ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~   作:レイブラスト

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13th Episode

「…………凄かったなぁ、千冬姉さん」

 

「ああ…………生で見ると迫力違うし……」

 

ドイツの首都、ベルリンのレストランにて俺と一夏は半ば呆然としながら話をしていた。何故俺達がドイツに居るのかと言うと、『第二回モンド・グロッソ』を観戦しに来ているからだ。

テレビと生は違うとは言うが…………はっきり言って無茶苦茶強かった。見てる途中で一夏共々、口開けてたくらいだ。

ガーランドの方はどうなったかって? ……生憎と見てない。省吾兄ちゃんが参戦しているなら見てたけど、兄ちゃんはとっくに現役を引退し、選挙運動を始めて見事当選。与党議員になり政治家としての道を歩み始めたからだ。ちなみに由唯さんも省吾兄ちゃんの秘書になっており、兄ちゃん共々滅多に会えなくなった。……そう言えば、今回の大会は兄ちゃんも会場で見学しているって聞いたな。ま、護衛の人とか居るだろうから、会えないだろうけど。

 

「ところで一夏。今だから言うけど……お前最近、心ここにあらずって感じじゃないか?」

 

出てきた料理を食べ終えたところで、一夏に聞いてみる。すると一夏は、ギクッ!?とした顔を向けてきた。

 

「……何でわかった?」

 

「そりゃお前、何年親友やってると思ってるんだ」

 

「そうだったな……」

 

「……やっぱり、鈴ちゃんのことか?」

 

「ああ……」

 

確信を突くと、一夏は観念したように話し始めた。

 

「鈴が俺に好意を抱いてくれてるのは、正直嬉しい。けど、俺はどうしたらいいんだ?」

 

「告白するのを待った方がいいんじゃないか? そこでフっちゃえば、万々歳じゃないの?」

 

「そうなんだろうけどさ。最近俺、おかしいんだ。俺は箒のことが好きなのに、鈴のことを考えると、妙な気持ちになってくる。それが何なのか、自分でもよくわからない……」

 

俺は一夏の言葉に衝撃を受けた。つまりどういうことかと言うと、一夏は箒ちゃんのことが好きだが、鈴ちゃんのことも異性として意識してしまっているようだ。……これはどうアドバイスしたらいいんだ? うーむ……。

 

「やっぱさ、とりあえず待ってみようぜ。告白してくるのを。その時にどう答えるかは、お前が考えればいい」

 

「自分のことは自分で決めろってことか。……結局、そうなるのかぁ」

 

「今回ばかりは、そうするしかない」

 

我ながら無責任だが、複雑な恋愛ごとは極力当人達に任せた方がいいと思う。決めるのは当人の意志なんだし。……俺も恋愛するとき、一夏みたいになったら悩むだろうなぁ。

 

「…………ん?」

 

その時、店の前に黒いシボレー・サバーバンが止まり、中から数人の男女(ただし、女性は2人のみ)が現れ、こっちに歩いてきた。……とうとう来たか、この時が。

 

「失礼。織斑一夏君と矢作彰人君で、いいかしら?」

 

金髪の女性が微笑みながら日本語で語りかけてくる。傍らには屈強そうな男性が2人居る。

 

「そうですけど、誰なんですか?」

 

「私達は、IS委員会の警備の者です。IS及びガーランド操縦者の関係者を狙ったテロ組織がこの付近に潜伏しているという情報を掴んだので、保護して回っているんです」

 

言っていることは最もだが、よく考えると矛盾がある。俺と一夏は日本人である矢作省吾と織斑千冬の……つまり、前回大会における優勝者の血縁者だ。真っ先に動くのは日本の筈。

 

(彰人。何かコイツ等、怪しくないか? 一番先にIS委員会が動くなんて、どこか引っかかるし……)

 

一夏も疑問に思ったようで、俺に小声で尋ねてきた。

 

(いいところに気づいたな、一夏。多分この人達は、そのテロ組織だろう。そこで俺に考えがある―――)

 

これからの一連の流れをひそひそと説明すると、一夏と共に向き直った。

 

「すいません、長々と。何分困惑してたので……」

 

「じゃあ、車に案内させてもらうわ」

 

「よろしくお願いします」

 

まずは敢えて誘いに乗って車に移動していく。金髪の女性を先導に、俺と一夏の隣に俺達を挟み込むように屈強な男性が2人立つ。車では運転席に、運転手らしき男性が居て、ドアを開けて待っているロングヘアの女性が居る。どうやら人数はこれで全てのようだ。

 

確認すると、一夏の体に軽くぶつかって合図をする。そして、俺と一夏は車までもう少しというところで止まる。

男性2人が訝しんでこちらを見る―――今だ!

