ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
鈴SIDE
前の学校では、私は男子と友達になったことはなかった。だから色んな意味で、一夏と彰人と友達になるのは新鮮だった。
一夏と彰人はいつも仲良しで、ここに来たばかりの私に優しく接してくれた。
2人は色んな場所を案内してくれたり、家に誘ってくれたり、通っている道場にも案内してくれた。私も、2人を私の家に何度か誘った。その時かどうかは忘れちゃったけど、一夏が時々暗くなっているのはどんな理由があるのか、つい聞いてしまった。すぐに謝ったけど、一夏は話してくれた。小さい頃から仲良くしていた箒と言う女の子がいたこと。訳あって彼女が引っ越すことになり、その十分前に告白して両思いになってまた会おうと約束したことを。……正直、まるでドラマみたいって感動した。だから私、一夏を励ましてあげた。「また会える」って。そしたら笑顔になって、それから暗くなるのはめっきりなくなった。
それと、よくやっている仮面ライダーごっこって遊び。最初はよくわからなかったけど、録画したDVDを見せてもらったら私もはまって今じゃ私も仮面ライダーごっこをしている。こういうのは男の子の専売特許かと思ってたけど、案外楽しく遊べるのね。
とにかく、もう毎日が楽しくて、幸せだった。あの日が来るまでは……。
その日は用事があったせいで帰るのが遅くなり、私は近道になっている学校の裏を走っていた。
「お、リンリンじゃないか」
その途中で、4人の男子と鉢合わせした。彼らは聞いたことがある。元は5人組で色んな子をランダムにいじめていたって。1人は何があったのか改心したみたいだけど。
「やーい、リンリン。パンダなら笹食えよ~!」
今度は私がターゲットみたい。しかも、前の学校と同じやり方のいじめまでしてきた。……だから私、わざと上から目線で言ってやった。
「はぁ。アンタ達ねぇ、どうやったらアタシがパンダに見えるわけ? 視力悪いんじゃないの?」
「何?」
「女の……中国人の癖に、生意気なんだよ!」
「きゃっ!?」
男子の1人に押し飛ばされ、尻餅をついてしまった。男子との力の差に私は、恐怖感を抱いていた。どうして無理に強がってしまったんだろう。
「中国人が、俺達と一緒に勉強すんじゃねぇ!」
何で……? 何で中国人だといけないの? みんなと仲良くしたい、友達になりたいだけなのに……。私はもう、泣きそうになっていた。
「おい……今、鈴ちゃんを笑ったな?」
突然聞こえてきた声に男子達が静まりかえった。気になって見てみると、一夏が立っていた。
「お、織斑!? 何でここに!?」
「ま、まずい。コイツはまずいぞ!」
男子達が慌てているが、そんなことはどうでもよかった。一夏は……怒っていた。普段の姿からは想像もつかない程、怒りが湧き出ているのを感じた。
「へ、へへ……何怯えてるんだよ。あん時はまぐれだ。二度も負ける訳がない!!」
「あっ、バカ!!」
1人が仲間の制止を無視して一夏に殴りかかる。危ない、逃げて!そう思った時、一夏は予想外の行動をした。
一夏はパンチを避けるとカウンター気味に相手の鼻を殴り、痛みに怯んでるところを足払いで倒した。
呆然とする私を余所に、一夏は言った。
「もう一度聞く。今……鈴ちゃんを、大事な友達を笑ったよなぁ?」
その時の一夏の顔は、恐ろしいまでの笑みを浮かべていた。けど、そんなことより私は一夏の言った「大事な友達」が心に響いた。
一夏は、私を大事に思っててくれたんだ。中国人だからって差別せずに……。それはきっと彰人も同じなんだと、何故か思えた。凄く、嬉しい……。
「「「い、いいえ! 笑ってません! 笑ってません!!」」」
「いいや、笑った。……俺も笑ってもらおうか」
その後は圧倒的だった。近くにいる男子の腹に右足蹴りを放つ。食らった男子は地面にうずくまって呻いていた。そんな、一撃で……。一夏は呆然としている残り2人の鼻を同時に殴って怯ませると、1人には膝蹴りを、もう1人には鳩尾へ拳を叩き込んだ。
「鈴ちゃん!」
それから一夏は私に駆け寄ってきた。
「大丈夫か? ケガしてない?」
「う、うん。平気」
口ではそう言ったものの、どうしてか一夏を見ていると胸がドキドキとしてくる。大事な友達って言ってくれたから? でもそれだと彰人も同じ筈なのに、何で一夏にだけ……?
不思議に思っていた時、彰人が先生を連れて来た。
彰人SIDE
正直、どうなるか不安だ。俺が連れて来た先生は何の因果か1年の時、箒ちゃんの一件で呼んだ先生だった。だから「女の子を守る為に敢えて悪になる……いいわ!
ただでさえ千冬さんは忙しい身だ。それに加えて喧嘩沙汰。一夏は怒られると思ったのか、肩をすくめていた。だが千冬さんは一夏を見てこう言った。
「一夏。お前は一度だけではなく、二度も力を振るった。誰かを守る為に。……後悔は、してないのか?」
その問いに一夏は一瞬目を見開くが、すぐに表情を引き締めて述べた。
「してない。……千冬姉さんが言いたいことはわかる。どんな理由があっても、力は暴力でしかない。でも俺は、俺の大事なものの為なら力を振るう。たとえ俺が悪になっても……」
その言葉からは、並々ならぬ覚悟が感じられた。鈴ちゃんは感動している。一夏の奴、前世の頃を含めて大きく成長してやがる。ここからどうなっていくのか楽しみだ。
「……そうか」
短く静かに言うと、千冬さんは一夏の頬に両手を動かすと―――
ムギュ~
ほっぺを引っ張った。
「ふぇ? は、はにふるの、ひふゆ姉さん!?」
「お前の覚悟は受け取った。だから、今日はこれで勘弁しておく」
「それはわかふへど、あまりうごかはないへ~!」
千冬さんに言い様に遊ばれている一夏。ある意味貴重な絵面だな。鈴ちゃんなんか、可愛いって思ってるよ絶対。
「ま、いいか。千冬さん、嬉しそうだし」
「だな。見ろよ、今にも満面の笑みを浮かべそうだぜ」
「ふふ、確かに」
「なっ!? わ、私がそ、そんなことをするわけないだろ!?」
「い、いひゃいいひゃい!!」
「あ! す、すまない一夏」
照れ隠しで怒った際に一夏のほっぺを強く引っ張ってしまったらしく、涙目になる一夏とそれを見て戸惑う千冬さんという珍しいものを見ることができた。