夏の姿を見つめた。
とある民家
車いすに座った女性と、それを押す女性がテレビでモンド・グロッソの決勝戦の開始を今か今かと待ちかねている。
「姉さん。どっちが勝つかな?」
車いすを押している女性……オーが車いすに座る女性エスに尋ねる。2人は激闘の末ISを失いつつ辛くも生き残り、こうして暮らしているのだ。
ISを破壊されたからかクアンタムバーストの影響かはわからないが、2人の中にある世界への憎悪は 消えていた。
「実際に始まらないとわからない。だが間違いなくいい勝負をしてくれるだろうさ」
「そうだね、姉さん」
2人で笑みを浮かべながら、再びテレビの画面を見た。
弾の家
二階の部屋で弾、数馬、虚、本音はモンド・グロッソの様子をテレビで見ていた。
「楽しみだね、決勝~。どっちが勝つかな~?」
「一夏さんと彰人さん、どちらが勝ってもおかしくないわ」
「確かに。でもいいんですか? 俺の家に来て。更識さん家の用事とかがあるんじゃ……」
「大丈夫。あの子達に任せてあるから」
虚の言うあの子達とは、以前彰人や刀奈と戦ったエーとピーだ。戦う為に生み出され、行く宛てもない2人を刀奈は放っておけず、更識家の使用人として引き取ることにしたのである。
「そう言えばそうだったね~。ちゃんとやってるかな?」
「1人は問題ないとして、もう1人は……確か調きょ、いえ教育したから……多分大丈夫よ」
「……何だろう。僕、今幻聴みたいなのを聞いた気が……」
「安心しろ、俺もだ」
少し背筋が寒くなる弾と数馬であった。
モンド・グロッソ会場
満を持して彰人と一夏は各々のビットから生身で歩いて登場し、中央付近へと進んでいく。
「ついに決勝か……長いようで短かったな」
「俺は早く決着をつけたくて時間とか考えてなかったぜ」
肩をすくめながら言う一夏に彰人は真剣な眼差しで見つめ、言った。
「んじゃ……やるか!!」
「おう。最初からクライマックスで行くぜ!!」
同時にウイングガンダムゼロカスタムとダブルオークアンタ・フルセイバーを展開し、互いの得物を構え、そして―――
「「うおりゃあああああああああああああああああああああああああ!!」」
―――2人の激闘が、始まった。
という訳で、この小説も最終回を迎えました。
長々と続けた割にはやや唐突な幕切れかなと思いますが、それでも完結できて良かったと思います。
それでは、今までのご愛読ありがとうございました! またいつか、別の小説でお目にかかりましょう!