 

「「せいっ!!」」

 

ほぼ同時にそれぞれの男性の金的を全力で蹴り上げる。

 

「「っーーーー!?」」

 

声にならない悲鳴を上げている男性達を尻目に、俺達は迷わず逃げ出した。

 

「っ!? まさか、気づかれた!? 追うわよ!!」

 

金髪の女性のものらしき声を遠くに聞きながら、俺達は地理もわからぬまま走った。こんなことなら、事前に勉強しとくべきだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…こ、ここまで来れば……」

 

「さすがに…はぁ……はぁ……追うのに時間はかかる筈……」

 

しばらく走りまくって着いた廃工場に、俺と一夏は隠れた。かいた汗を拭き取ろうとポケットに手を突っ込んだ時、指先に硬い物が当たった。

 

(何だ?)

 

取り出してみると、丸いラムネのようなものだった。これは……。

 

「彰人、それって……」

 

「やられた……これは発信機だ……!」

 

言った直後、工場の扉が開けられ声が聞こえてきた。

 

「2人ともそこまでよ。おとなしくしなさい」

 

金髪の女性の声だ。おそらく発信機を仕込んだのは彼女だろう。それも、俺達が逃げ出す前に。正体は不明だが、只者じゃないことは確かだ。

 

(仕方ない、ここは出よう)

 

(そうするか……)

 

一夏を促し、俺は物陰から出てきた。

 

「随分物分かりがいいわね。でも……どうして驚いていないのかしら?」

 

相手の人数は女性が2人に、男性が…3人? 1人は運転手として、残りの2人は補助員か。金的を蹴った奴らとは違う顔だし。

 

「こんなものが入ってましてね」

 

発信機を見せつけながら喋る。

 

「大方、発信機か何かですよね? ……俺達がどこに逃げようと、これで探っていた訳だ」

 

発信機を放して落とすと、足で踏みつけて破壊する。こんなことをしても無駄だろうが、残しておくよりはマシだ。

 

「ええ、そうよ。それと、後1つだけ聞きたいことがあるわ。……どうして私達の正体に感づいて、逃げたのかしら? あんなこと、確信がないと普通はできないわ」

 

「別に、確信がなくてもできますよ。なあ一夏?」

 

「ああ。俺と彰人が抱いた疑念は、行動させるには十分だったさ」

 

「……どんな疑念を抱いたのかしら?」

 

「簡単なことだ。モンド・グロッソはドイツ軍が全面的に警備をしている。だから確保に動くのはドイツの筈。それと、俺と彰人は日本人だ。さっきの言葉を否定する訳じゃないが、ドイツよりも日本政府が動いてなきゃおかしいんだ。IS委員会が真っ先に動くなんて違和感があるどころの話じゃない」

 

一夏の説明に、女性は驚きながらも感心していた。

 

「大した考察力ね。あの場でそんなことを2人して考えてたなんて……けど、もし本当にIS委員会が動いていたとしたら、どうするつもりだったの?」

 

「こういう言葉がある。もし違ってたら、その時はその時だ。ってな」

 

「そういうこと。間違いを恐れてちゃ、死ぬのは俺達だからな」

 

一夏に続いて笑みを浮かべながら言う。本当にIS委員会だという可能性を持っていたというのは本当だ。が、その可能性の方が低かったこと。下手をしたら死ぬことを考慮して行動に出たんだ。それは正解ということだ。

 

「決断力もいいのね、貴方達は。でも、この状況だとそれも無駄になったわね」

 

「どうかな? 一夏、今の時間は?」

 

「試合開始の……十分前だ」

 

腕時計を見て一夏が言った。俺達がレストランから逃げてから、かなり時間が経過したな。さっきの会話も、丁度良い時間稼ぎになった。

 

「それじゃあ試合見に行くことができるか、わかんないな。けど、ここに居る奴らに一泡吹かせられるなら、別にいいか」

 

「言えてる」

 

そう言うと、一夏と共に笑い始めた。相手は見事に困惑している。いや、おかしくなったと思っているかもしれない。

 

「……何がおかしいの?」

 

「ん? 今言ったでしょ。一泡吹かすって。まあ敢えてヒントを言うなら……秘匿回線、って奴かな?」

 

スマートフォンを取り出して女性に見せる。それだけで女性は何かを理解したのか、顔色を変えた。

 

「まさか……!」

 

ドガァァァン!!

 

直後、別の扉をぶち破ってソレはやってきた。

 

「悪い、彰人! 一夏! ちと遅れちまった!!」

 

「遅すぎだよ―――兄ちゃん」

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